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光と風の境界  作者: 770
38/39

北の女王が差し出すもの

(^^)/

シュリーデ「へぇ……双子なんだ……」


鉄扇を軽く開き、シュリーデは感心したように息を吐いた。

その視線は好奇心と警戒が半分ずつ混じっている。


ルミナ「ってな感じで、母さんと……

アルガスさん、セレナさんが、私の師匠ってわけ」


肩をすくめるルミナの口調は軽いが、その裏には長い時間が滲んでいた。


シュリーデ「……なるほどね」


シュリーデは一度だけ、静かに目を閉じる。


シュリーデ「エリシアが“母”で、

剣聖アルガスと賢者セレナが師匠……」


シュリーデ「……なんて環境で育って、

よく“普通”でいられたわね」


ルミナ「普通かどうかは知らないけど」


アリア「普通ではありませんが.......」


セリナ「私から見ても……十分規格外ですよ」


ルミナ「ちょっと!」


シュリーデ「ふふ……」


ほんの一瞬、シュリーデの口元が緩む。


シュリーデ「……エリシアはね、

昔から“守る側”の人間だった」


シュリーデ「自分が傷つくことを、まるで気にしないで……

それでも誰かの前に立つ人」


シュリーデ「あなた達の話を聞いて、少し安心したわ」


ルミナ「……?」


シュリーデ「その子が遺したものが、ちゃんと生きてるってことがね」


その空気を断ち切るように、控えめなノック音が響く。


レット「失礼します、シュリーデ様」


扉の隙間から、先ほどとは打って変わって緊張した面持ちのレットが現れる。


シュリーデ「入りなさい」


レット「はっ」


一歩下がり、深く頭を下げる。


シュリーデ「レット、さっきの自分勝手な行動は不問にしてあげる」


レット「……!」


驚きと安堵が入り混じった表情で、レットは顔を上げる。


シュリーデ「その代わり――」


シュリーデは鉄扇の先で、静かにルミナを指した。


シュリーデ「この子の“護送”を、あなたに任せるわ」


ルミナ「……は?」


レット「……護送、ですか?」


シュリーデ「ええ」


シュリーデはソファから立ち上がり、ゆっくりと歩み寄る。


シュリーデ「この子達は南部へ向かう。

正規ルートでね」


シュリーデ「途中で余計な横槍が入らないよう、

あなたが前に立ちなさい」


レット「……ですが、私は……」


シュリーデ「不服?」


レット「い、いえ! 滅相もありません!」


即座に姿勢を正すレット。


シュリーデ「いい返事ね」


シュリーデ「それに――」


シュリーデはルミナへ視線を戻す。


シュリーデ「この子を無事に送り届けられたなら、

”アレ”をあげる」


レット「……っ!」


レットの喉が、ごくりと鳴る。


レット「……命に代えても、務めを果たします」


ルミナ「ちょっと待って、話が勝手に進んでない?」


シュリーデ「魔界ではよくあることよ」


アリア「……まぁ、今さらですね」


セリナ「安全に南へ行けるなら、ありがたい話です」


ルミナ「二人とも順応早すぎでしょ……」


シュリーデ「それにね」


シュリーデは、ふっと声を落とす。


シュリーデ「あなたが“カイの血縁”である以上、

無事に南部へ辿り着いてもらわないと……

困る人間が、何人もいるのよ」


ルミナ「……カイ、ね」


その名前を口にするたび、胸の奥がざわつく。


シュリーデ「今日はもう休みなさい」


シュリーデ「ゲストルームは好きに使っていいわ」


シュリーデ「明日、日が昇ったら出発よ」


ルミナ「……わかった」


アリア「ありがとうございます、シュリーデ様」


セリナ「ご配慮、感謝いたします」


シュリーデ「礼はいらないわ」


シュリーデ「これは“恩”じゃない。

未来への……投資よ」


4人が部屋を出ていく背中を見送りながら、

シュリーデは静かに鉄扇を閉じた。


シュリーデ(……エリシア)


シュリーデ(あなたの子供たちが、

今度は“境界”を越えようとしている)


シュリーデ(今度こそ……

世界は、間違えないといいのだけれど)


北の女王の瞳に映るのは、

まだ見ぬ“魔界と人間界の行く末”だった。

(^^)/

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