勇者アルディス、来訪
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ヴェント「ただいま!」
エリシア「!……おかえり!」
ルミナ「ほらね、結局今日も森に行ってたでしょ」
ヴェント「森走ってたら勇者が……ちが、悪魔がいて……やばいと思ったら勇者がアルディスで……!」
エリシア「落ち着いて、息が上がってるわよ」
ヴェント「さっき森を走ってたんだけど、そしたら悪魔に襲われて!」
エリシア「悪魔!?」
その瞬間、エリシアの目の色が淡く光を帯びる。
一瞬だけ、かつての戦場の気配が部屋をよぎった。
ヴェント「いや、でも悪魔は勇者アルディスが倒してくれて……」
エリシア「アルディス? ……懐かしい名前ね」
ルミナ「そういえば、明日来るんでしょ? 学園に。特別講師として」
ヴェント「!? そうなの!?」
ヴェント「いつもは憂鬱な学園も、明日だけは行きたくて仕方ないぜ!」
翌朝。
ノルヴェルの空は高く晴れ、風が軽く家の窓を揺らした。
ヴェント「いってきまーす!」
エリシア「気をつけてねー!」
エリシア「さ、ルミナも行きなさい。初仕事でしょ?」
ルミナ「私はゆっくりでいいのにー……いってきまーす」
学園――中央講堂。
ざわめく生徒たちの前に立つ教師が声を張る。
教師「本日の講師は、歴代最強の勇者様と名高いアルディス様ご一行、そして――先日、わが校を歴代2位の速さで卒業されたルミナ=アーデンです!」
教師「では早速、エキシビションマッチへと参りましょう!」
アルディス「ルミナ=アーデン君と言ったね。まずはエキシビションのパーティを組みたまえ」
アルディス(……こいつ、どこかで見た顔だな。昨日今日と、変な巡り合わせだ)
ルミナ「はい。それでは――生徒会長、ジャズ=レッド。魔術科6年、ゼビ=ロンドン。そして……」
場内が一瞬静まり返る。
ルミナ「魔剣科3年、ヴェント=アーデン」
生徒たちがどよめく。
「兄弟で!?」「いくらなんでも無理っしょ!」「ルミナたん結婚して!」「ジャズ様〜!こっち見て〜!」
教師「ルミナ君、それはさすがに……」
ルミナ「まぁ、見ててください。遊んでるわけじゃありませんので」
学園闘技場。
観覧席には生徒・教師・冒険者志望者たちがぎっしりと詰めかけ、
中央の白い円形フィールドに四人の生徒と勇者一行が立つ。
教師「それではこれより――エキシビション、開始ッ!」
ゼビ「まずは伝説ってやつを体験してもらおうか!――《一雫の水よ、姿を変え、敵を滅ぼせ・大氷塊!!》」
空間が凍りつき、巨大な氷の塊が勇者一行の頭上に生まれる。
アルディス「ほう……これは見事だ。ヴァロフ、任せてもいいか?」
ヴァロフ「お任せあれ。《大地に潜む熱よ、炎よ、顕現せよ――大火災!》」
轟音とともに炎が噴き上がり、氷塊を蒸発させた。
ゼビ「……あらら。僕の得意技だったんだけどな」
ジャズ「なら私が代わろう。《槍の雨よ、敵対するものを破りたまえ! レインアロー!》」
空から無数の光の矢が降り注ぐ。
だが――
アルディス「んー、いい攻撃だ。さすがは生徒会長。だが……」
矢は彼の身体に届く前に霧散して消えた。
ジャズ「やはり効かないか……」
アルディス「そうだね。光属性は僕たちには効かない。なぜなら――」
光が舞い上がり、アルディスたちの背から天使の部位が顕現する。
その光に生徒たちが息をのんだ。
アルディス「僕たちは“天使の部位持ち”。つまり光の存在だからさ」
ジャズ「ふっ、なら降参だ。僕は光魔法以外はてんでダメでね」
ルミナ「なに勝手に降参してんのよ!」
ゼビ「僕も降参かな。大氷塊止められちゃ、もうできることないし」
セリナ「賢明な判断ですよ。アルディス様と対峙できただけでも誇りに思いなさい」
ルミナ「……はぁ」
ヴェント(やばい、ルミナのスイッチ入った)
ルミナ「んなわけあるかぁーーー!!!」
観客「ル、ルミナたん!?」「また暴走モードだ!」
ルミナ「何が伝説の勇者よ! もう私とヴェントだけでやってやるわよ!」
生徒たち「生徒会長も魔術科のエースも降りたのに!?」「お荷物ヴェントを連れて!?」「無理だろ!」「ルミナたん結婚して!」
ルミナ「ヴェント! 合わせなさい! 《エリア――不動の門!》」
重たい空気が辺りを包み、灰色の光が立ちこめる。
観客の息が止まった。
生徒たち「こ、これが歴代2位の魔術……」「オリジナルの領域魔法!?」「よくこの規模を展開できるな……」
アルディス「こ、これは……動けない!? いや、体が重い……!」
ゴラン「アルディスだけでも守らねば――届かない!」
ルミナ「ヴェント!!」
ヴェント「ったく、これ重いから好きじゃねぇんだよな! 《魔力天衣――風の牙!!》」
風がヴェントの体を包み、短剣が鋭く唸る。
ヴェント「二式――ウィンドスラッシュ!!!」
風の軌跡が瞬く間にアルディスへ迫る。
その一撃は確かに届いた――かに見えたが、
アルディス「《天使の権限――封域!》」
瞬間、白光が弾け、ヴェントは衝撃波に弾き飛ばされた。
同時に領域が崩壊する。
アルディス「いやぁ、すまない。つい本気を出してしまったよ」ニコリ。
だがその笑みの裏に、冷たい汗が滲んでいた。
アルディス(なんだあの魔術は……避けるので精一杯だったぞ……!)
アルディス「これ以上はケガしちゃうからね。――みんな、頑張った彼らに賞賛を!」
観客「うおおおおおお!!」「すげぇぇぇぇぇ!!」「ヴェント!見直したぞ!」「ルミナたん結婚してくれぇぇ!」
ルミナ「……まったく、人の気も知らないで」
ヴェント「へへっ……まぁ、悪くねぇや」
風が吹き抜け、
姉弟の笑い声が響く中――
遠く、観客席の片隅でエリシアが静かに微笑んでいた。
その瞳の奥には、かつて共に戦った仲間たちの姿が、一瞬だけ重なって見えた。
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