表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光と風の境界  作者: 770
21/39

雪の森の修行

(^^)/

 北の城塞都市ノルデンベルク。

 門を抜けると、石畳の通りには商人や冒険者たちが行き交い、街全体が活気に包まれていた。

 遠くの鍛冶場からは金槌の音、香ばしい肉の匂いが風に乗って届く。


 彼らはまず、冒険者ギルドへと向かった。


受付「通行証の発行ですね? それでは資格証の提出をお願いします」

ヴェント「はい、5人分!」

受付「確認しますね……ブラックランクが1名、ダイヤモンドが4名。承りました。発行まで3日ほどかかりますので、その間はお待ちください」

ルミナ「結構かかるのね……どうする?」

シルフィナ「私は街の散策でもしようかな。あとは近くの森に行ってみたい」

アリア「私は武器屋巡りかな。北部の鍛冶は質がいいって評判だし、新しい剣も見てみたい」

ヴェント「俺はクエストだな! ルミナも一緒に行くか?」

ルミナ「私はいいわ。ここには大きな図書館があるみたいだし、魔術書でも読んで過ごす」

ヴェント「じゃあセリナは?」

セリナ「……私もクエスト、ご一緒していいですか? 魔石や素材が欲しいですし」

ヴェント「よし! 決まりだな!」


 軽く拳を合わせて笑い合う二人。

 その様子を見て、アリアとシルフィナの視線が一瞬だけ交錯した。


アリア(しまった……私もヴェントとクエスト行きたかったのに! こうなったら買い物は速攻で終わらせて……)

シルフィナ(セリナ……恐ろしい子。自分の目的を言わずに“誘わせる隙”を作るなんて。……私も森の散策ってことにして後から.........)

アリア・シルフィナ(――ヴェントのクエストに合流してやる)

セリナ(なんだか熱気を感じますね……?)


 数時間後。

 ヴェントとセリナは森の外れに来ていた。

 雪に覆われた木々の間から、冷たい霧が漂っている。

 ここはノルデンベルク近郊の訓練用狩場。魔物の気配が濃く漂っていた。


ーーーーー


ヴェント「なあ、せっかくだからもっと強いクエストにしようぜ? 災害級とか!」

セリナ「駄目です! 今回はヴェントさんの“魔力感知”の訓練なんですから!」

ヴェント「うぐっ……」

セリナ「このクエストにしましょう。“ブロンズA級:ダークモンキーの群れを退治せよ”」

ヴェント「ブロンズだぜ? せめてゴールド以上に……」

セリナ「ダークモンキーは弱いですが、“隠密”のスキルを使います。感知訓練にはもってこいなんですよ」

ヴェント「……わかったよ! やってやる!」


ーーーーー


 森の中は、雪解けの匂いと獣の気配が入り混じっていた。

 白い息が舞い、風が木々を揺らす。


セリナ「結構数がいますね……大丈夫ですか?」

ヴェント「確かに、こいつらすげぇ気配の消し方だな。ほとんどわかんねぇ」

セリナ「目に頼りすぎです! もっと“気配”を感じてください。ダークモンキーは殺気が薄いので、気の揺らぎを感じ取って!」

ヴェント「…………」


 ヴェントは目を閉じ、周囲の気配に意識を向けた。

 風の流れ。木々のきしみ。

 その中で――かすかな“違和感”が走る。


ヴェント「……見えた! そこっ!」


 素早く剣を抜き放ち、茂みを薙ぐ。黒い影が跳ねた。


セリナ「それはただの反射神経です! 見えてるだけですよ!」

セリナ(……でも今の、完全に死角だったのに……)


 ヴェントの集中がさらに深まる。

 瞬間、四方から一斉に殺気が襲いかかった。


セリナ「ヴェントさん、危なっ――!」


 その瞬間、光が差し込む。


アリア「聖なる剣よ、魔のものを焼き尽くせ――《シャイニング・レイン》!」

シルフィナ「木の精霊よ、敵を縛り動きを止めよ――《グリーンロック》!」


 無数の光の矢が降り注ぎ、同時に蔦が敵を絡め取った。

 ヴェントが一体を倒した瞬間、残りの群れが一瞬で消滅する。


セリナ「アリアさん!? シルフィナさん!?」

アリア「ヴェント、やっぱり全然探知できてないね。私といたほうが安全だよ」

シルフィナ「大丈夫。ヴェントの死角は私が守るから」

ヴェント「シルフィナ、ジャン……どうしてここに?」

アリア「た、たまたまよ! 新しい剣の試し切りしてたら見かけただけ!」

シルフィナ「私はヴェントをつけてきただけだよ」

セリナ「もう! 守ってたら修行にならないでしょ!」

アリア「あ、ごめん、つい……」

シルフィナ「ヴェントが怪我したらかわいそうで……」

セリナ「大丈夫です! ヴェントさんならこんなところでケガしません!」

 セリナがビシッと指を差す。

 アリアとシルフィナはしょんぼり肩を落とした。


アリア「……じゃ、邪魔しちゃったね」

シルフィナ「帰ろっか」


 とぼとぼと雪を踏みしめ、二人は森の奥へ戻っていった。


セリナ「ヴェントさん! 再開しますよ!」

ヴェント「いや、もういい。覚えた」


 ヴェントが剣を軽く振り、雪の上に投げ放つ。

 放物線を描いた刃が、一回り大きな影の胸に突き刺さった。

 ――ダークモンキーの“群れの王”。

 黒い霧が溶けるように消え、周囲の気配も静まり返る。


セリナ「ボスモンスター……気づいてたんですか?」

ヴェント「ああ。見えるようになったんだ。不思議な感覚だ……見てないところまで見えるって」

セリナ「ほんとにすごい……まさか1日でコツを掴むなんて」

ヴェント「だろ? 世界一の冒険者だからな!」


 ニカッと笑うヴェント。

 その無邪気な笑みに、セリナの胸が一瞬だけ高鳴った。


セリナ「あ……その、えっと……! この調子で、もっと鍛えますからね!」

 頬を赤く染めながら、セリナは視線を逸らした。


アリア「……なんか、嫌な予感がするね」

シルフィナ「同感。セリナは大丈夫だと思うけど……何か、空気が変わってきてる」


 雪の降る森を見上げながら、二人の声が風に溶けていく。

 その頭上で、黒い鳥が一羽――音もなく飛び去っていった。

(^^)/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ