賭けられた命と、教師の微笑
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ゼゼル「ほらテオ、起きなさい」
床に転がったまま白目をむいていたテオの額を、ゼゼルがつま先で軽く小突く。
テオ「アー……」
ぎこちなく起き上がるテオ。砕けた床の破片が、ひとりでにずるずると元の形へ戻っていく。その身体には、確かに回復の魔力が満ちていた。
ルミナ「うわ……生きてる……本気で殴ったのに……」
レット「当たり前だろ。テオは魔力を外に出せない。回復と防御特化の悪魔なんだからな」
テオ「キキキ」
裂けていたはずの皮膚が、瞬く間に塞がっていく。
アリア「……確かに、みるみる回復してますね……」
セリナ「ダメージイートに持続回復、防御特化……直接戦闘だと、厄介極まりないですね……」
ルミナ「さっきみたいな戦闘は、ターンプレイヤーだけなの?」
セレナ「基本はそうよ。ただし完全支援型の場合は……変更可能ね」
レット「なんだよ、変更あるなら先に言ってくれよ」
アリア「急に始めておいて、なんて言いぐさですか!」
ゼゼル「な〜に〜? ルール知らないなんて言い訳、魔界じゃ通用しないわよ〜?」
三兄弟の笑みが、いやらしく揃って歪む。
レット「じゃあ次のターンいくぜ! ダブル!」
デンチャン「出目は…………1、1! 合計2! ああっとレット様、出目が悪い!」
レット「ちっ……運がねぇな」
セリナ「……2……。ここは安全に、3か4狙いで1つ振りましょうか……」
ルミナ「いいえ、アリア。ダブルで振りなさい」
アリア「リスクが大きすぎませんか?」
ルミナ「大丈夫。理由は3つあるわ」
一瞬、ルミナの視線が鋭くなる。
ルミナ「1つ。【2】の目が出て、あいつと戦うのが一番危険。2つ、ある程度のモンスターなら【あっち】の世界は魔力が通じてる。私の支援が届く。3つ……残りマスは【13】。ゴールだけは、絶対に取りに行く」
アリア「……わかりました。私もダブルで振ります!」
デンチャン「戦士アリア、ダブルを選択! 出目は…………6、1! 合計7!」
デンチャン「差は……5! 5の障害はあぁ!! 守護者スフィンクス! 神話級モンスターだぁぁ!!」
アリア「5で、こんなに強……」
言葉が終わる前に、アリアの姿が光に包まれて消えた。
セリナ「アリアさん! 大丈夫でしょうか……!?」
ルミナ「……ごめん、ちょっと集中するから……」
その背後。
空間を埋め尽くすほど、幾重にも重なった魔法陣が展開されていた。円、三角、五芒星、逆位相の刻印――それらすべてが補助魔法式。
セリナ(……これ……全部、補助魔法……!? アリアさんに……どれほど掛けるつもり……)
スフィンクス「――汝が、妾と戦うのか」
半分が獅子、半分が神の女。その神話の守護者が、灼熱の光を纏って玉座から立ち上がる。
アリア「っ……!」
足元の空気が歪む。重圧だけで、意識が削られていく。
スフィンクス「妾の前に、意識も保てぬか……消えるがよい――サンシャイン・エクレ」
アリアの視界が、白に染まる――はずだった。
スフィンクス「――いど……」
声が途切れる。
次の瞬間、頭部が宙を舞った。
スフィンクス「………………」
胴体が一拍遅れて崩れ落ち、光の粒子となって消滅する。
アリア「……すみません……もう……限界です……」
そう呟くと同時に、身体が力を失い、その場に崩れる。
システム音声「遊技場へ転送いたします」
セリナ「アリアさん!! 大丈夫ですか!?」
帰還したアリアを、セリナが慌てて抱き支える。
アリア「……ルミナ……いったい……どれだけ補助魔法……かけたんですか……」
ルミナ「アハハ……ちょっと、無茶しすぎちゃったかも……」
その場にどさりと座り込み、額から流れる汗を拭う。
ルミナ「大事な生徒に、怪我させられないでしょ?」
にこり、と。
さっきまで拳に殺気を宿していた少女と、同一人物とは思えないほど、穏やかな笑顔だった。
アリア「……ほんと……ずるい人ですね……」
レット「ヒュゥ……神話級を一瞬で首狩りか。やっぱ面白ぇな、お前ら」
ゼゼル「ますます……賭け甲斐が出てきたわねぇ……♡」
セリナ(……これはもう、すごろくなんかじゃありません……完全に――処刑ゲームです……)
盤上に漂う空気が、さらに冷たく、重く沈んでいった。
次の一手が、誰の命を奪うか――
誰の心を折るか――
すでに、遊技の域はとっくに越えていた。
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