闇を抱く者、陽炎を継ぐ者
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深夜。
雪の降る北の森は、白と黒の世界に閉ざされていた。
薪を燃やすパチパチという音だけが、小屋の空気を震わせている。
焚き火の赤い光が、アルガスの皺の深い顔を照らし出した。
彼は腕を組み、ゆっくりと二人――ヴェントとルミナ――に視線を落とす。
アルガス「……ヴェント。お前の中には“二種類”の魔力が存在するようだ」
焚き火が揺れ、二人の影が床に大きく伸びた。
ヴェント「風と……光?母さんが得意だった属性だろ?」
アルガス「違う」
老人の声が静かに、しかし確かに空気を変える。
アルガス「光の才能は――0点だ」
ルミナ「ぷっ……!」
ヴェント「おい!?笑ったな!?いま笑ったよな!!?」
ルミナはそっぽを向いて肩を震わせ、アリアは気まずそうに口を手で押さえた。
アルガス「まあ笑われて当然だが、問題はそこじゃない。
ヴェント……そしてルミナ。お前たちには“主属性”とは別に、もう一つ魔力がある」
焚き火の炎がふっと揺らぎ、室内の温度が一瞬下がったように感じられた。
アルガス「――“闇”だ」
ヴェント「闇!?禁術じゃねえか!俺、今まで闇なんて使えたことねぇぞ!?」
ルミナは黙り込み、拳を握りしめる。
ヴェント「ルミナ?どうした?」
ルミナ「……黒蛇と戦ったとき、確信したわ。
私にも“闇属性の適性”があるって……」
アリア「で、でも!ヴェントもルミナも悪人なんかじゃ……!」
アルガス「わかっておる。属性が性格を決めるわけではない。
ただし、闇は扱える者が少ないゆえ、偏見を受けやすいだけだ」
セレナ「私だって使えるよ。まあ、エリシア……あんたらのお母さんは扱えなかったけどねぇ、そういえばヒマワリもすごい適正だったねぇ」
ルミナ「もう、どこに行っても聞く名前……ヒマワリ=ダークチャームの話はいいわよ」
セレナ「あら、エリシアから聞いたんじゃないのかい?」
ヴェント「違うよ、ルミナはDCと比べられることが多いんだ。もううんざりしてるらしい」
アルガス「とにかく。闇は“悪”ではない。ただ……強すぎる魔力と結びつくと暴走する」
ヴェントの胸が、ズキッと痛んだ。
アルガス「ヴェント。お前の“暴走”の原因は……おそらく闇だ」
ヴェントは言葉を失い、ルミナは息をのむ。
シルフィナ「闇属性は忌避されるけど、本質はただの力だよ。
問題は扱い手の心と……器量」
静寂が落ちた。風が窓を揺らし、雪が壁を叩いた。
ーーー
翌朝。
雪が舞う外で、アルガスは二本の剣を雪の上に突き立てていた。
片方は炎のように赤く、陽炎のように揺らめき――
もう片方は闇色の風が刃を撫でる。まるで夜の嵐そのもの。
アルガス「お前たちに授ける。かつて俺が持っていた剣だ。
だが……天使教に奪われ、のちに魔界で“リーディ”が同化した」
セリナが息をのむ。
セリナ「破滅のリーディ様……!」
アルガス「そうだ。そして、リーディの“爪”を精製し造り直した。
ゆえに属性は炎と闇。どちらも獰猛で、扱い手を選ぶ」
ヴェント「……すげぇ。そんなとんでもねー武器……」
アルガス「赫陽剣――アリア、お前に。
闇風剣――ヴェント、お前に授ける」
アリアの手に赤い炎の剣。
ヴェントの手に黒風の剣。
アルガス「魔力だけで握るな。呑まれるぞ。
これは“力”だ。心を失えばその瞬間、お前を殺す」
アリア「……はい」
ヴェント「わかったよ、じいさん」
アルガス「……そして、まだもう一本ある。
リーディ自身が持っている――“自然”を司る王剣。
だがあれは、今は誰にも扱えん。いずれ知ることになるだろう」
ーーー
セレナがルミナを呼ぶ。
外の雪明かりの下に、黒紫の杖が置かれていた。
セレナ「ルミナ、あんたにも新しい杖をやろう」
ルミナ「どんな杖ですか?」
セレナ「これさ!」
黒い樹皮のような杖。生き物のように脈動している。
シルフィナ「魔樹ディアブロの枝……!?よく精製したね?」
セリナ「魔界産……強力すぎますよ!」
ルミナ「へぇ、どれぐらい強――」
セレナ「触ると魔力全部吸われるから気をつけ――」
遅かった。
ルミナ「ひゃッ……!? ちょ、まっ……!!!?」
杖がルミナの魔力をズルズルと吸う。
ルミナは青ざめて崩れ落ちる。
セレナ「魔力の“食欲”がすごいだろ?
あんた、魔力を制御しすぎて縮んでるのさ。もっとぶっぱなして無駄遣いしな!」
シルフィナ「それ、普通の魔術師なら2秒で死んでる吸われ方だけどね」
ルミナ「ちょっ……これ絶対地獄の修行よね……?」
セレナ「その通り!今日からその杖を“持ち続ける”ところから始めるよ!」
ルミナ「……この杖……!」
セリナ「が、がんばってください……?」
ーーー
外はさらに吹雪が強まり、空気は研ぎ澄まされていく。
アルガスはヴェントとアリアを森の奥へ連れ、セレナは魔法陣を展開。
アルガス「さあ、生き残れよ!」
セレナ「ルミナ!死ぬんじゃないよ~!!」
シルフィナ「ヴェント、今日からは“本当の修行”だよ」
セリナ「皆さんっ、怪我だけは……!」
吹雪が一斉に巻き上がり、五人の姿を呑み込んだ。
こうして――
北方での本格修行が幕を開けた。
その果てに何を得るのか。
答えはまだ、雪の向こうにある。
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