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光と風の境界  作者: 770
3/39

――スライムドラゴン、再び――

(^^)/

教師「いやぁ、素晴らしいエキシビションでしたね! 午後からは勇者アルディス様による“勇者学”の講義になります!」


ヴェント「ふぅ……すげぇ一日だったな」

ルミナ「じゃ、私は帰るわね」

ヴェント「え?」

ルミナ「“え?”じゃないわよ。私は生徒じゃなくて講師なの。――明日から、あんたの魔術学の講師はこの私よ」

ヴェント「なっ……!?」

ルミナ「しっかり復習しときなさいよ、弟くん♪」

ヴェント(……最悪だ……)


夜。

ヴェントの部屋。机の上には風の魔法陣が描かれたノートが広がっている。


ヴェント(今日はかなりいい感じに魔法を使えたな……)

ヴェント(週末にでもまたトカゲ狩りに行くかな)


翌日、学園。


ルミナ「なーに?魔力の流し方、まだ理解してないの?」

ヴェント「わかってるよ!でも風の流れが……!」

ルミナ「言い訳しない!“魔術学の基本は呼吸と集中”って教科書の一番最初に書いてあるでしょ!」

ヴェント「うるさいなぁ……」

ルミナ「何か言った!?」

ヴェント「言ってませーん!!」

ルミナ「いい? 風は気まぐれだけど、制御できれば誰よりも早く、誰よりも遠くへ届く力になるの。あなたも風みたいに、もう少し頭を冷やしなさい!」

ヴェント「……はいはい」


生徒たち「アーデン先生って鬼教官だな」「弟いびりがすげぇ」「でも教え方は完璧らしいぞ」

ヴェント(……面白がりやがって……)


ーー週末。


ヴェント「待ちに待った週末だ!」

エリシア「気を付けるのよー!」

ルミナ「アンタ、ちゃんと宿題しなさいよねー!」

ヴェント「うっせーな!行ってきまーす!」


森。

薄暗い林の中を走る足音。


ヴェント「このあたりにトカゲがいるはずだけど……」

風で草木を払うと、2メートルはある緑のトカゲと、

ゼリーのように透けた“スライムでできたトカゲ”が姿を現す。


ヴェント「なんだあれ……? 初めて見るな」

剣を構え、笑う。

ヴェント「まぁいい、どっちにしろ狩りだ! てやあああ!」


風の斬撃が走り、トカゲを一刀両断する。

ヴェント「よし! 次は……!」


踵を返してスライムトカゲにも斬撃を放つ。

スパッ、と切れたかに見えた体は、ぬるりと再生を始める。


ヴェント「……は?」

再び切る。再生。

切る。再生。

そして、尾の一撃を受け吹き飛ぶ。


ヴェント「いってぇぇぇ! なんだよこいつ!!」

さらに背後から毒液が飛び、ヴェントの頬をかすめた。


ヴェント「うわああああああ!!!」

逃げる風が森を切り裂き、枝葉を舞い上げた。


自宅。


ヴェント「ただいまぁ~……」

エリシア「おかえ――って、どうしたのそのケガ!? また悪魔!?」

ルミナ「悪魔なんてそうそう出ないでしょ。今は天使教が魔界の門を封じてるんでしょ?……って、ほんとにボロボロじゃない。大丈夫?」

エリシア「《シャインヒーリング》……とりあえずこれでよし。――で?何があったの?」

ヴェント「森の中でトカゲ型のスライムと出くわして……戦ってみたんだけど、あんなの見たの初めてで……」

エリシア「トカゲ……」


彼女の瞳に、一瞬、過去の光が宿る。


エリシア「................................あ」

ヴェント「な、なにか知ってるの?」

エリシア「うーん……ありえるかもね。もう12年くらいたってるし。当時はドラゴンだったんだけど――お母さんも戦ったことがあるのよ」

ヴェント「!?」

エリシア「でもね、あの時はナデシコおばさんとエファレントさんの娘――ヒマワリちゃんが焼き尽くしたはずなんだけど……。時間をかけて復活したのかもしれないわね。ふふ」

ルミナ「笑い事じゃないって! ヴェントが負ける相手なら、普通の人じゃ危険よ!」


その時――。


警報が鳴り響いた。

市民A「モンスターだー! モンスターが出たぞー!」

市民B「竜型スライムだー!!」


エリシア「あら……やっぱり、ヴェントの魔力で成長しちゃったみたいね」

ヴェント「……なんてタイミングだよ」

エリシア「二人とも、ここにいなさい。お母さんが行ってくる」

ルミナ「待って! そのヒマワリさんって人が勝てた相手なんでしょ? 私が討伐してくる!」

ヴェント「俺も行く! 負けっぱなしなんて性に合わねぇ!」

エリシア「でも、DCが倒したときは十八歳だったし、あの子は特別だったのよ?」

ルミナ「バカにしないで! 私だってできるわ!」


浮遊魔法を発動し、ルミナが空へ舞い上がる。

ヴェント「おい! 待てよルミナ!」

走り出すヴェント。

エリシア「もう……誰に似たのよ、ほんとに……!」


市街中心部。

暴れるスライムドラゴン。家屋を砕き、路地を舐めるように這う。


ルミナ「《多重魔弾・七星陣!》!」

光の弾が降り注ぐが、スライムの体は吸収してしまう。


ルミナ「くっ……魔力まで喰うの!?」

ヴェント「《ウィンドスラッシュ》!」

斬撃も効かず、尾の一撃で吹き飛ばされる。


ルミナ「ヴェント!!」

ヴェント「ぐっ……まだ、だ……!」


その瞬間、街全体が光に包まれた。

上空から降り注ぐ、やわらかな光。


エリシア「《ホーリーレイ・サークル》!」


スライムドラゴンの体が溶けるように弱体化し、

動きを止める。


エリシアが片手を掲げ、光の鎖で縛り上げる。


エリシア「ふぅ……捕獲完了。あなたたち、よく頑張ったわ」

ルミナ「母さん……」

ヴェント「くっそ、俺たちじゃ全然歯が立たなかった……」

エリシア「悔しい? ――なら、このスライムドラゴンを倒せるように修行しなさい。それがあなたたちの次の目標よ」


夜。

家の灯が静かに揺れている。


ヴェント「母さん、俺……冒険者になるよ」

エリシア「どうしたの、突然?」

ヴェント「母さんの戦い方を見て、わかったんだ。――学園じゃ俺は強くなれない」

ルミナ「まぁ、授業の内容じゃ限界があるしね」

ヴェント「これから毎週あのスライムと戦って、いつか一人で倒せるようになったら……その時、俺は街を出る」


風がカーテンを揺らす。

エリシアは静かに目を伏せ、やさしく微笑んだ。


エリシア「……そう。なら、まずは生きて帰る練習から始めましょうか」


ルミナ「ふふ、言ったわね、弟くん。置いてかれないように頑張りなさいよ」

ヴェント「お前こそな、妹」


エリシア「ふふ……ほんと、そっくりね」


夜風が三人の笑い声を運んでいった。

それは、確かに新しい旅の始まりの音だった。

(^^)/

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