表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光と風の境界  作者: 770
6/39

精霊の少女

(^^)/

ヴェント「でやっ!」

風の刃が閃く。巨大な魔獣が悲鳴を上げて崩れ落ちた。

砂煙が晴れると、ヴェントは息を吐きながら剣を収める。


ヴェント「ふぅ……」

ルミナ「こっちも終わったわよ~」

振り返れば、ルミナの周りに転がる中型魔獣の群れ。

その数、ざっと数十。


二人はプラチナランクの討伐クエストの真っ最中だった。


ヴェント「さーて、部位取り部位取り。ルミナはもう取ったか?」

ルミナ「私は戦いながら部位取りもするタイプなの」

ルミナが軽く袋を振ると、魔石がじゃらじゃらと音を立てた。

ヴェント「へーへー、効率のいいこって」


ヴェントは倒した大型魔獣の腹を裂き、魔石を探す。

だが――手が何か柔らかいものに触れた。


ヴェント「ん?」

慎重に切り裂いていくと、胃の中から小さな人影が転がり落ちた。


ドサッ。

それは、長い金緑色の髪をした少女。まだ息がある。


ヴェント「おい!? 大丈夫か!? ルミナ!!」

ルミナ「どうしたの?」

ヴェント「見てくれ!」

ルミナ「っ……!? 生きてる! 《女神の祝福》!」


光が少女の身体を包み、焼け爛れた肌が少しずつ再生していく。

ルミナ「よかった……なんとか間に合ったみたい」

ヴェント「とりあえず、町まで連れて帰ろう。医者に見せよう」

ルミナ「えぇ!」


――


夕暮れの街、病院。

医者は少女を診察し、額の汗をぬぐった。


医者「命に別状はない。半日もすれば目を覚ますだろう」

ヴェント「ありがとう、助かった」

ルミナ「本当にありがとうございます」


数時間後、少女のまぶたが震えた。


少女「う……ん……?」

ルミナ「よかった、目を覚ましたのね」

少女「お姉さんは……?」

ルミナ「私はルミナ=アーデン。あなた、魔獣に食べられてたのよ?」

ヴェント「お、起きたか? 気分悪くないか?」


少女は小さく笑い、柔らかく答えた。


少女「ううん……ありがとう。お兄さんが助けてくれたの?」

ヴェント「おう! 一撃で仕留めてやったぜ!」

ルミナ「また調子に乗って……」


少女はベッドの上で身体を起こし、名乗った。


シルフィナ「私の名前は――シルフィナ。森に住むエルフなの」

ルミナ「エルフ? でも耳は普通の形よ?」

シルフィナ「擬態してるの。ほら」

ぱちんと指を鳴らすと、髪の間から細長い耳が現れた。


ヴェント「おぉ……ほんとだ」

ルミナ「本物のエルフなんて初めて見たわ」


シルフィナ「もう大丈夫。ありがとう、助けてくれて」

ヴェント「元気ならよかった。俺たち仕事あるからもう行くぜ」

ルミナ「気をつけなさいよ。また食べられないようにね」


部屋を出ようとしたその時、

シルフィナ「まって!」

二人が振り返る。


シルフィナ「一緒に行かせて。私も冒険者なの」

ヴェント「……え?」

ルミナ「今なんて?」

シルフィナ「一緒に行かせて!」


――


ギルドの扉を押し開けると、いつものざわめきが耳に飛び込んだ。


リーファ「あ、シルフィナさん! 久しぶりですね! 今回はどこまで行ってたんです?」

シルフィナ「ちょっと北のほうまで……寝てたら、食べられてたの」

リーファ「えぇ!? またそんな無茶を……」


ヴェント「よっ、リーファ。今日もクエスト受けるぜ!」

リーファ「ヴェントさ~ん♡ 何を受けますか?」

ルミナ「……(なんでハートつくのよ)」

ヴェント「この“大蟻大地獄討伐”にする」

シルフィナ「……私も行く」

リーファ「あら、三人で? いいですね、気をつけてくださいね!」


――


灼熱の砂漠。

乾いた風が吹き抜け、砂の海が陽炎に揺れている。


ルミナ「あっさり受けさせてくれたわね……」

ヴェント「シルフィナって、実はすごい冒険者だったんだな」

シルフィナ「砂漠は得意。……風も、火も、眠ってる」


その瞬間、足元の砂が崩れた。

ルミナ「ヴェント!下よ!」

地面が陥没し、巨大な口が現れる。

ヴェント「なっ……でけぇええええ!」


地中から這い出る巨大なアリジゴク。体長は三十メートルを超えていた。


ヴェント「このっ! ストームスラッシュ!」

風の刃が走るが、表皮を浅く裂いただけだった。

ルミナ「ウォーターボール! サンダースピア!」

雷と水の弾幕が地を打つも、アリジゴクは再び地中へ逃げた。


ヴェント「ちっ、硬ぇし速ぇ!」

ルミナ「厄介ね……」


その時、シルフィナが一歩前に出た。


シルフィナ「どいて」

ルミナ「ちょっと! 危ないって!」

ヴェント「おいシルフィナ! こいつは地中に潜るぞ!」


少女は静かに水筒を開き、砂の上に水を垂らした。


シルフィナ「“精霊よ、我に集い、流れと熱を与えたまえ――水と炎の調和フロウ・シンフォニア”」


足元の砂が波打ち、周囲一帯に水が広がる。

次の瞬間、空気が一気に熱を帯びた。

地表の水が沸き、巨大なアリジゴクの巣が煮えたぎる。


ヴェント「うおっ!? 地面が熱ぇ!!」

ルミナ「嘘でしょ……こんな規模の精霊魔法、聞いたことない……!」


地中から現れたアリジゴクは、体を痙攣させ、そのまま倒れ込んだ。

完全に“茹で上がって”いた。


シルフィナ「さ、食べよう。カニみたいで美味しいよ」

ヴェント「…………」

ルミナ「…………」

ヴェント「すげぇ……マジで強ぇ……」

ルミナ(今のは……精霊魔法。しかも複合属性……この子、只者じゃないわ)


ヴェント「なぁ、シルフィナ! 来週の武闘大会出るんだけどさ、三対三なんだ。一緒に出てくれ!」

シルフィナ「いいよ。でも条件がある」

ヴェント「なんだ?」

シルフィナ「後で話す。まずはギルドに帰ろう」


――


ギルド。

リーファ「おかえりなさ~い! やっぱり早かったですね!」

シルフィナ「はい。魔鋼石、全部ヴェントとルミナに」

ルミナ「ちょっと!? 討伐したのはほとんどシルフィナでしょ!」

ヴェント「そうだよ、俺たち何もしてねぇし!」

シルフィナ「お金はいらない。魔物を食べるから」

リーファ「いつもそうなんですよ、この人」


シルフィナ「リーファ、武闘大会のエントリーってここでできる?」

リーファ「もちろん! えっ!? 三人で出るんですか!?」

三人はうなずく。


リーファ「すごい! 当ギルドのTOP5から3人が同じチームなんて!」

ルミナ「TOP5?」

リーファ「そうです! “万能の魔術師ルミナさん”、 “神速の剣士ヴェント様♡”、

そして“精霊使いシルフィナさん”! お三方がTOP5のうちの3人なんです!」

ヴェント「俺たち、来てまだ3日だよな!? もうそんな上に!?」

リーファ「ちなみに順位は――シルフィナさんが2位、ルミナさんが4位、ヴェント様が5位です♡」

ヴェント「またルミナに負けてる……!」


ルミナ「ところでシルフィナ。私たちと大会に出る条件って?」

シルフィナ「ルミナには何もいらない。ヴェント」

ヴェント「お、おう? なんだ?」

シルフィナ「――私と、結婚して。」


周囲が一斉に固まる。


ヴェント「ああ、いいぜ……って、ええぇ!?!?!?」

シルフィナ「あなたの冒険は邪魔しない。必要なら力も貸す」

リーファ「シルフィナさん!? ヴェント様は皆の物ですっ!」

シルフィナ「別に、私だけの物じゃなくてもいい」


周囲「ざわざわ……」「結婚!?」「美女ばっかじゃねぇか!?」「ルミナたん結婚してぇぇぇ!」


ルミナ「ま、また……ヴェントが……モテてる……なんでよぉ……!」


喧騒と笑いの中、三人の冒険が本格的に始まろうとしていた。


(^^)/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ