表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光と風の境界  作者: 770
22/39

雪鬼の森と白髪の剣聖

(^^)/

 通行証の発行から三日後。

 ノルデンベルクの空は厚い雲に覆われ、朝から粉雪が舞っていた。


ルミナ「通行証、もらってきたわよー!」

シルフィナ「ありがと、これで北に行けるね」

セリナ「順調ですね! このままいけばあと一か月もあれば……魔界に到達できそうです!」

ヴェント「だったら、すぐ出発だな! のんびりしてる暇はねぇ!」

アリア「はいはい、元気ね……寒いのに」


 荷をまとめ、彼らは北への街道を抜けた。

 空気は重く、吐息はすぐに白く凍る。

 遠くで獣の遠吠えが木霊する雪原を、五人は肩を寄せて進んでいた。


 雪深い森の中。

 沈黙を破るように、ルミナが口を開いた。


ルミナ「そういえば、噂聞いた? この北の森には“鬼”が出るらしいのよ。白髪で、着物姿の……」

ヴェント「鬼? 鬼人種かな? 滅多に見ないレアモンスターじゃないか!」

アリア「鬼人種は剣闘術が得意だと聞きます。できれば一度、手合わせしてみたいですね」

シルフィナ「クエストの討伐対象でもないなら、遭遇しない方がいいと思うよ。レアってことは、それだけ危険ってことだから」

ルミナ「そうね。北の森の魔獣は、どれもランク以上の強さを持ってるって聞くし……」

セリナ(白髪、着物……まさか、そんなはず……)


 そのとき、

 ――ザッ。


 木の影から、雪を払うように人影が現れた。


ティナ「あら……?」

セリナ「っ……ティナ……」

ティナ「久しぶりね、姉さん」


 薄紫の瞳に冷たい光。

 肩まで伸びた銀髪が風に揺れ、口元には笑みとも憎しみともつかぬ表情が浮かんでいた。


ヴェント「姉さん……ってことは、妹か? 見た感じは、あっちが姉ちゃんみたいだけど」

セリナ「余計なこと言わないでください! それより……ティナ、どうしてこんなところに?」

ティナ「何って、暇つぶしよ。――姉さんこそ、その人間は何?」


 ティナの瞳が鋭く光る。

 空気が一変し、氷のような殺気が森を覆った。


ルミナ「このプレッシャー……ただ者じゃないわね」

シルフィナ「やばいね……明らかに格上だ」

アリア「痺れるほどの殺気。これは……本気だ」


セリナ「やめて、ティナ! これ以上はルール違反よ!」

ティナ「ルール? それは魔界の掟でしょ! ――ここは人間界よ!」


 怒号とともに、灼熱の炎が森を包み込む。

 雪が一瞬で蒸発し、木々が黒く焦げた。


セリナ「……っ!」

 咄嗟に防御魔法を展開するも、炎の勢いは強く、結界が軋む音を立てる。


ティナ「その程度の防御で私を防げると思って?」


 炎が結界を飲み込もうとした瞬間――


???「困った娘だ」


 老いた声が風を裂く。

 次の瞬間、光が走り、ティナの体が一閃されて霧散した。


ティナ「なっ――」

 声が消える。

 残ったのは、雪上に立つ一人の老人。


 白髪に着物。

 右腕だけを持つ隻腕の男――その眼光は、百戦錬磨の戦場そのもの。


アルガス「やはり影か……」

 静かに刀を収め、溜息をつく。


セリナ「ア、アルガスさん……! 今のは、ティナがいきなり……!」

アルガス「お前たちの使い魔から聞いている。――南天の末娘、なかなかの暴君だな」

セリナ「はい……止められませんでした」

アルガス「ふむ……まあよい。それより、そいつらが例の.....?」

セリナ「はい。なかなかの器量ですよ」

アルガス「ふむ。顔ぶれを見る限りそこそこ、といったところか。――今夜はうちで休め」

セリナ「ありがとうございます。……ってことで、行きますよ皆さん!」


ヴェント「どういうわけだよ……?」

シルフィナ「まぁ、行こう。ヴェント、このおじいさん……さっきの悪魔の比じゃないよ」

ルミナ「そうね。もう日も暮れるし……敵に回すのは絶対やめとこ」

アリア「ふふ、さすがの私もこの老父とは戦いたくありませんね」

アルガス「はっはっ、そう褒めてくれるな。だが、お前たちが本気でかかってきたなら……殺さず制圧するように立ち回るのは、少々骨が折れる」

ヴェント「……勝ち負けの次元じゃねぇな。わかった、ついてくよ」


 雪を踏みしめ、五人は老人のあとに続いた。

 森の奥には、灯のともる古い屋敷が見えている。

 その煙突から立ち上る煙が、夜空へまっすぐ伸びていた。

(^^)/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ