武闘大会・予選
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翌週、武闘都市ガルディナは朝から人の波に包まれていた。
露店の香ばしい串焼きの匂い、屋根の上にまで並ぶ見物客、空を覆うような魔導幕――十年に一度の大祭が始まろうとしていた。
ヴェント「ここが……武闘大会会場か!」
ルミナ「すごい人ね……」
シルフィナ「あそこに予選会場って書いてあるわ」
熱気に満ちた空気の中、ヴェントは壁一面に飾られた歴代優勝者の肖像へ駆け寄った。
ヴェント「うおっ、六十周年記念大会の優勝チーム! 勇者アルディスじゃん! 本物だ!」
目を輝かせるヴェントに、シルフィナは肩をすくめて微笑む。
シルフィナ「六十周年大会は泥仕合ばかりで退屈だったわ。私はその前の大会の方が好き」
ルミナ「……その前って二十年前よ? あなた一体何歳なのよ?」
シルフィナ「ひ・み・つ」
試験官「次! 一撃だ、魔力を込めてもいいぞ!」
戦士「でぇいっ!」
試験官「総合評価九二〇、失格!」
武闘家「てやぁっ!」
試験官「一二五〇、合格!」
列の後方、ヴェントが拳を握りしめる。
ヴェント(魔力を込めた攻撃もありか……これなら武器を使うまでもないな)
試験官「次!……ん? お前は最近名が売れてる小僧か。面白い、魔力なしでやってみろ」
ヴェント「えぇ!? なんでだよ!……っしゃーねぇ! おらぁっ!!」
拳が木人形を貫き、爆風が砂煙を巻き上げた。
結晶が白光に包まれ、試験官が目を見開く。
試験官「そ、総合評価一六二〇……! ……チッ、合格だ」
ヴェント「おっしゃあ!」
別会場では、観客席からどよめきが起こっていた。
試験官「魔力二六六〇……!? 人間の域ではない!」
ルミナ「ふん、どう?」
シルフィナ「すごーい。人間では過去最高じゃない?」
試験官「いや、二十年前に二九〇〇を記録した者がいる」
ルミナ「また二位!? キィィィィ!」
シルフィナが軽く詠唱を済ませる。
試験官「魔力一一二〇、合格!」
ルミナ「あら? シルフィナって意外と魔力ないのね」
シルフィナ「精霊魔法だから........予選だし全力じゃないもの」
ルミナ「うぐ……」
シルフィナ「本戦は明日。今日は体を休めましょ」
ヴェント「結果見ないのか?」
シルフィナ「ヴェントが突破してくれれば十分。三人全員通過できるチームなんて滅多にないんだから」
リーファ「ヴェント様♡ 予選はどうでしたか?」
ヴェント「余裕だったぜ。なんかいいクエストないか?」
リーファ「それが……さっきバーンさんが帰ってきて……」
シルフィナ「じゃあ今はまともなクエストは残ってないわね」
リーファ「はい、ゴールド以上は全部持っていかれました……」
ルミナ「多重受注は禁止じゃないの? 何個持ってったのよ」
リーファ「えっと……全部、です」
シルフィナ「バカバーン」
リーファ「でも実力で全部クリアするから文句も言えなくて」
ヴェント「じゃあ魚釣りのクエストでもやるか」
ルミナ「はぁ……地味ねぇ……」
ヴェント「よっと!」
糸を引き上げると、大きな魚が跳ねた。
ルミナ「うまいもんね」
シルフィナ「でも、今日の森は静かね」
ヴェント「静かな方がいいじゃねぇか」
火のはぜる音と川のせせらぎだけが響く。
シルフィナ「ねぇ、二人とも。師匠は誰?魔法の詠唱もないみたいだけど.....」
ヴェント「師匠ってほどじゃないけど、母さんだよ。戦い方も魔法も全部」
ルミナ「母さんも無詠唱だったから、子どもの頃から詠唱したことないわね」
シルフィナ「……やっぱり。無詠唱でそこまで威力出せる人は滅多にいないわ」
ヴェント「母さん、元冒険者なんだ。それで俺も冒険者になったんだ」
シルフィナ「お父さんは?」
ルミナ「生まれた時からいないの。母さんと一緒に冒険してたらしいけど」
シルフィナ「そっか……ごめん」
ヴェント「別に。いなくて困ったこともないしな。――お、焼けたぜ!」
夜空に流星が走り、三人の笑い声が森に溶けていった。
翌日ーーー
ヴェント「よし! そろったな!」
ルミナ「なんでアンタが仕切ってんのよ!」
シルフィナ「まずは結果を見に行きましょ」
三人が掲示板に駆け寄ると――
ヴェント「……いや、なんだこのチーム名!」
『本戦出場チーム 第4位:ルミナとその他チーム』
シルフィナ「おかしいわね……私が登録した時は“ウキウキワクワクヴェントとシルフィナのハッピー新婚ライフチーム”だったのに」
ルミナ「え? “ヴェント様ラヴラヴチーム”って書いてたから直したんだけど」
シルフィナ「……あの女ね」
ヴェント「全員センス終わってるじゃん!!」
ルミナ「まぁいいじゃない。4位なら上出来でしょ」
シルフィナ(ルミナが歴代2位の魔力出して4位……やばい予感)
ヴェント「見ろよ! 1位のチーム、勇者アルディスチームだってよ!」
ルミナ「はっ、偽物でしょ」
シルフィナ「仮に本物でも、敵じゃないわね」
闘技場に響く轟音、天を裂く号砲。
光の幕が空に散り、歓声が爆発する。
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