牙と雷の邂逅
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ケルベロス「グォォォォォォォォォォ!!」
地を揺らす咆哮と共に、三つの首を持つ黒炎の魔獣が一斉に牙を剥く。灼熱の息と腐臭混じりの風が吹き荒れ、セリナの髪とマントを大きく煽った。
セリナ(……会場に映像を送られていますね。ここで大技を重ねれば、完全に手の内を読まれる……)
ケルベロスは地響きを立てて突進してくる。四肢が地面を削り、爆音と共に距離が一気に縮まる。
セリナ(まずは低級魔法で様子見……)
セリナ「フレイムランス! サンダーランス!」
詠唱と同時に、炎と雷の二本の槍が空を裂き、一直線にケルベロスの胸部へと突き刺さった。
ケルベロス「グアアアアアアアア!!」
苦悶の叫びと共に、傷口から黒煙が噴き出す――が次の瞬間、肉体が不気味に膨張し始めた。
セリナ「……っ、ダメージイート!?」
与えた傷を“喰らって”肥大化する異常な回復。皮膚が盛り上がり、筋肉が蠢き、三つの首が不自然に太くなる。
ケルベロスは一斉に噛みつきへと転じた。
ケルベロス「ガァッ!! グルルルル!!」
セリナ「くっ……!」
セリナは浮遊魔法で強引に宙へ逃げる。牙が空を噛み、炎のブレスが足元をかすめる。
セリナ(このまま削り合いは不利……一撃で仕留めなければ)
魔力を一気に引き上げる。周囲の瘴気が渦を巻き、背後の空間が歪む。
セリナ「……フレイムテンペスト」
低く、しかし確かな詠唱。直後、背後に巨大な灼熱の球体が出現し、闘技場の半分を焼き尽くすほどの熱量を帯びた。
セリナ「これなら――!」
セリナが杖を振り下ろすと同時に、炎の大球が落下。ケルベロスを包み込み、轟音と共に爆発する。
ケルベロス「――――――」
咆哮は途中で途切れ、肉体は一瞬で蒸発した。
システム音声「遊技場へ転送いたします」
光に包まれ、セリナの身体が再びすごろく盤上へと引き戻される。
セリナ(魔力も削られる……手の内も晒される……本当に最悪のゲームですね……)
アリア「セリナ、大丈夫ですか!?」
セリナ「ええ、なんとか……ありがとうございます」
ルミナ「なるべく相手より遅く進まないと不利ね、このゲーム……」
後ろのマスでは、ゼゼルとテオが楽しげに身を乗り出していた。
ゼゼル「すごい魔法だったわね〜。対策、考えないと♡」
テオ「ビエッヘ……」
デンチャン「さぁさぁ続いてぇ!3ターン目の開始だぁ!!」
テオが無邪気にサイコロを抱き上げる。
テオ「ビエビエ!」
デンチャン「テオ様、ダブルダイスを選択ぅ!!」
ルミナ「なんで今ので分かるのよ……」
テオは両手で二つのサイコロを転がした。
テオ「ダーブッ!」
デンチャン「出目はぁ……6と5!合計11だぁ!!」
アリア「……まずいですね」
セリナ「一気に9マスも離されました……」
ルミナ「ならこっちもダブルで行くまでよ!」
アリア「……その目、ギャンブラーの目です……」
ルミナ「行くわよ!えいやっ!」
デンチャン「出目はぁ……4と5!合計9ィ!!」
セリナ「あ……」
盤上の駒が進み、ルミナの駒はテオの駒と同じマスに重なった。
ルミナ「同じマス……こういう場合はどうなるの?」
セリナ「罰ゲームはありません、ただし……」
テオ「ニヤー……」
テオは口元を歪め、不敵な笑みを浮かべた。
セリナ「……相手プレイヤーとの“直接バトル”になります」
その言葉と同時に、ルミナとテオの周囲の景色が歪んだ。
ルミナ「え、ちょ――」
テオ「アッパー」
視界が反転し、次の瞬間、二人は別次元の闘技空間へと投げ出されていた。床は黒水晶のように透き通り、天井は雷雲に覆われている。
ルミナ「え? なにこれ……強制バトル……的な?」
テオは人懐っこい笑みを浮かべたまま、両腕をゆっくりと構える。次の瞬間、瘴気が一気に跳ね上がった。
テオ「ビエエエエ……」
空間が軋み、紫電がテオの身体を這い回る。
ルミナ(……この子、さっきまでの間抜けな雰囲気とまるで別人……)
観客席では、ゼゼルとレットが興奮した声を上げていた。
ゼゼル「来た来たぁ!テオの本気!」
レット「くく……人間の魔術師がどこまで耐えられるか、見物だな」
ルミナは杖を強く握り締め、深く息を吸う。
ルミナ「……いいわ。久しぶりに本気で“喧嘩”しようじゃない」
紫電が走る魔界の闘技空間で、ルミナとテオの視線が正面から激突する。その背後では、盤上で動けないアリアとセリナが、ただ固唾を呑んで見守っていた。
沈没船の歯車は、確実に“死”へと近づいて回り始めていた。
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