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光と風の境界  作者: 770
24/39

剣聖の地獄、賢者の災禍

(^^)/

 冷え込む早朝。

 山小屋の裏――雪原を踏み固めたような広場に、湿った空気が張り詰めていた。


アルガス「……準備はいいか?」


 たった一言で、空気が変わる。

 剣聖アルガスの目は、刃そのものだった。


ヴェント「あれ? ジャンと俺だけなの?」

アリア「えっと……そうみたいだね?」

アルガス「当然だ。前衛はお前たち二人であろう」

ヴェント「あ、そっか。剣聖の修行だし……よし、頑張るぞジャン!」

アリア「うん!(ヴェントと二人きり……来たッ!!)」


 アルガスは隻腕の袖をひらりと揺らし、じっと二人の魔力を見る。


アルガス「遠距離の魔力斬撃も、型はもう出来ておる。初日から基礎は不要だな……よし」


 す、と笑った。


アルガス「今日は“模擬戦”といこうじゃないか」


ヴェント・アリア「「!?」」


 老人とは思えぬ圧。

 風の流れが止まり、雪が宙で凍りついたかのような錯覚を覚える。


アルガス「二人の戦闘力、身体の使い方、癖……すべて見たい。まずは――一本、入れてみろ」


ヴェント「なぁジャン……今日、俺たち死ぬんじゃねぇか?」

アリア「うん……これは……たぶん死ぬね」

アルガス「心配するな、まだ“3割”じゃ」


ヴェント「ジャンさん……3割だってよ。あれで」

アリア「ヴェント……大好きだよ。私の遺骨は海に撒いてね……」

アルガス「喋っとらんで構えんか……いくぞ!!」


ヴェント「うおおおおおお!! やってやる!」

アリア「援護は任せて!」


 刹那、三つの金属が交わり――

 朝の静寂が、爆発音のような衝突音で吹き飛んだ。


キィィィン!! ガガッ!! ズンッ!!


 雪が弾け飛び、三人の姿が一瞬で消える。


 山小屋の中にも、その衝撃音が響いていた。


セリナ「始まりましたね……」

セレナ「やれやれ、あの人ったら。ヴェントとアリアを殺す気かねぇ……」

シルフィナ「剣聖の“本気”って、やっぱり……」

ルミナ「……ねぇ、私の修行って何するの?」

セレナ「うん? 簡単だよ。

 ――瘴気を孕んだ魔物を召喚するから、それを倒すんだよ」

セリナ「えっ、それ……一人でですか?」

セレナ「そうさ。セリナとシルフィナは瘴気耐性あるだろ? 問題ないよ」

ルミナ「じゃあ、さっさと召喚して?」

セレナ「呑み込みが早いねぇ! じゃあ……いくよ!」


 セレナの背後に、真っ黒な魔法陣が広がる。

 床板が軋み、空気が震える。


ルミナ「……待って、ちょっと待って。やばい術式展開してない?」

セレナ「ルミナ! 死ぬんじゃないよ!!」

ルミナ「だから段階踏んで!? ねぇ!!?」


 魔法陣が天井まで伸び上がり、闇が渦巻き――


セレナ「“大厄災召喚――黒蛇”!!」


 轟音と共に、部屋いっぱいの巨大な影が蠢いた。

 天井を突き破りそうな黒い蛇。

 瘴気が波のように吹き出し、床を這う。


黒蛇「……グルゥ……ギャアアアアアア!!!」


ルミナ「絶ッ対この規模、初日じゃないでしょ!?!?」


 しかし――ルミナの瞳は笑っていた。


ルミナ「まぁいいわ……面白くなってきたじゃない……!」


 一方その頃。


キィィィィィン!!!

ズガァァァァン!!!

ガガッ!! ガガッ!! ギィィィン!!!


 外での衝突音は、まるで戦場そのもの。


セリナ「……これ、私たちの修行より危険なんじゃ……?」

シルフィナ「うん。気の毒になってくるレベル……」

セレナ「大丈夫大丈夫、あの二人はまだ死なないよ。多分ね」

セリナ「“多分”って言いました!?」


 雪の中――三つの影が交錯していた。


アルガス「どうした!! その程度か!!」

ヴェント「化け物じじぃ!! 強すぎだろ!!」

アリア「この速度……目で追えない……でも!」

アルガス「ほう、その手の内を――見抜くか」


 アリアの瞳が青く光る。


アリア「“見盗り”……!」


 剣聖の一挙手一投足を、瞬時に模倣していく。

 だが――


アルガス「甘いわい!!」


 ドンッ!!!


 たった一撃の衝撃だけで、ヴェントとアリアは雪に埋まりかけた。


ヴェント「ぐはっ!!」

アリア「っ……すご……!! これが剣聖……!!」


 それでも――

 倒れることなく剣を構える二人を見て、アルガスは少しだけ口角を上げた。


アルガス「よし……悪くない。では、次は“4割”じゃ」


ヴェント「まじで3割だったのかよ!!」

アリア「やばい、楽しい……!!」

ヴェント「ジャン!?いけるか!!?」

アリア「うん!(ヴェントと二人で死線を越えるなんて……最高!!)」


 剣聖の“地獄の修行”はまだ始まったばかりだった。

(^^)/

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