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光と風の境界  作者: 770
34/39

静寂を砕く身体強化

(^^)/

ルミナ「あぶなっ! ちょっと、怪我したらどうすんのよ!」


黒水晶のような床を蹴り、紙一重で跳躍するルミナ。雷を帯びたテオの拳が、髪の先を焦がして通過した。


テオ「パッパッパ」


無邪気な声とは裏腹に、その動きは異様なほど正確で速い。地を踏みしめるたび、雷光が弾け、空気が震えた。


レット「なぁゼゼ……何分耐えると思う?」


遊技場、腕を組んで見下ろすレットが口元を歪める。


ゼゼル「そうねぇ~……テオの性質も考えるとぁ、七、八分ってとこかしら~」


ゼゼルは楽しそうに足を揺らし、まるで他人事のように呟いた。


盤上のアリアは、祈るように拳を握っている。


アリア「……がんばって……」


セリナ「……もしかしたら、ルミナさん危ないかもしれませんね」


アリア「え?」


セリナ「さっきのケルベロスも地竜もそうですが……本来、ダメージイートなんて能力は持っていないはずなんです」


アリア「……」


セリナ「ということは……テオたちも“後付け”で与えられた可能性が高い。つまり――」


デンチャン「あぁっとぉ! 魔導士ルミナ、被・弾ァ!!」


アリア「――っ!?」


雷光が一閃。ルミナの左腕をかすめ、鮮血が宙に散った。


ルミナ「いったぁぁぁぁ!!」


テオ「マママンマ」


ルミナの腕から血が滴り、黒い水晶床に赤い斑点を描く。


ルミナ「……もう怒った。ほんとに、ぶっ飛ばしてやる」


いつもの軽口とは違う、低く冷えた声。ルミナの魔力が一気に膨れ上がった。


――――――――――――


遠く離れた村外


シルフィナ「ヴェントって、ルミナと喧嘩しないの?」


焚き火のそばで腰を下ろしながら、何気なく問いかける。


ヴェント「昔はしたさ。でも……」


シルフィナ「でも?」


ヴェント「…………一回も勝ったこと、ねぇんだよ……」


シルフィナ「え?」


ヴェント「あいつの得意なのはさ……攻撃魔法でも、防御魔法でもないんだ」


白い魔獣の気配を探りながらも、ヴェントの視線はどこか遠くを見ていた。


ヴェント「……“準備”だ」


――――――――――――


ルミナ「――身体強化」


その一言で、世界が変わった。


ルミナ「“筋力増強”】【皮膚硬化】【反応速度上昇】【ベクトル変換】」


詠唱が畳みかけるように続く。ルミナの身体を透明な魔法陣が幾層にも包み込む。


ルミナ「“膂力最大化”】【バネ上昇】【衝撃上昇】【必中”】【防御力無効化】」


空気が重く軋み、床の水晶に亀裂が走る。


ルミナ「“保護魔法無効化”】【速度上昇】――」


最後の詠唱と同時に、ルミナの姿がぶれた。


ルミナ「――――んにゃろおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


空間を叩き割るような踏み込み。視界から消えた次の瞬間、ルミナはテオの懐にいた。


テオ「ヒッ」


反射的に両腕で防御するテオ。しかし、次の瞬間――


ドンッ!!


重たい衝撃音が闘技空間を震わせる。ルミナの拳が、雷をまとった腕ごとテオを貫いた。


テオ「うぐううううううううううううううううう!!」


身体が宙を舞い、黒水晶の床を砕きながら転がる。雷光が霧散し、意識を失って静止した。


一瞬の静寂。


システム音声「遊技場へ転送いたします」


光に包まれ、ルミナの身体は盤上へと引き戻される。


ルミナ「……ふぅ……」


アリア「……すごいです……」


セリナ「……すごい魔法ですね……!」


ルミナ「そんな大したことないわよ……ただの補助魔法を、やみくもにかけまくっただけ……うっ……」


片膝をついた途端、膝が震え、床に手をつく。魔力切れの兆しだった。


レット「ヒュゥ! すごい威力だったじゃないか!」


ゼゼル「あれも対策しとかないとね~……♡」


二人の視線が、露骨な“獲物を見る目”へと変わる。


アリア「……なんだか、すごく嫌な感じですね……」


セリナ「ええ……もう、あまり手の内をさらせませんよ……」


盤上の空気は、先ほどよりもさらに冷え切っていた。


すごろくは、もはや“遊び”ではなく――

確実に命と力を削り取る処刑台へと変貌していた。

(^^)/

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