白き獣と天使の影
(^^)/
魔界・南西部。
砂と枯れ地が果てしなく続く荒野の先で、異質な気配が渦を巻いていた。
ヴェント「……なぁ、シルフィナ」
シルフィナ「うん、感じてる」
風に混じる瘴気の流れが、どこか歪んでいる。
魔界特有の濃さではない。
“削られた”ような、不自然な清浄さ。
ヴェント「魔界なのに……空気が、軽すぎる」
シルフィナ「浄化系の術式ね。
しかもかなり強引……これは」
砂丘の向こうから、低く唸る声が響いた。
???「――――――――」
白い影が姿を現す。
獣。
だが魔界の魔獣とは明らかに違う。
全身を覆う純白の毛並み。
背には半透明の光翼。
身体中に刻まれた、歪んだ聖刻印。
ヴェント「……白い、魔獣?」
シルフィナ「……違う」
シルフィナの声が低くなる。
シルフィナ「聖属性で歪められた魔獣。
天使教のやり口よ」
白き魔獣が、二人を認識した瞬間――
咆哮とともに地面を蹴った。
ヴェント「来るぞ!」
闇風剣ダスクゲイルを抜き放つヴェント。
刃に風と闇が渦を巻く。
ヴェント「ウィンドスラッシュ!」
斬撃が直撃する――はずだった。
白き魔獣「――――ッ!」
斬撃が、光の膜に弾かれる。
ヴェント「なにっ!?」
シルフィナ「防御結界……しかも自己再生付き!」
魔獣の刻印が光り、傷が塞がっていく。
ヴェント「回復してる!?
こんなの、普通の魔獣じゃねぇ!」
シルフィナ「……かなり不安定な状態ね」
魔獣が跳躍。
牙がヴェントに迫る。
ヴェント「くっ!」
刃で受け止め、地面を滑る。
その瞬間――
???「……やはり、だな」
低く、冷静な声。
???「ふん。
邪魔建てするなら始末してもよかったがこの程度か.......」
森の奥から、二人の人影が現れる。
白衣の司祭と、黒衣の司祭。
シルフィナ「……天使教」
白衣の司祭が魔獣を一瞥する。
エルグリオ「実験体・聖獣第七号。
闇風への反応、想定以上だ」
黒衣の司祭が鼻を鳴らす。
バルマ「だから言っただろう。
こんな出来損ないを“聖獣”と呼ぶなと」
バルマの視線がヴェントに突き刺さる。
バルマ「……その剣。
暴風の系譜か?」
ヴェント「……なに?」
エルグリオ「興味深い」
エルグリオ「闇を宿しながら、理性を保つ。
人間で、ここまでとは」
シルフィナ「あなた達……
魔界で何をしているの?」
バルマ「決まっている」
バルマ「浄化だ」
バルマ「魔界という病巣を、
人間界に広げぬためにな」
ヴェント「ふざけんな!」
エルグリオ「感情的だな。
だが理解はできる」
エルグリオは白き魔獣の刻印に指を向けた。
エルグリオ「だが、この個体は不要だ」
バルマ「……なに?」
エルグリオ「より適した器を見つけた」
その言葉に、シルフィナが息を呑む。
シルフィナ「……勇者」
エルグリオ「察しがいい」
エルグリオ「“完成形”は、別にある」
白き魔獣が苦しげに唸る。
バルマ「ちっ……回収だ」
白光が走り、魔獣の身体が崩れ落ちる。
エルグリオ「覚えておけ」
エルグリオ「天使教は本番に移行する」
バルマ「次は、逃がさん」
二人の司祭は光に包まれ、姿を消した。
沈黙。
ヴェント「……なんだよ、今の」
シルフィナ「天使教の宣戦布告ね」
ヴェント「……」
剣を握る手に、力がこもる。
ヴェント「あんな奴らがいるなんて……」
白き獣の残骸が、砂に溶けて消えていく。
それは、
魔界と人間界を揺るがす戦争の前触れだった。
(^^)/




