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光と風の境界  作者: 770
17/39

東の墓地ダンジョンへ

(^^)/

 街道を外れた小道は、昼なお暗く霧がたちこめていた。

 草の匂いに混じって、どこか湿った土の香りがする。

 ネメシスシティを出て一日――彼らの目的地はすぐそこだった。


ヴェント「墓か~……俺、こういうの苦手なんだよな~。オバケとか……」

ルミナ「相変わらずビビリね~! いいわよ、私の後ろついてきても」

ヴェント「バカにすんな! べ、別に怖くねぇし!」

ルミナ「へぇ~、じゃあ一番前歩いて?」

ヴェント「……順番って大事だと思うんだよな、ほら、前衛・中衛・後衛のバランスっていうか……」

セリナ「つまり“怖い”のね」

ヴェント「こ、怖くねぇって言ってるだろ!」

シルフィナ「ふふっ、そんなところもカワイイ……私が守ってあげるから安心して」

ルミナ「最初会ったときは『お兄ちゃんたち強いの?』とか言ってたのに、今じゃ息子扱いね」

シルフィナ「だって……大体の人は私を子どもだと思うでしょ? 子ども扱いしなかったのは、今まで二人だけ」

セリナ「確かに、シルフィナさんを見たとき“守ってあげなきゃ”って思ったわ。でも、いざ戦ったら……逆に助けられたものね」

シルフィナ「ふふ、それ、よく言われる」

ルミナ「見た目で判断すると痛い目見る、ってやつね」

ヴェント「お前らほんと仲いいよな~。なんか安心するわ」

セリナ「仲がいいというより……あなたが無防備すぎるのよ」

ヴェント「そ、そんなことないぞ! 俺だって男だし、頼られる側っていうか……」

ルミナ「はいはい、はいはい。墓ダンジョン着いたら真っ先に叫ぶのはどうせヴェントでしょ」

ヴェント「叫ばねぇって! オバケが出るとは限らねぇだろ!」

セリナ「“墓”って名前に書いてある時点で出ると思うけど?」

シルフィナ「うん。だいたい出るね」

ヴェント「お、お前ら脅かすなよ! 夜だったら絶対ヤバいじゃん!」

ルミナ「夜じゃなくても昼間に出るタイプの霊もいるわよ?」

ヴェント「うわぁぁぁ! やめろぉぉぉ!」

セリナ「ふふっ……なんか和むわね。魔界行きの前に、こういうのも悪くないかも」

シルフィナ「うん、こういう時間、けっこう好き」

ルミナ「でも油断してると、本当に足元掴まれるかもね~?」

ヴェント「ぎゃあぁぁぁ! 言うなってぇぇぇぇ!」


 セリナが笑いながら前に出る。

 その手に小さな魔導灯を生み出すと、薄暗い道が青く照らされた。


セリナ「はいはい、行くわよ。お化けより怖いのは――遅刻して日が暮れることだからね」

ルミナ「了解、じゃあ先頭はもちろん……ヴェントで」

ヴェント「おいっ!? なんで俺が先頭なんだよ!」

シルフィナ「勇者ってそういう役目だよ」

セリナ「勇者じゃなくても、怖がりは克服しなきゃね」

ヴェント「くっ……お前ら絶対楽しんでるだろ!」

ルミナ「バレた?」

シルフィナ「バレた」

セリナ「完全にバレてるわね」

ヴェント「くそぉぉぉぉぉ!」


 そのとき、草むらから「ガサッ」と何かが動いた。

 ヴェント「うわあああああ!!!」

 ルミナ「落ち着いて! ただのリス!」

 セリナ「ほんとに反応が早いわね……」

 シルフィナ「戦闘反応だけは一流」

 ヴェント「からかうなぁぁぁ!」


 笑い声が森の奥へと溶けていく。

 その明るさが消えかけた頃、風が凪ぎ、空気が一変した。


 青灰色の霧が立ちこめ、地面が湿り、古びた石の匂いが漂う。

 木々の切れ間から、黒ずんだ墓標がいくつも顔を出していた。

 風が笛のように鳴り、空気が重く沈む。


セリナ「……ここね。瘴気、かなり濃いわ」

ルミナ「まさか本当に“悪魔出現”なんてこと、あるのかしら」

シルフィナ「感じる……底のほうで、何かが眠ってる」

ヴェント「うぅ……やっぱり帰らね?」

三人「ダメ」

ヴェント「即答!?!?」


 笑い声が静寂の中に吸い込まれていく。

 やがて――風の中に混じる“誰かの笑い声”が聞こえた。


 それは、まるで墓の底から響くような、不気味な嗤いだった。

(^^)/

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