雪鬼の森と白髪の剣聖
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通行証の発行から三日後。
ノルデンベルクの空は厚い雲に覆われ、朝から粉雪が舞っていた。
ルミナ「通行証、もらってきたわよー!」
シルフィナ「ありがと、これで北に行けるね」
セリナ「順調ですね! このままいけばあと一か月もあれば……魔界に到達できそうです!」
ヴェント「だったら、すぐ出発だな! のんびりしてる暇はねぇ!」
アリア「はいはい、元気ね……寒いのに」
荷をまとめ、彼らは北への街道を抜けた。
空気は重く、吐息はすぐに白く凍る。
遠くで獣の遠吠えが木霊する雪原を、五人は肩を寄せて進んでいた。
雪深い森の中。
沈黙を破るように、ルミナが口を開いた。
ルミナ「そういえば、噂聞いた? この北の森には“鬼”が出るらしいのよ。白髪で、着物姿の……」
ヴェント「鬼? 鬼人種かな? 滅多に見ないレアモンスターじゃないか!」
アリア「鬼人種は剣闘術が得意だと聞きます。できれば一度、手合わせしてみたいですね」
シルフィナ「クエストの討伐対象でもないなら、遭遇しない方がいいと思うよ。レアってことは、それだけ危険ってことだから」
ルミナ「そうね。北の森の魔獣は、どれもランク以上の強さを持ってるって聞くし……」
セリナ(白髪、着物……まさか、そんなはず……)
そのとき、
――ザッ。
木の影から、雪を払うように人影が現れた。
ティナ「あら……?」
セリナ「っ……ティナ……」
ティナ「久しぶりね、姉さん」
薄紫の瞳に冷たい光。
肩まで伸びた銀髪が風に揺れ、口元には笑みとも憎しみともつかぬ表情が浮かんでいた。
ヴェント「姉さん……ってことは、妹か? 見た感じは、あっちが姉ちゃんみたいだけど」
セリナ「余計なこと言わないでください! それより……ティナ、どうしてこんなところに?」
ティナ「何って、暇つぶしよ。――姉さんこそ、その人間は何?」
ティナの瞳が鋭く光る。
空気が一変し、氷のような殺気が森を覆った。
ルミナ「このプレッシャー……ただ者じゃないわね」
シルフィナ「やばいね……明らかに格上だ」
アリア「痺れるほどの殺気。これは……本気だ」
セリナ「やめて、ティナ! これ以上はルール違反よ!」
ティナ「ルール? それは魔界の掟でしょ! ――ここは人間界よ!」
怒号とともに、灼熱の炎が森を包み込む。
雪が一瞬で蒸発し、木々が黒く焦げた。
セリナ「……っ!」
咄嗟に防御魔法を展開するも、炎の勢いは強く、結界が軋む音を立てる。
ティナ「その程度の防御で私を防げると思って?」
炎が結界を飲み込もうとした瞬間――
???「困った娘だ」
老いた声が風を裂く。
次の瞬間、光が走り、ティナの体が一閃されて霧散した。
ティナ「なっ――」
声が消える。
残ったのは、雪上に立つ一人の老人。
白髪に着物。
右腕だけを持つ隻腕の男――その眼光は、百戦錬磨の戦場そのもの。
アルガス「やはり影か……」
静かに刀を収め、溜息をつく。
セリナ「ア、アルガスさん……! 今のは、ティナがいきなり……!」
アルガス「お前たちの使い魔から聞いている。――南天の末娘、なかなかの暴君だな」
セリナ「はい……止められませんでした」
アルガス「ふむ……まあよい。それより、そいつらが例の.....?」
セリナ「はい。なかなかの器量ですよ」
アルガス「ふむ。顔ぶれを見る限りそこそこ、といったところか。――今夜はうちで休め」
セリナ「ありがとうございます。……ってことで、行きますよ皆さん!」
ヴェント「どういうわけだよ……?」
シルフィナ「まぁ、行こう。ヴェント、このおじいさん……さっきの悪魔の比じゃないよ」
ルミナ「そうね。もう日も暮れるし……敵に回すのは絶対やめとこ」
アリア「ふふ、さすがの私もこの老父とは戦いたくありませんね」
アルガス「はっはっ、そう褒めてくれるな。だが、お前たちが本気でかかってきたなら……殺さず制圧するように立ち回るのは、少々骨が折れる」
ヴェント「……勝ち負けの次元じゃねぇな。わかった、ついてくよ」
雪を踏みしめ、五人は老人のあとに続いた。
森の奥には、灯のともる古い屋敷が見えている。
その煙突から立ち上る煙が、夜空へまっすぐ伸びていた。
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