魔界で出会う“善き悪魔たち”
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視界がぐにゃりと歪み、空間が上下左右に引き裂かれるような感覚が走る。
直後、重力が戻り、砂煙を上げながら地面へ落ちる──いや、落ちる寸前に。
ヴェント「よっと!」
ヴェントは空中で姿勢を立て直し、抱えていたシルフィナの体をしっかり支え、優しく着地した。
ヴェント「大丈夫か? シルフィナ!」
シルフィナ「……お姫様抱っこなんて。ヴェントったら、キザなんだから」
満更でもないように笑いながら、頬を少し赤らめるシルフィナ。
ヴェント「いや、偶然だって! 落ちる寸前だったんだからよ!」
言い訳をするヴェントの前に広がるのは、見渡す限り砂色の地平線。
乾き切った大地、ひび割れた赤土、枯れ果てた樹木──そして薄く漂う黒紫の瘴気。
ヴェント「ここは……どこなんだ?」
シルフィナ「砂漠と枯れ地。魔界の南西部だね。気候も瘴気濃度も……見覚えある」
ヴェント「わかるのか? ここに来たことあるの?」
シルフィナ「こう見えて、お姉さんは魔界に来たことがあるのです」
ヴェント「マジか。……よかった~、シルフィナと一緒で!」
シルフィナ「あらやだ♡」
照れ笑いを返しつつも、シルフィナの耳はわずかに赤く染まっている。
ヴェント「……でも、みんなはどこに落ちたんだ? セリナたちの気配、まだ感じられねぇ」
シルフィナ「ちょっと探査しながら移動しよう。瘴気が濃いから気配が混ざるけど、全く見つからないわけじゃないし」
ヴェント「そういや、呼吸はなんかしにくいな……空気重てぇ感じだ」
シルフィナ「その割に普通に動けてるのがすごいよ。ここで動けるなら、瘴気問題はクリアってこと」
ヴェント「そうか! じゃあ南へ進むか。セリナの故郷が近いんだろ?」
シルフィナ「うん。まずはそこを目指してみよう」
乾いた風が二人の髪を揺らし、黒紫に染まった空が広がっていた。
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別の場所──凍てつく暴風が吹き荒れる白銀の大地。
アリア「……なんというか、想像以上に“魔界”って感じですね」
ルミナ「ねぇ。覚悟はしてたけど、ここまで過酷だとは思ってなかったわ。寒すぎ。凍死する」
全てが白く、岩も地面も建物の瓦礫さえも氷の層に覆われている。
空気は肌を裂くほど冷たく、呼吸するだけで肺が痛むほど。
セリナ「ここまで運が悪いのは久しぶりですよ……どうしてよりによって最北地域なんですか……」
ルミナ「ちょ、ちょっと!? 炎の魔法が一瞬で凍るんだけど!? ありえないでしょこれ!」
アリア「人間界の雪国用装備じゃ……無理ですね。凍ります」
セリナ「とりあえず南です! この最北地帯を抜ければ、比較的安全な街があります! 魔界の気候は急変しやすいですが……南へ行けば!」
ルミナ「ヴェントとシルフィナの気配も探りながら行きましょ。……って、こんな凍りついた世界、どうやって歩くのよ!」
アリア「滑らないように、私が先導します」
冷気で頬が痛む中、三人は慎重に南へ進む。
その背の遠くでは、氷の大地の上を黒い影が滑るように横切った。
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南西部──砂漠地帯。
ヴェント「お、シルフィナ! 村があるぜ!」
遠くの砂丘の向こうに、小さな集落が広がっている。
土壁の家が並び、薄茶色のレンガの建物からは柔らかい煙が上がっていた。
シルフィナ「よかった……少し休憩できそうだね」
村に入り歩き出す二人。
村人A「おやまぁ、人間と妖精のカップルとは珍しいなぁ」
シルフィナ「えへへ、夫婦なんです♡」
ヴェント「ちょ、なんでそうなるんだよ!」
村人B「飯の匂いがするだろ? うちで食っていきな。村長もいるし、挨拶もしてけ」
ヴェント「助かる! 腹へってたんだよな~」
シルフィナ「友好的な村でよかったよ。魔界って、こういう地域差すごいから」
村人A「俺たち悪魔だって、誰も彼も好戦的ってわけじゃないんだよ」
ヴェント「へぇ!そうなのか?」
村人B「人間にも乱暴な奴はいるだろ? それと同じさ」
ヴェント(ライゼル「決闘だー!」)
ヴェント「……まぁ、確かに」
村人A「この村には人間も住んでるんだよ。悪魔にさらわれた人、世界の狭間に落ちた人、色々だ」
シルフィナ「そうだね。魔界に来た人間を保護する地域って、実は意外と多いんだよ」
村人B「そうそう。ここは弱い者同士で助け合う村だ。あんたらも遠慮なく頼っていけ」
ヴェント「なんか……いい悪魔なんだな! ありがとな!」
村人A・B「そうだ!」
温かな笑い声が、乾いた風の中に溶けていく。
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