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光と風の境界  作者: 770
39/39

白き獣と天使の影

(^^)/

魔界・南西部。

砂と枯れ地が果てしなく続く荒野の先で、異質な気配が渦を巻いていた。


ヴェント「……なぁ、シルフィナ」


シルフィナ「うん、感じてる」


風に混じる瘴気の流れが、どこか歪んでいる。

魔界特有の濃さではない。

“削られた”ような、不自然な清浄さ。


ヴェント「魔界なのに……空気が、軽すぎる」


シルフィナ「浄化系の術式ね。

しかもかなり強引……これは」


砂丘の向こうから、低く唸る声が響いた。


???「――――――――」


白い影が姿を現す。

獣。

だが魔界の魔獣とは明らかに違う。


全身を覆う純白の毛並み。

背には半透明の光翼。

身体中に刻まれた、歪んだ聖刻印。


ヴェント「……白い、魔獣?」


シルフィナ「……違う」


シルフィナの声が低くなる。


シルフィナ「聖属性で歪められた魔獣。

天使教のやり口よ」


白き魔獣が、二人を認識した瞬間――

咆哮とともに地面を蹴った。


ヴェント「来るぞ!」


闇風剣ダスクゲイルを抜き放つヴェント。

刃に風と闇が渦を巻く。


ヴェント「ウィンドスラッシュ!」


斬撃が直撃する――はずだった。


白き魔獣「――――ッ!」


斬撃が、光の膜に弾かれる。


ヴェント「なにっ!?」


シルフィナ「防御結界……しかも自己再生付き!」


魔獣の刻印が光り、傷が塞がっていく。


ヴェント「回復してる!?

こんなの、普通の魔獣じゃねぇ!」


シルフィナ「……かなり不安定な状態ね」


魔獣が跳躍。

牙がヴェントに迫る。


ヴェント「くっ!」


刃で受け止め、地面を滑る。

その瞬間――


???「……やはり、だな」


低く、冷静な声。


???「ふん。

邪魔建てするなら始末してもよかったがこの程度か.......」


森の奥から、二人の人影が現れる。


白衣の司祭と、黒衣の司祭。


シルフィナ「……天使教」


白衣の司祭が魔獣を一瞥する。


エルグリオ「実験体・聖獣第七号。

闇風への反応、想定以上だ」


黒衣の司祭が鼻を鳴らす。


バルマ「だから言っただろう。

こんな出来損ないを“聖獣”と呼ぶなと」


バルマの視線がヴェントに突き刺さる。


バルマ「……その剣。

暴風の系譜か?」


ヴェント「……なに?」


エルグリオ「興味深い」


エルグリオ「闇を宿しながら、理性を保つ。

人間で、ここまでとは」


シルフィナ「あなた達……

魔界で何をしているの?」


バルマ「決まっている」


バルマ「浄化だ」


バルマ「魔界という病巣を、

人間界に広げぬためにな」


ヴェント「ふざけんな!」


エルグリオ「感情的だな。

だが理解はできる」


エルグリオは白き魔獣の刻印に指を向けた。


エルグリオ「だが、この個体は不要だ」


バルマ「……なに?」


エルグリオ「より適した器を見つけた」


その言葉に、シルフィナが息を呑む。


シルフィナ「……勇者」


エルグリオ「察しがいい」


エルグリオ「“完成形”は、別にある」


白き魔獣が苦しげに唸る。


バルマ「ちっ……回収だ」


白光が走り、魔獣の身体が崩れ落ちる。


エルグリオ「覚えておけ」


エルグリオ「天使教は本番に移行する」


バルマ「次は、逃がさん」


二人の司祭は光に包まれ、姿を消した。


沈黙。


ヴェント「……なんだよ、今の」


シルフィナ「天使教の宣戦布告ね」


ヴェント「……」


剣を握る手に、力がこもる。


ヴェント「あんな奴らがいるなんて……」


白き獣の残骸が、砂に溶けて消えていく。


それは、

魔界と人間界を揺るがす戦争の前触れだった。

(^^)/

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