武闘都市ガルディナ
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砂塵の舞う街道を、二人の若者が歩いていた。
ヴェントは片手に地図を持ち、腰のダガーを揺らしながらため息をつく。
ヴェント「なぁ、ルミナ。冒険者って言ってもさ、いったい何すりゃいいんだ?」
ルミナ「そんなの決まってるじゃない。ギルドに入って、クエストを受けて、名を上げていくの」
ヴェント「ふーん、クエストねぇ……お前、受けたことあんの?」
ルミナ「当たり前でしょ。ノルヴェルでもプラチナランクまでいってたし」
ヴェント「ふーん……そうなんだ……って、は!? プラチナ!?」
ルミナ「年齢制限でダイヤとかブラックにはなれなかったけどね」
ヴェント(ブロンズ、シルバー、ゴールド……その上って、マジかよ……)
ヴェント「ふ、ふーん、まぁまぁやるじゃん」
ルミナ「“まぁまぁ”じゃないわよ。あんたが落ちこぼれてるだけ」
ヴェントは悔しそうに舌打ちし、地図を指差す。
ヴェント「ここからだと……“武闘都市ガルディナ”。クエストも多いし、武闘大会があるんだってさ」
ルミナ「確かに。砂漠地帯を越えればすぐね」
ヴェント「うへぇ、砂漠か……。暑いの苦手なんだよなぁ」
ルミナ「文句言ってると日が暮れるわよ、ほら行くわよ」
二人は砂を踏みしめ、灼ける風の中を進んだ。
蜃気楼が揺れる道、風に混じる砂粒が頬を打つ。
やがて地平線の先――黒光りする巨大な影が姿を現した。
それは、全身を硬い甲殻で覆ったサソリ型の魔獣。
ヴェント「げっ……あれ、もしかしなくてもモンスターだよな?」
ルミナ「当たり前でしょ。逃げる?」
ヴェント「冗談。行くぞ!」
サソリの尾がしなり、毒針が閃く。
ヴェントは風の刃を纏い、飛びかかる。
ヴェント「エアロスラッシュ!」
刃が毒針を斬り裂く。だが、砂煙の中からもう一体のサソリが現れた。
ルミナ「ライトランス!」
光の矢が二体目のサソリを貫く。
熱風の中で、ルミナの金髪がきらめいた。
ヴェント「ふぅ……危なかった。二体は予想外だな」
ルミナ「油断しすぎなのよ。ちゃんと魔力の流れを読まないと」
ヴェント「はいはい、先生」
汗をぬぐい、ふたりはようやく砂の丘を越える。
遠くに巨大な石壁と、街を囲む塔の群れが見えた。
ヴェント「見えた!あれが……武闘都市ガルディナ!」
ルミナ「活気がすごい……!あれだけの人が集まるなんて」
街門に着く頃には夕暮れが差し、風に太鼓の音が混じっていた。
門番「登録証を確認する……通れ」
ヴェント「くぅ~、やっと着いたぜ! これが噂の武闘都市か!」
ルミナ「人が多い……何かお祭りでもやってるのかしら?」
ヴェント「お、立て看板があるぞ。……なになに――」
《国王生誕70周年記念 武闘大会・三対三チーム戦 開催決定》
ヴェント「おおっ!来週開催じゃん!出ようぜこれ!」
ルミナ「よく見なさい、“三対三”よ。二人じゃ出られないわ」
ヴェント「最悪、頭数だけ合わせればいい。誰か誘えばなんとかなるだろ」
ルミナ「……自由ね。まぁ、まずはギルド登録からよ」
二人は街の中央にそびえる「冒険者ギルド・ガルディナ支部」へ向かった。
重厚な扉を開くと、ざわめきと酒の匂いが溢れ出す。
受付嬢「ガルディナへようこそ。登録証はお持ちですか?」
ルミナ「はい、こちら」
受付嬢「ルミナ=アーデンさん……え、プラチナランク!? 若いのにすごいわね!」
ヴェント「へぇー、褒められてるじゃん」
受付嬢「そちらの彼氏さんは?」
ヴェント「彼氏じゃない! 兄貴だよ! 俺は初めての登録なんでお願いします!」
受付嬢「それでは、ブロンズランクからのスタートですね。同じクエストは受けられませんが、よろしいですか?」
ヴェント「えっ!? ちなみにブロンズのクエストって?」
受付嬢「主に採集、調査、採掘……」
ヴェント「えぇ!? モンスター討伐とかじゃなくて!?」
ルミナ「雑用ね……」
ヴェント「頼むよ! 俺ならやれるって! 戦わせてくれ!」
ルミナ「せめてゴールドランクくらいから受けれません?」
受付嬢「うーん……それはちょっと」
背後から低い声が割り込んだ。
???「威勢だけはいいじゃねぇか。おもしれぇ」
振り向くと、長いコートに金のバッジをつけた男が立っていた。
ヴェント「なんだお前?」
バロウス「俺か? ガルディナの金槌・バロウス。ゴールドランクの冒険者だ」
バロウスは大きな斧を肩に乗せ、にやりと笑う。
バロウス「お前が俺に勝てたら、ギルドマスターに進言してやる。どうだ?」
受付嬢「えっ、バロウスさん! 本気なんですか!?」
バロウス「もちろんだリーファちゃん。勝ったら、君とのデートもお願いしたいな」
リーファ「ひゃっ……は、はい!? い、今マスター呼んできますっ!」
ざわつくギルド内。
ルミナ「厄介なのに絡まれたわね……」
ヴェント「あぁ、わかってる」
やがて人々が闘技場に集まった。
バロウスは斧を掲げ、威嚇するように叫ぶ。
バロウス「覚悟はいいか、若造!」
ヴェント「あぁ、いつでも」
周囲が息を呑む中、バロウスが突進した。
砂を蹴り、斧が唸りを上げる。
バロウス「十字斬!」
鋼の音。ヴェントの短剣がその斧を弾き返す。
ヴェント「遅いな。エアソード」
風が鳴いた瞬間、バロウスの体が後方へ吹き飛んだ。
地面に転がり、彼の斧がガランと音を立てる。
観客「な、なんだ今の速さ!?」「見えなかったぞ!」「あの金髪の子、めっちゃかわいい!!」
静寂の中、ヴェントは剣を収め、リーファの前へ歩み寄った。
ヴェント「悪かったな。やっぱりブロンズからでいいよ」
リーファ「そ、そんな……! 上級魔法学校次席のヴェント=アーデンさんですよね?
マスターに報告したら“そんな逸材に雑用をやらせるな!”って怒られました!」
ルミナ「まぁ……当然ね」
リーファ「ですので、ルミナ=アーデンさんと同じくプラチナランクからのスタートになります!」
ヴェント「えっ、マジで!? やった!」
ルミナ「“無駄に”上級学校まで行ってた甲斐があったわね」
ヴェント「“無駄に”は余計!」
リーファは少し頬を染めて笑った。
リーファ「それと……先ほどの失礼のお詫びに、お食事をご馳走させてください♡」
ヴェント「えっ、いいのか!? やったー!」
ルミナ「……は?」
ルミナの口角がひくりと動く。
ルミナ「まさかヴェントがモテてる……? ば、ばかな……」
ギルドの喧騒の中、兄妹のような二人の言い合いが再び始まる。
外では夕日が赤く街を染め、遠くで太鼓の音が鳴り響いていた。
新たな冒険者としての生活――
それはまだ、ほんの序章にすぎなかった。
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