英雄の家に招かれて
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雪深い山道を登り、森を抜けると突然視界が開けた。
ぽつんと建つ一軒家――煙突から薄い白煙が昇り、窓から温かな光が漏れている。
ヴェント「おー……なんか、いい匂いしねぇ?」
ルミナ「わかる……スパイスとハーブの香り。家庭の味って感じね」
アリア「料理人の家かな……?」
シルフィナ「違うよ。」
セリナ「ここで間違いありません。」
セリナがノックするより早く、ドアがギィっと開いた。
セレナ「おかえり~……って、あら? この魔力……懐かしいわねぇ?」
セリナ「お久しぶりです、セレナさん。セリナ=ヴァルガです」
セレナ「セリナー! まぁ大きくなって……背も伸びて、お姉さんになったねぇ!」
セリナ「はい、こちらは――」
セレナ「いいのいいの! どうせみんなお腹空いてるんだろ? スープ食べるかい?」
ヴェント「食べたい!!」「めっちゃいいにおい!!」
アリア「グゥ……は、はい……いただきます……」
ルミナ「お世話になります……」
シルフィナ「セレナ……生きてたんだ……」
セレナ「当たり前じゃないか、シルフィナ。私はもう目は見えないけどね、見えてた頃よりよっぽど“よく見える”よ」
ヴェント「シルフィナ、知り合いなのか?」
シルフィナ「昔ちょっとね……ほら、まず食べよ?」
大鍋からよそわれた温かいスープが食卓を満たす。
香りだけで身体がほぐれてしまいそうな、深い味わい。
セリナ「おいしい……!」
ヴェント「んまっ! これなんのスープだ?」
セレナ「魔力草の根っこだよ。少し煮るだけで、心も体もあったまるんだ」
アリア「隠し味に森の蜂蜜……すごい、まろやか」
ルミナ「いい家ね……居心地が良すぎるわ」
シルフィナ「落ち着く……昔を思い出す……」
7人が食卓を囲む光景は、まるで家族の団欒のようだった。
シルフィナ「それにしてもセレナ……老けたね。もうおばあちゃんじゃない」
セレナ「ふふ、当たり前だろ。私ももう“80”超えてるんだよ」
シルフィナ「まだ80か……」
セレナ「“まだ”じゃない、“もう”80だよ」
奥から、重い足音が聞こえた。
現れたのは白髪の老人。背中には年齢を感じさせるが、眼光は鋭く冴え渡る。
アルガス「ところでセリナ。その子どもたちは?」
ヴェント「子ども!? じいさん、俺もう18だぜ!」
アリア「ヴェントはたしかに子どもっぽいところがあるからね」
ルミナ「…………」(なぜか目を逸らす)
ヴェント「ルミナまで黙るんじゃねぇ!」
セレナ「叫ばない! ご飯がまずくなるよ!」
そこでルミナが気づいたように顔を上げる。
ルミナ「……もしかしてだけど……おじいちゃんたちって……
剣聖アルガスと、賢者セレナ……?」
セリナ「そうですよ?」
ルミナ「“50年前の英雄”じゃない! どうしてみんなそんな普通に……!?」
セレナ「そんな大げさな。ねぇ、エリシアは元気かい?」
ルミナ「……え、母さん……知ってるの?」
セレナ「知ってるとも。私はエリシアの“最後の弟子”だからねぇ」
ヴェント「賢者の弟子!? そりゃ母さんが強ぇわけだ!」
セレナ「最後に会ったのが……15年ほど前かしらねぇ」
アルガス「うむ。そのとき赤ん坊を抱いていたが……あれはお前たちか」
ヴェントとルミナは顔を見合わせた。
ヴェント「……マジかよ」
ルミナ「覚えてないわよそんなの……」
アリア「ご縁って、不思議ですね」
夕食のあと、薪ストーブの前で落ち着いた頃。
アルガス「さて、本題に入るか」
ヴェント「本題?」
セレナ「今の魔界は瘴気が濃い。普通の冒険者なら“数時間”で命に関わるレベルだよ」
シルフィナ「……やっぱり、そうなんだ」
ルミナ「私たち、瘴気対策の魔法も装備もまだ準備してない……」
セリナ「本気で魔界に入るなら、今のままでは厳しいです」
アルガス「だから提案だ。――ここで、“修行”していけ」
ヴェント「修行……?」
アルガス「うむ。わしとセレナで鍛えてやる。魔界に耐えられる身体、技、魔力……全部叩き込む」
セレナ「魔界の瘴気はね、ただ強ければいいってもんじゃない。耐性を作るには“生きた魔力の循環”が必要なのさ」
シルフィナ「それ……やれるの、ここで?」
セレナ「できるとも。だって、ここは20年前――”魔王討伐した一行”が修行した場所だよ」
ヴェントの胸が、わくわくと高鳴った。
ヴェント「やる! やりたい!!」
ルミナ「……まぁ、悪い話じゃないわね」
アリア「私も強くなりたい。同行します」
シルフィナ「ふふ、また賑やかになりそう」
セリナ「よろしくお願いします、アルガスさん、セレナさん」
アルガス「よし。明日の朝から地獄を見せてやる」
ヴェント「地獄!?」
セレナ「大丈夫、死ぬほど辛いけど死にはしないよ~」
シルフィナ「その言い方、信用できない……」
こうして――
彼らの“魔界突入”のための、本格的な修行が幕を開ける。
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