凍える北と“沈没戦”
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吹き荒れる氷風は、皮膚を裂くような鋭さだった。
雪ではない。氷が粉末になって横殴りに叩きつけてくる。
ルミナ「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”……さむずぎるるるるるるる!!」
ルミナは耳まで真っ赤にし、コートを抱きしめながら叫んだ。
声は氷点下の空気に吸い込まれ、すぐに霧散する。
アリア「さすがに……意識が遠のいてきましたね……。寒いとかそういう次元じゃありません……」
唇は紫色に染まり、呼吸が白ではなく蒸気のように濃く漏れる。
セリナ(まずい……この冷気、魔界の中でも最北域“氷哭地帯”……。人間は長くいられません……)
セリナは二人の様子を見て判断した。
セリナ「少々……魔力を使いすぎますが……ここからなら……っ、“転移術・近”!!」
三人を包み込むように、周囲の空間が歪み、白い大地の景色が波紋のように揺れながら転じていく。
ーーー
ひずみが収まり、三人は別の場所へ押し出される。
ルミナ「……あったか……くはないわね。でもさっきよりはマシよ……」
まだ寒い。だが“皮膚が裂ける痛み”はなくなっている。
セリナ「はぁ……はぁ……。久しぶりに転移術なんて使いましたから……駄目ですね……完全に魔力切れです……」
アリア「でも助かりました。ありがとうございます、セリナさん」
アリアは胸に手を当てながら深く息をつく。危険域は脱した。
セリナ「ここは……北の都市です。“三大悪魔”の一角、毒々のシュリーデ様の支配地域ですね」
ルミナ「毒々……物騒な名前ね。ほんとに大丈夫?」
セリナ「基本的に“ギャンブル”にしか興味がないお方なので、下手に逆らわなければ問題ありません」
アリア「確かに……街並み、カジノが多いですね。光ってます」
目の前には極寒とは思えぬ、巨大なネオンと音楽が響く街が広がっていた。
氷の外壁と毒々しい装飾。魔界らしい不気味さと退廃の香り。
ーーー
街の出口へ向かう三人。
門番「出国料……」
セリナ「え?」
門番「出国料だ。あと、入国証も出せ」
セリナ(入国証……?そんな制度、魔界には……)
ルミナ「入国証なんてもってないわよ。だって転移魔法で入った──」
セリナ「!? だめっ!!」
門番「転移魔法!? 衛兵ッ! 捕らえよ!!」
複数の衛兵「応ッ!!」
瞬間、十数体の悪魔兵が一斉に迫り、三人は逃げる暇もなく拘束された。
ーーー
北の街最大のカジノ《ポイズン・パレス》地下牢。
薄暗い牢獄の中、氷柱のような柱がそこかしこに生えている。
ルミナ「ごめん……まさかこんな大事になるとは……」
セリナ「私も魔力切れで動けなかったですし……むしろ下手に戦わなかったのは正解ですよ」
アリア「ところで……どうやったら出られるのでしょうか……」
セリナ「シュリーデ様に話をつけるのが一番早いです。彼女は過激派ではありませんし、話は聞いてくれるはずですが……」
ルミナ「でも、ギャンブルにしか興味ないんでしょ? こんな地下牢に来てくれるの?」
セリナ「一応、衛兵には伝えたのですが……。この街、ルールが厳しいので……」
???「じゃあ、ギャンブルで出国料作ればいいじゃん」
???「そうだね、そうだね。ちょうど3:3だしね」
???「エヘヘ……エヘ……ヘヘヘ」
アリア「!? いつの間に!? 全く気配が……!!」
三人の悪魔──子どものような体格だが、眼光は異様に鋭い。
ルミナ「アンタたち何者よ? この街のボスの関係者?」
レット「僕たちはシュリーデ様の“眷属”。」
ゼゼル「ギャンブル三兄弟って呼ばれてるの」
テオ「デヘ」
セリナ「イグニス=ヴァルガの名において命じます……ここを去りなさい!」
レット「名乗り? はは……それ、雑魚悪魔には効くけど、眷属級には効かないんじゃない?」
ゼゼル「同格の悪魔でも、私たち“眷属”は格が違うんだよ?……ちょっとテオ! なんで去ろうとしてるの!」
テオ「ヘヘ?」
テオは素直に立ち去りかけていた。ゼゼルに引き戻される。
レット「で、どうする? ギャンブルしないなら……一生この地下牢で寒さに震えてればいいんじゃない?」
セリナ(……シュリーデ様への報告は、この三人で止められてる……。ここは受けるしかありませんね)
セリナ「……いいでしょう。なんのギャンブルですか?」
レット「いいねぇ。話が早い」
ゼゼル「レット! あれやろ! “すごろく”!」
セリナ「なっ!?」
アリア「ほっ……それなら危険がなさそうですね」
ルミナ「ふふん、昔からすごろくは負けたことないのよ! いいじゃない!」
レット「じゃ、決まり」
テオ「ヘケ」
セリナ「だめです! 彼らの言うすごろくは──」
ゼゼル「“サイレントサイレン”♡」
セリナ「っ……!?」
声が出ない。喉に力が入らない。
口を開けても空気が漏れるだけ──声帯が封じられている。
ゼゼル「ネタバレはだめよ~♡」
眷属三兄弟が扉を開くと、地下牢から奥へと続く階段が不気味な光を放っていた。
レット「こっち。遊技場はすぐそこだから」
アリア「……嫌な予感しかしませんね」
ルミナ「でもやるしかないわ。出る方法、ほかにないもの」
セリナ(……必ず勝つ。みんなを魔界の奥へ連れて行くためにも)
三人は悪魔の眷属に導かれるまま、不気味な遊技場の闇へと歩き出した。
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