青き瞳の盗技師
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中央都市へ向かう街道は、草原と森の境を縫うように続いていた。
午後の日差しが柔らかく差し込み、木々の葉が風に揺れる。
遠くの山脈には雪が残り、道の両脇には小さな花々が咲いている。
旅の穏やかな時間――彼らの笑い声が道に響いた。
セリナ「アリアさんって、出身はどちらなんですか?」
アリア「私はガルディナですよ。あの武闘都市です」
セリナ「武闘都市出身なんですか? あそこで貴族ってことは……ご両親も戦士か魔術師の家系?」
アリア「ええ。父が元冒険者で、素材集めの才能があったんです。そこから商売を始めて――」
ルミナ「“素材王ジャンバード”ね」
アリア「はい。そこまで戦闘力はなかったんですけど……あの、なんというか」
シルフィナ「“盗み”系の技術が高すぎて、凶悪な魔獣の内臓まで盗めたって噂、ホント?」
アリア「……事実です。あまり誇れることではないですけど」
ルミナ「大体“盗み系”スキルって犯罪寄りだからねぇ。珍しいわよ、まっとうな家系なの」
アリア「だからこそ、私はちゃんと戦闘を極めようと思ったんです」
ルミナ「体技はいつも満点だったもんね。成績表、ずっと見てたわ」
ヴェント「この俺でも一度も勝てなかったもんな」
セリナ「ヴェントさんでも? それはすごい……どうしてそこまで極められたんですか?」
アリア「私のスキルのせいなんです」
アリアが一瞬、遠くを見るように目を細める。
陽光を反射して、その瞳が淡く青く光った。
アリア「見ての通り、私にはほとんど魔力が流れていません。魔力自体はあるんですけど、防御にしか使えないんです。
でも、代わりに“盗む”才能は受け継がれました。それが――」
彼女の瞳が一瞬、青く強く輝く。
アリア「『見盗り(みとり)』。すべての技術や体術は、一度見ただけでコピー可能。
さらに、私自身の能力値次第で、昇華させることもできるんです」
ルミナ「へぇ……どおりでなんでも一回でできてたわけね」
セリナ「知らなかったんですか?」
ルミナ「だって能力証明リストに書いてなかったし」
ヴェント「すげぇ! だから俺、勝てなかったんだな!」
アリア「ふふ、ごめんね」
ヴェント「いや、むしろ燃える! 俺は――生涯をかけてお前に勝ってみせる!」
アリア「生涯を、かけて……」
アリアの頬がわずかに赤く染まる。
横でシルフィナが深くため息をついた。
シルフィナ「……違うから」
そのとき、頭上の雲が影を落とした。
甲高い鳴き声が響き、空を裂いて三つの影が舞い降りる。
飛竜「ギャアアアアア!」
ヴェント「お、久々の肉だ!」
ルミナ「いやよ、こいつら。ドラゴンっぽいけど竜族じゃないから、ただのトカゲ。しかもまずい」
アリア「襲ってくる魔物は排除します」
セリナ「私とシルフィナさんで右側を担当します」
ヴェント「ジャン、あれやろうぜ」
アリア「いいですよ」
ヴェント「ルミナ、頼む!」
ルミナ「わかったわよ――《バイバトル》!」
光がヴェントとアリアを包み、身体能力が一気に上昇する。
アリア「やっぱり先生の補助魔法は一級品ですね」
ヴェント「じゃあ、お先!」
風を裂き、ヴェントが飛竜へと突っ込む。
風が渦を巻き、地面の砂が巻き上がる。
ヴェント「《ウィンドブレード・ダブル》!」
両腕から二本の風の刃が伸びる。斬撃が閃光のように走り、飛竜の鱗を切り裂いた。
アリア「すごい……武器を媒介にせず、あそこまで刃を形成するなんて。おっと、私も行かなくては!」
アリアの身体が一瞬にして消えたように見えた。
彼女はヴェントの軌道をなぞるように駆け抜け、飛竜の背を蹴って宙返りしながら拳を放つ。
アリア「《破風脚・双華》!」
衝撃波が二つの飛竜を同時に弾き飛ばす。
残る一体が粘液を吐き出し、ヴェントの足に絡みついた。
ヴェント「しまったぁぁぁ!」
飛びかかる飛竜。
ヴェント「――なんてな」
ヴェント「《ウィンドブレード・クアント》!」
両脚からも刃が噴き出し、粘液を一瞬で弾き飛ばす。
ヴェント「ストームシュートォォォッ!」
巨大な風の斬撃が一直線に走り、飛竜を真っ二つに両断した。
竜の咆哮が風にかき消え、砂埃が舞い上がる。
ヴェント「どうだ! 見たか!」
アリア「すごーい! 強くなりましたね、ヴェント!」
シルフィナ「そうなの。ヴェントはいつも成長してる」
セリナ「すごい威力でしたね! 最後の一撃!」
ヴェントが振り返ると、アリアの背後には細切れになった飛竜。
シルフィナとセリナの背後では、すでに焼け焦げた二体の飛竜が転がっていた。
ヴェント「た、タッチの差で負けたか……ま、まぁいいだろ」
シルフィナ「私たちは“なんてな”のあたりから見てたよ」
アリア「私は“おらぁ!”のとこから」
ヴェント「序盤じゃねぇか! もういいよ!」
ルミナ「しょうがないじゃない。アンタ無駄が多いんだもの」
ヴェント「せめて慰めろよ!」
シルフィナ「よしよし」
アリア「あ、ずるい!」
セリナ「……ともかく、町へ急ぎましょう。あと二日で着きます」
風が穏やかに吹き抜ける。
陽が傾き、遠くに中央都市の尖塔がかすかに見え始めた。
旅の先に待つ新たな試練を、彼らはまだ知らなかった。
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