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光と風の境界  作者: 770
29/39

門の前の決闘と、魔界への第一歩

(^^)/

ーーー朝


ヴェント「ふんっ!……ふんっ!……よし、もう百回!」


 まだ夜気が残る冷たい空気の中、ヴェントは一人で素振りを繰り返していた。

 剣が振るたび、霜のついた草が細かく震え、白い息が空へと散っていく。


アリア「……あ、ヴェント。早いね。もう起きてたの?」


 静かに歩いてきたアリアが、寝起きとは思えない整った姿で立っていた。


ヴェント「あぁ、アリア。おはよう。なんか……落ち着かなくてさ。ほら、明日もう出発だからよ」


アリア「……魔界、だもんね。私はまだ実感ないけど、童話の中の世界みたいな気がしちゃう」


ヴェント「だけど行くしかねぇ。行くからには気合いは入れておかねぇとな!」


アリア「安心して。ヴェントに何があっても、私が守るから」


ヴェント「な、何言ってんだよ! 今は俺の方が強いし!」


アリア「ち、ちがっ……そ、そういう意味じゃないし! ていうか、まだ私の方が強いわよ!」


ヴェント「はぁ!? 言ったな! 証明してやるよ!」


アリア「望むところよ!」


 二人は同時に踏み込み、剣と剣が空気を裂く。

 激しい衝突音が、朝靄の森全体に響き渡った。


ーーー


ルミナ「……朝から元気ね、あの二人」


 セリナと一緒に村の縁に立ち、戦いの音を耳にしながらため息をつく。


セリナ「止めなくていいんですか?」


ルミナ「いいのよ、ああ見えても二人とも限度はわかってるわ。すぐ終わる」


ーーー


ヴェント「っだ~、また負けた~!」


 雪の上に大の字で倒れるヴェント。


アリア「ヴェントは魔力を込めた瞬間、攻撃の軌道が丸見えなんだよ。もっと魔力を制御しなきゃ」


ヴェント「お前以外には通用してるんだよ!」


アリア「ふふん」


ーーー


アルガス「さて……明日には出発だが、一つ確認しておかねばならんな」


 剣聖アルガスが、焚き火横で腕を組む。灰色の髭に光が反射して揺れる。


セレナ「アリア、荷物の中の“アレ”……どうするつもりなんだい?」


アリア「う……」


ヴェント「まだ持ってたのかよ!」


アリア「な、なんとなく処分できなくて……」


アルガス「まぁ部位を付ければ力は手に入る。危険だが、もしもの時の切り札にもなる。セレナ、鑑定してやれ」


セレナ「はいはい。アリア、出しな」


 アリアがカバンからそっと取り出したのは、黒紫の靄を纏う“悪魔の右手”。

 部屋の空気がひやりと変わる。


セレナ「……ふぅ。これ、よく生きてたねぇ。ネメシスで出くわしたんだって?」


アリア「はい。でも本体は弱かったですよ?」


セレナ「じゃあその悪魔も拾っただけなんだろうね。この右手の能力は──“死者使役”。ゾンビ使いの魔手さ」


ルミナ「ヒッ……い、いやよそんなの!」


ヴェント「いいじゃねぇかルミナ、付けちまえよ!」


ルミナ「絶ッッ対いや!!」


シルフィナ「……もし万が一の時なら……私が付けるよ」


ヴェント「え、シルフィナ?」


セレナ「師匠ならまぁ即死はしないだろうしね〜」


シルフィナ「その“生きてればなんとかなる”理論やめてくれない!?」


アルガス「まぁ、とにかく……死ぬな。無理だと思ったら引き返せ。それだけは守れ」


ヴェント「あいよ!」


セレナ「さ、夕飯にしな!」


ーーー夜


 ご飯を囲んで、7人で最後の穏やかな夜を過ごす。

 話題はくだらない話から、未来のことまで。

 笑い声が絶えず、夜空には雪が舞っていた。


ーーー翌朝


ルミナ「本当にお世話になりました! 行ってきまーす!」


ヴェント「ありがとなー! 師匠ー!!」


シルフィナ「また来るよ、セレナ、アルガス。気が向いたらね」


アリア「本当にありがとうございました」


セリナ「恩に着ます。では、失礼します」


セレナ「ケガするんじゃないよー!」


アルガス「元気でな!」


 家の前で手を振り続ける老英雄たち。

 その姿を背に、5人は北の雪道へと歩き出した。


ーーー


セレナ「……何度見送っても慣れないねぇ」


 小さく呟き、涙を指で拭う。


アルガス「大丈夫だ。あいつらは強い。部位なしであれだ。そうそう死なん」


セレナ「……ほんとにね」


ーーー


ヴェント「まっすぐ行けば半日で門に着くって言ってたけど、本当か?」


ルミナ「魔界の門なんて、全然感じないんだけど」


シルフィナ「セリナ、まだ結界は天使教が管理してるの?」


セリナ「管理といっても常駐してるわけじゃないですけど……天使教が封印術をかけ続けてますね。悪魔が外に出ないように」


アリア「なるほど……天使教の力ですか」


ライゼル「また会ったな!! 悪魔憑きィ!!」


 遠くの丘から、あの甲高い声が響く。


ヴェント「この声……またタイザルか!?」


ライゼル「ライゼルだ!! ライゼル=アルテイン!! 勇者アルディスの加護を受けし──」


ルミナ「はいはい勇者ね勇者ね。で? 今回も何? 脳みそ凍ってんの?」


ライゼル「ぐっ……! い、いいか! ヴェント! 今度こそ決闘だ!!」


ヴェント「俺あんな子供と戦いたくねぇよ〜」


ライゼル「子供じゃない!! 19だ!!」


ヴェント「同い年なのか!? じゃあ遠慮なく行くか!」


アリア「ヴェント、やめたほうが……」


ヴェント「すぐ終わらせるよ」


ーーー


ノル「──はじめ」


ライゼル「ギャラクティカソード! エンドレスワルツ!!」


 舞うような動きから繰り出される斬撃。

 光の剣が空を裂き、ヴェントは吹き飛ばされた。


アリア「ヴェント!!」


ヴェント「な、なんだこのパワー!?」


 ライゼルの背に、美しい白銀の翼が広がる。


ヴェント「あれは……天使の部位か!」


シルフィナ「そうね。あれは危険よ」


ライゼル「フォースオブミラー!!」


 ライゼルが二人に分裂する。しかも実体つき。


ライゼル「デュアルシャイニングブレード!!」


 四方向から光刃が襲う。


ヴェント「魔力解放──40%──!」


 短い呻きとともに、ヴェントの身体から黒い風が噴き上がる。


ヴェント『ヒャッ!!』


 一瞬でライゼル二人を吹き飛ばした。


ノル「……そこまで。降参だ」


ライゼル「お、覚えてろーーー!!」


ルミナ「なんで敵キャラみたいな逃げ方なのよ!」


ノル「強くなったな。……“あれ”を多用するなよ。染まるな」


 意味深な目線をヴェントに向け、勇者パーティは去っていった。


ーーー


ヴェント「ここが……門?」


 雪の森の中央、空気が歪んでいる場所。

 何もないのに、そこだけ世界が揺れているように見えた。


セリナ「正確には結界ですね。大悪魔級が外に出られないように」


ルミナ「私たちは通れるの?」


セリナ「はい、人間とエルフは問題ありません。……では、手をつないでください。空間魔法で散らされます」


ヴェント「え、散ら……?」


 質問の途中で、ヴェントだけ勝手に半身が結界に吸い込まれ始める。


ヴェント「ちょ、ちょっと待てぇぇぇぇぇぇ!!」


シルフィナ「もうっ!」


 シルフィナが咄嗟にヴェントの腕を掴み、一緒に結界へ吸い込まれていく。


セリナ「私たちも急ぎましょう!」


ルミナ「わかったわ!」


アリア「い、いきます!」


 5人は二組に分かれ、揺れる結界の向こう側──

 魔界へと消えていった。

(^^)/

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