積み上げた一年、開かれる道
(^^)/
北方の修行小屋から、少し離れた雪原。
吹雪の切れ間から陽光が差し込み、地面に積もった白を青く染めている。
その白銀の世界を、鋭い氷刃が裂いた。
ルミナ「アイシクルブレード!!」
空気が一瞬凍りつき、巨大な氷の剣が魔獣の胴を貫いた。
雪煙が舞い、黒い巨躯がスローモーションのように倒れ伏した。
魔獣「ギャアアアアアアアッ……!」
大地に響く絶叫。
だがルミナはすでに次の魔力を練り始めていた。
少し離れた場所では、赤と青の光が交差していた。
セリナ「獄炎――嵐ッ!!」
炎の渦が天へと燃え上がり、空間そのものが熱で歪む。
まるで世界を焼き払うかのような凶悪な炎。
シルフィナ「水と風の精霊よ――すべてを拒絶せよ《アクア・シェル・ウィンド》!」
シルフィナがそっと手を振ると、彼女を中心に透明な水壁と風の護膜が展開された。
炎が触れた瞬間、波紋のように掻き消えていく。
炎と水風の境界線で空気が爆ぜ、雪が溶けて蒸気が舞った。
少し離れた丘の上。
セレナが、湯気の立つマグカップを片手にゆったり見下ろしていた。
セレナ「いい感じだねぇ……。どうだい、ルミナ?」
ルミナは黒蛇を倒した時よりも、はるかに力強い魔力を放ちながら振り返った。
ルミナ「かなりいい感じよ!この杖、魔力を吸うだけじゃなくて“貯蔵”してくれるのがマジで便利だわ!」
彼女の持つ魔樹ディアブロの杖は、根元が脈打つように明滅している。
一年前は触っただけで倒れた代物。それをいまは軽々と振り回す。
セレナ「一年でここまで扱えるとはねぇ。魔力の出し方が当時の7割増しだよ。
……本当に化けたね、あんた」
ルミナ「ふふん!魔力操作には自信があるの!多めに出すのなんて朝飯前よ!」
するとセレナは、ちょっといたずらっぽく笑った。
セレナ「一つ教えたげるよ。
あんたの魔力操作術――“当時のヒマワリより上等”だよ」
その瞬間、ルミナは息を呑み、ほんの一瞬だけ涙を浮かべた。
すぐにぷいっとそっぽをむき、袖で目を拭う。
ルミナ「当たり前でしょ!天才なんだから!」
シルフィナ「私も複数精霊の呼び出しと、呪文の短縮に成功したわ、天才だから」
セリナ「私も単純威力の上昇に成功しました、やはり天才なので」
ルミナ「茶化さないでよ!」
同時刻。
森の奥では剣戟の雨が降っていた。
アルガス「もっとだ!殺意を込めろ!!」
アリア「見盗り!ウィンドスラッシュッ!――15連!!」
ヴェント「なんの!ウィンドスラッシュ!――20連ッ!!」
風の刃が乱れ飛び、雪を削り、木々を裂く。
しかし、その全てをアルガスは“見切り”続ける。
弾く。
躱す。
受け流す。
まるで歳月だけが重ねられた幻の達人技。
アルガス「次は避けろよ……居合術――天、一閃!!」
白光が一直線に走った。
ヴェント「あぶねっ……!ジャン!!」
アリア「ありがとう! てやっ!」
アリアはヴェントの肩を踏み台に跳躍。その刃先がアルガスの胸をかすめた。
アルガス「ほう……」
老人はほんの少しだけ後ろへ下がり、胸に走った細い傷へ指を添えた。
アルガス「いいコンビネーションだ。ようやく“連携”が形になったな」
アリアは膝をつき、肩で息をしながら笑った。
アリア「はぁ……はぁ……ありがとうございました……!」
ヴェント「腕も脚もパンパンだぁ……少し休もうぜ!」
アルガス「この一年、大きく成長したな。
……ヴェント。
お前の親もここで修行した時、俺と戦ったものだが――
“お前の方が上だ” 」
ヴェント「……ッ!!ほんとか!?やったぜ!!」
アリアは満面の笑みでヴェントの背に手を置く。
アリア「よかったね、ヴェント!」
ヴェント「ジャンもありがとな!一年間ずっと付き合ってくれて!」
その瞬間。
アリアは少しだけ、顔を赤く染めた。
アリア「あ……あの、そのね……呼び方、なんだけど……」
ヴェント「ん?」
アリア「“アリア”って……呼んでほしいな。いつまでも苗字呼びは……いや、その……」
ヴェント「確かにな!生涯の友にそれは失礼だよな!
な!アリア!!」
アリア「あ……あわわわ……あ、ありがと……!」
耳まで真っ赤にしてうつむくアリア。
その微笑ましい光景にアルガスはひげを撫で、満足げに頷いた。
アルガス「……さて。そろそろこの先の話も、進めねばなるまい」
雪がまた一つ、静かに舞い落ちる。
彼らの修行は、もはや山場を越えた。
だが――“本当の旅”はこれからが始まりだった。
(^^)/




