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光と風の境界  作者: 770
31/39

凍える北と“沈没戦”

(^^)/

 吹き荒れる氷風は、皮膚を裂くような鋭さだった。

 雪ではない。氷が粉末になって横殴りに叩きつけてくる。


ルミナ「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”……さむずぎるるるるるるる!!」


 ルミナは耳まで真っ赤にし、コートを抱きしめながら叫んだ。

 声は氷点下の空気に吸い込まれ、すぐに霧散する。


アリア「さすがに……意識が遠のいてきましたね……。寒いとかそういう次元じゃありません……」


 唇は紫色に染まり、呼吸が白ではなく蒸気のように濃く漏れる。


セリナ(まずい……この冷気、魔界の中でも最北域“氷哭地帯”……。人間は長くいられません……)


 セリナは二人の様子を見て判断した。


セリナ「少々……魔力を使いすぎますが……ここからなら……っ、“転移術・近”!!」


 三人を包み込むように、周囲の空間が歪み、白い大地の景色が波紋のように揺れながら転じていく。


ーーー


 ひずみが収まり、三人は別の場所へ押し出される。


ルミナ「……あったか……くはないわね。でもさっきよりはマシよ……」


 まだ寒い。だが“皮膚が裂ける痛み”はなくなっている。


セリナ「はぁ……はぁ……。久しぶりに転移術なんて使いましたから……駄目ですね……完全に魔力切れです……」


アリア「でも助かりました。ありがとうございます、セリナさん」


 アリアは胸に手を当てながら深く息をつく。危険域は脱した。


セリナ「ここは……北の都市です。“三大悪魔”の一角、毒々のシュリーデ様の支配地域ですね」


ルミナ「毒々……物騒な名前ね。ほんとに大丈夫?」


セリナ「基本的に“ギャンブル”にしか興味がないお方なので、下手に逆らわなければ問題ありません」


アリア「確かに……街並み、カジノが多いですね。光ってます」


 目の前には極寒とは思えぬ、巨大なネオンと音楽が響く街が広がっていた。

 氷の外壁と毒々しい装飾。魔界らしい不気味さと退廃の香り。


ーーー


 街の出口へ向かう三人。


門番「出国料……」


セリナ「え?」


門番「出国料だ。あと、入国証も出せ」


セリナ(入国証……?そんな制度、魔界には……)


ルミナ「入国証なんてもってないわよ。だって転移魔法で入った──」


セリナ「!? だめっ!!」


門番「転移魔法!? 衛兵ッ! 捕らえよ!!」


複数の衛兵「応ッ!!」


 瞬間、十数体の悪魔兵が一斉に迫り、三人は逃げる暇もなく拘束された。


ーーー


 北の街最大のカジノ《ポイズン・パレス》地下牢。


 薄暗い牢獄の中、氷柱のような柱がそこかしこに生えている。


ルミナ「ごめん……まさかこんな大事になるとは……」


セリナ「私も魔力切れで動けなかったですし……むしろ下手に戦わなかったのは正解ですよ」


アリア「ところで……どうやったら出られるのでしょうか……」


セリナ「シュリーデ様に話をつけるのが一番早いです。彼女は過激派ではありませんし、話は聞いてくれるはずですが……」


ルミナ「でも、ギャンブルにしか興味ないんでしょ? こんな地下牢に来てくれるの?」


セリナ「一応、衛兵には伝えたのですが……。この街、ルールが厳しいので……」


???「じゃあ、ギャンブルで出国料作ればいいじゃん」


???「そうだね、そうだね。ちょうど3:3だしね」


???「エヘヘ……エヘ……ヘヘヘ」


アリア「!? いつの間に!? 全く気配が……!!」


 三人の悪魔──子どものような体格だが、眼光は異様に鋭い。


ルミナ「アンタたち何者よ? この街のボスの関係者?」


レット「僕たちはシュリーデ様の“眷属”。」


ゼゼル「ギャンブル三兄弟って呼ばれてるの」


テオ「デヘ」


セリナ「イグニス=ヴァルガの名において命じます……ここを去りなさい!」


レット「名乗り? はは……それ、雑魚悪魔には効くけど、眷属級には効かないんじゃない?」


ゼゼル「同格の悪魔でも、私たち“眷属”は格が違うんだよ?……ちょっとテオ! なんで去ろうとしてるの!」


テオ「ヘヘ?」


 テオは素直に立ち去りかけていた。ゼゼルに引き戻される。


レット「で、どうする? ギャンブルしないなら……一生この地下牢で寒さに震えてればいいんじゃない?」


セリナ(……シュリーデ様への報告は、この三人で止められてる……。ここは受けるしかありませんね)


セリナ「……いいでしょう。なんのギャンブルですか?」


レット「いいねぇ。話が早い」


ゼゼル「レット! あれやろ! “すごろく”!」


セリナ「なっ!?」


アリア「ほっ……それなら危険がなさそうですね」


ルミナ「ふふん、昔からすごろくは負けたことないのよ! いいじゃない!」


レット「じゃ、決まり」


テオ「ヘケ」


セリナ「だめです! 彼らの言うすごろくは──」


ゼゼル「“サイレントサイレン”♡」


セリナ「っ……!?」


 声が出ない。喉に力が入らない。

 口を開けても空気が漏れるだけ──声帯が封じられている。


ゼゼル「ネタバレはだめよ~♡」


 眷属三兄弟が扉を開くと、地下牢から奥へと続く階段が不気味な光を放っていた。


レット「こっち。遊技場はすぐそこだから」


アリア「……嫌な予感しかしませんね」


ルミナ「でもやるしかないわ。出る方法、ほかにないもの」


セリナ(……必ず勝つ。みんなを魔界の奥へ連れて行くためにも)


 三人は悪魔の眷属に導かれるまま、不気味な遊技場の闇へと歩き出した。

(^^)/

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