闇の領域と、北の女王
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ゼゼル「そろそろラストかしらね、ダブル」
妖しく笑いながら、ゼゼルが指を鳴らす。
空中に浮かぶ二つの黒いサイコロが唸りを上げて回転した。
デンチャン「出目は…………6、4! 合計10!」
ゼゼル「あら~、もう安全圏の数字が出ちゃった」
余裕の笑み。
セリナ(10……このまま行けばゴール目前……ですが……)
セリナ「では私もダブルで。もう……ここで決めさせていただきましょう」
指先に込めた魔力と共に、サイコロを放つ。
デンチャン「出目は…………4、1! 合計5!」
一瞬の静寂ののち、場がざわめいた。
デンチャン「ゼゼル様と同マス! 直接対決だ!!」
セリナ「なっ……!」
ゼゼル「オッケー♡ 行ってくるわね」
次の瞬間、黒い霧が床から噴き上がり、二人の姿を包み込んだ。
闇。
音も、光も、気配すらも断たれた異界。
ゼゼル「セリナ=ヴァルガ。南天のイグニス=ヴァルガの十本刀・第四位……とてもそうは見えないわね」
ねっとりとした声が、四方から同時に響く。
セリナ「人を見かけで判断すると、痛い目を見ますよ?」
ゼゼル「ごめんなさ~い。でもね、そんなチンチクリンに何ができるの?」
闇が脈打つ。
ゼゼル「“エリア7”」
セリナ「!?」
空間が一気に捻じ曲がり、セリナの周囲に半径数十メートルの“黒い円環”が形成された。
外の世界の光も、音も、完全に遮断される。
ゼゼル「私はね、領域系魔法の使い手なの。この領域の属性は“闇”。
誰にも見られず、無残に散りなさい」
セリナ「誰にも見られない……? 映像は届かないんですか?」
ゼゼル「そうなのよ~。あなたの最期は、誰にも見られず闇の中で死ぬの」
その言葉に、セリナは――微笑んだ。
セリナ「よかった。あまり、見られたくなかったんですよ」
ゼゼル「……え?」
セリナの足元から、まったく異質な魔力が湧き上がる。
水と炎、相反する二つの属性が、一つの鼓動として共鳴し始めた。
セリナ「見た目も老けて見えちゃいますし……
何より、お父様が見たらと思うと、恥ずかしくて」
ゼゼル「……あ、ぁ……?」
セリナの姿が、一瞬で歪む。
華奢な少女の輪郭がほどけ、艶やかな妖気を纏う“巫女”の姿へと変貌する。
セリナ「私が“二律の巫女”なんて呼ばれる所以は――この魔力です」
右手に炎、左手に水。
互いに決して交わるはずのない二つの力が、渦を巻くように融合していく。
セリナ「《双極融合・蒼炎輪》」
青白い水焔と紅蓮の炎が、螺旋となってゼゼルを包み込んだ。
ゼゼル「ああああああああああああああああ!!」
闇の領域そのものが悲鳴を上げる。
領域の壁が音を立てて砕け散り、黒い空間が焼き尽くされていった。
セリナ「ごめんなさい……手加減は、したんですけど……」
闇が晴れ、セリナはふらりと膝をつく。
再び魔力を抑え、本来の少女の姿へと戻っていく。
システム音声「遊技場へ転送いたします」
アリア「セリナ! 大丈夫でしたか!?」
ルミナ「よく勝ったわね! 本当に……!」
セリナ「はい……だいじょうぶでした……!」
息を切らしながらも、はっきりとそう答える。
床に転がるゼゼル。
ゼゼル「……ガ……ハ……」
レット「ハッ! 平気かよ!? ゼゼ!!」
ゼゼル「……う……うぅ……」
その身体が、またもやゆっくりと再生を始める。
ルミナ「あのダメージからでも復活するんだ……
ダメージイートって、ほんとにすごいのね……」
ゼゼル「……はぁ……はぁ……もういい……」
その瞳に、理性の色は消えていた。
ゼゼル「殺してやる!!」
レット「やめろ!! ルールには従え!!」
ゼゼル「ルールなんてどうでもいい!!
“エリア999”!!」
空間が悲鳴を上げる。
今までとは比べ物にならないほどの、どす黒い魔力が遊技場全体を覆い尽くそうとした。
レット「ばかっ! お前……!!」
ゼゼル「ああああああああああああああああああああ!!」
その瞬間。
シュリーデ「――ふっ」
たった一息。
空間に満ちた闇の領域が、まるで幻だったかのように消失した。
ゼゼル「……!?」
静まり返る遊技場。
階段の奥から、ゆっくりと足音が響く。
シュリーデ「だめじゃない。ルールは守らないと」
青いドレスに大胆なスリット。
蛇のようにうねる髪。
巨大な鉄扇を肩に担ぎ、優雅に階段を下りてくる女。
シュリーデは無造作に鉄扇を一振りし――
ゼゼルの身体は、音もなく両断された。
シュリーデ「今、この時をもって……
挑戦者の勝ち、よ」
血も煙も、すべては一瞬で霧散する。
シュリーデ「……あら?」
ゆっくりと、セリナたちの方へ視線を向ける。
シュリーデ「懐かしい魔力ね?」
その一言に、場の空気が凍りついた。
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