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光と風の境界  作者: 770
19/39

青き瞳の盗技師

(^^)/

 中央都市へ向かう街道は、草原と森の境を縫うように続いていた。

 午後の日差しが柔らかく差し込み、木々の葉が風に揺れる。

 遠くの山脈には雪が残り、道の両脇には小さな花々が咲いている。

 旅の穏やかな時間――彼らの笑い声が道に響いた。


セリナ「アリアさんって、出身はどちらなんですか?」

アリア「私はガルディナですよ。あの武闘都市です」

セリナ「武闘都市出身なんですか? あそこで貴族ってことは……ご両親も戦士か魔術師の家系?」

アリア「ええ。父が元冒険者で、素材集めの才能があったんです。そこから商売を始めて――」

ルミナ「“素材王ジャンバード”ね」

アリア「はい。そこまで戦闘力はなかったんですけど……あの、なんというか」

シルフィナ「“盗み”系の技術が高すぎて、凶悪な魔獣の内臓まで盗めたって噂、ホント?」

アリア「……事実です。あまり誇れることではないですけど」

ルミナ「大体“盗み系”スキルって犯罪寄りだからねぇ。珍しいわよ、まっとうな家系なの」

アリア「だからこそ、私はちゃんと戦闘を極めようと思ったんです」

ルミナ「体技はいつも満点だったもんね。成績表、ずっと見てたわ」

ヴェント「この俺でも一度も勝てなかったもんな」

セリナ「ヴェントさんでも? それはすごい……どうしてそこまで極められたんですか?」

アリア「私のスキルのせいなんです」


 アリアが一瞬、遠くを見るように目を細める。

 陽光を反射して、その瞳が淡く青く光った。


アリア「見ての通り、私にはほとんど魔力が流れていません。魔力自体はあるんですけど、防御にしか使えないんです。

 でも、代わりに“盗む”才能は受け継がれました。それが――」


 彼女の瞳が一瞬、青く強く輝く。


アリア「『見盗り(みとり)』。すべての技術や体術は、一度見ただけでコピー可能。

 さらに、私自身の能力値次第で、昇華させることもできるんです」

ルミナ「へぇ……どおりでなんでも一回でできてたわけね」

セリナ「知らなかったんですか?」

ルミナ「だって能力証明リストに書いてなかったし」

ヴェント「すげぇ! だから俺、勝てなかったんだな!」

アリア「ふふ、ごめんね」

ヴェント「いや、むしろ燃える! 俺は――生涯をかけてお前に勝ってみせる!」

アリア「生涯を、かけて……」


 アリアの頬がわずかに赤く染まる。

 横でシルフィナが深くため息をついた。


シルフィナ「……違うから」


 そのとき、頭上の雲が影を落とした。

 甲高い鳴き声が響き、空を裂いて三つの影が舞い降りる。


飛竜「ギャアアアアア!」

ヴェント「お、久々の肉だ!」

ルミナ「いやよ、こいつら。ドラゴンっぽいけど竜族じゃないから、ただのトカゲ。しかもまずい」

アリア「襲ってくる魔物は排除します」

セリナ「私とシルフィナさんで右側を担当します」

ヴェント「ジャン、あれやろうぜ」

アリア「いいですよ」

ヴェント「ルミナ、頼む!」

ルミナ「わかったわよ――《バイバトル》!」


 光がヴェントとアリアを包み、身体能力が一気に上昇する。


アリア「やっぱり先生の補助魔法は一級品ですね」

ヴェント「じゃあ、お先!」


 風を裂き、ヴェントが飛竜へと突っ込む。

 風が渦を巻き、地面の砂が巻き上がる。


ヴェント「《ウィンドブレード・ダブル》!」


 両腕から二本の風の刃が伸びる。斬撃が閃光のように走り、飛竜の鱗を切り裂いた。


アリア「すごい……武器を媒介にせず、あそこまで刃を形成するなんて。おっと、私も行かなくては!」


 アリアの身体が一瞬にして消えたように見えた。

 彼女はヴェントの軌道をなぞるように駆け抜け、飛竜の背を蹴って宙返りしながら拳を放つ。


アリア「《破風脚・双華》!」


 衝撃波が二つの飛竜を同時に弾き飛ばす。

 残る一体が粘液を吐き出し、ヴェントの足に絡みついた。


ヴェント「しまったぁぁぁ!」

 飛びかかる飛竜。

ヴェント「――なんてな」

ヴェント「《ウィンドブレード・クアント》!」


 両脚からも刃が噴き出し、粘液を一瞬で弾き飛ばす。


ヴェント「ストームシュートォォォッ!」


 巨大な風の斬撃が一直線に走り、飛竜を真っ二つに両断した。

 竜の咆哮が風にかき消え、砂埃が舞い上がる。


ヴェント「どうだ! 見たか!」

アリア「すごーい! 強くなりましたね、ヴェント!」

シルフィナ「そうなの。ヴェントはいつも成長してる」

セリナ「すごい威力でしたね! 最後の一撃!」


 ヴェントが振り返ると、アリアの背後には細切れになった飛竜。

 シルフィナとセリナの背後では、すでに焼け焦げた二体の飛竜が転がっていた。


ヴェント「た、タッチの差で負けたか……ま、まぁいいだろ」

シルフィナ「私たちは“なんてな”のあたりから見てたよ」

アリア「私は“おらぁ!”のとこから」

ヴェント「序盤じゃねぇか! もういいよ!」

ルミナ「しょうがないじゃない。アンタ無駄が多いんだもの」

ヴェント「せめて慰めろよ!」

シルフィナ「よしよし」

アリア「あ、ずるい!」

セリナ「……ともかく、町へ急ぎましょう。あと二日で着きます」


 風が穏やかに吹き抜ける。

 陽が傾き、遠くに中央都市の尖塔がかすかに見え始めた。

 旅の先に待つ新たな試練を、彼らはまだ知らなかった。

(^^)/

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