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光と風の境界  作者: 770
37/39

北の女王と、知られざる血縁

(^^)/

ゼゼル「ぐ……ぐぅ……申し訳……ありません、シュリーデ様……」


床に崩れ落ちたゼゼルの身体から、黒い血が滲む。

先ほどまでの狂気は影を潜め、今はただ震えるだけの存在だった。


シュリーデ「今後は気を付けて頂戴ね……」


冷たいが、どこか慈悲すら感じさせる声音。

シュリーデは鉄扇を畳み、ゆっくりとゼゼルへ視線を落とした。


シュリーデ「テオ」


テオ「はい! シュリーデ様!」


シュリーデ「ゼゼルを連れて行って」


テオ「はい!」


テオはゼゼルの上半身と下半身をそれぞれ抱え、慌ただしく走り去っていく。


ルミナ(……あいつ、しゃべれたんだ……)


アリア(ずっと鳴き声しか出さないと思ってた……)


セリナ(やはりただの眷属ではありませんね……)


観客ざわ……ざわ……


場内に、遅れてどよめきが広がる。


シュリーデ「……ところで、あなた」


鉄扇の先端が、すっとこちらを向く。

指し示されたのは――ルミナだった。


ルミナ「は、はい……」


シュリーデ「あなた……カイの血縁ね? ここで何をしているの?」


ルミナ「……カイ? 誰かは知らないけど……

空間移動してこの町に着いたら捕まって、

脱出したいならこのゲームに参加しろって……」


思い出すだけで腹立たしそうに、言葉を区切る。


レット「!?」


レットはシュリーデの背後で、必死に身振り手振りを繰り返し、冷や汗をかく。

だがその動きは逆に目立っていた。


ルミナ「そいつに……」


ルミナははっきりと、レットを指差した。


レット「!?」


シュリーデ「レット……どういうこと?

侵入者の情報なんて、私には一切来てないけど?」


レット「も、申し訳ありません!

シュリーデ様のお手を煩わせるまでもないと思い、

独断で動きました!」


シュリーデ「結果、ゼゼルが暴走してルール違反。

あなた……何をやってるの?」


レット「申し訳ございません!!」


深く頭を下げ、床に額を叩きつけるレット。


シュリーデ「……まぁいいわ。レットの処罰は後で考えるとして……」


シュリーデは踵を返し、背を向ける。


シュリーデ「あなた達――ついてらっしゃい」


拒否する余地はなかった。

その場の空気そのものが、従えと命じているようだった。


3人はシュリーデに導かれ、カジノ上階の私室フロアへ案内された。

扉が閉じた瞬間、外の喧騒が嘘のように遠のく。


シュリーデ「まぁ、くつろいで」


柔らかく整えられたソファ、魔界産の照明が淡く灯る室内。

あまりに“上等な客間”に、3人は一瞬戸惑う。


セリナ「シュリーデ様……ありがとうございます」


シュリーデ「いいのよ。炎帝のお嬢ちゃん」


セリナ「……」


その呼び方に、一瞬だけセリナの目が揺れる。


アリア「私たちは……どうなるのでしょうか?」


ルミナ「今のところ敵意は見えないけど……

まぁ、敵意があったところで、逃げ切れる相手じゃないわよね」


シュリーデ「賢いのね。ほんとに……カイの血縁者?」


ルミナ「だからカイって人は知らないってば」


シュリーデ「母親から聞いてないの?」


ルミナ「母さんから? 母さんを……知ってるの?」


シュリーデ「………………」


一瞬、言葉を失ったようにシュリーデは視線を伏せる。


シュリーデ「……何にも知らないのね……」


そのまま、ちらりとだけセリナへ視線を向ける。

セリナはわずかに頷いた。


シュリーデ「ゴ、ゴホン……まぁ、いいわ」


話題を切り替えるように、鉄扇で口元を隠す。


シュリーデ「で? 何しにこんな北の果てに?」


セリナ「最北部に出てしまって……

とりあえず一番近くの街へと、空間移動で……」


シュリーデ「ちゃんと南部の正門から入れば、

レット達に絡まれることもなかったのにね」


セリナ「……以後、気を付けます」


シュリーデ「今夜はゲストルームを開けてあげるわ。

出発は明日以降になさい」


ルミナ「助かります……」


アリア「ありがとうございます」


シュリーデ「それと…………」


ふと、シュリーデの視線が柔らかくなる。


シュリーデ「エリシアのこと……聞かせてくれる?」


その名前が出た瞬間、ルミナの肩が小さく跳ねた。


ルミナ「………………えぇ」


短く、しかしはっきりと答えた。


その沈黙の向こうで、

魔界の女王と、知られざる“母”の因縁が、静かに動き出そうとしていた。

(^^)/

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