東の墓地ダンジョンへ
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街道を外れた小道は、昼なお暗く霧がたちこめていた。
草の匂いに混じって、どこか湿った土の香りがする。
ネメシスシティを出て一日――彼らの目的地はすぐそこだった。
ヴェント「墓か~……俺、こういうの苦手なんだよな~。オバケとか……」
ルミナ「相変わらずビビリね~! いいわよ、私の後ろついてきても」
ヴェント「バカにすんな! べ、別に怖くねぇし!」
ルミナ「へぇ~、じゃあ一番前歩いて?」
ヴェント「……順番って大事だと思うんだよな、ほら、前衛・中衛・後衛のバランスっていうか……」
セリナ「つまり“怖い”のね」
ヴェント「こ、怖くねぇって言ってるだろ!」
シルフィナ「ふふっ、そんなところもカワイイ……私が守ってあげるから安心して」
ルミナ「最初会ったときは『お兄ちゃんたち強いの?』とか言ってたのに、今じゃ息子扱いね」
シルフィナ「だって……大体の人は私を子どもだと思うでしょ? 子ども扱いしなかったのは、今まで二人だけ」
セリナ「確かに、シルフィナさんを見たとき“守ってあげなきゃ”って思ったわ。でも、いざ戦ったら……逆に助けられたものね」
シルフィナ「ふふ、それ、よく言われる」
ルミナ「見た目で判断すると痛い目見る、ってやつね」
ヴェント「お前らほんと仲いいよな~。なんか安心するわ」
セリナ「仲がいいというより……あなたが無防備すぎるのよ」
ヴェント「そ、そんなことないぞ! 俺だって男だし、頼られる側っていうか……」
ルミナ「はいはい、はいはい。墓ダンジョン着いたら真っ先に叫ぶのはどうせヴェントでしょ」
ヴェント「叫ばねぇって! オバケが出るとは限らねぇだろ!」
セリナ「“墓”って名前に書いてある時点で出ると思うけど?」
シルフィナ「うん。だいたい出るね」
ヴェント「お、お前ら脅かすなよ! 夜だったら絶対ヤバいじゃん!」
ルミナ「夜じゃなくても昼間に出るタイプの霊もいるわよ?」
ヴェント「うわぁぁぁ! やめろぉぉぉ!」
セリナ「ふふっ……なんか和むわね。魔界行きの前に、こういうのも悪くないかも」
シルフィナ「うん、こういう時間、けっこう好き」
ルミナ「でも油断してると、本当に足元掴まれるかもね~?」
ヴェント「ぎゃあぁぁぁ! 言うなってぇぇぇぇ!」
セリナが笑いながら前に出る。
その手に小さな魔導灯を生み出すと、薄暗い道が青く照らされた。
セリナ「はいはい、行くわよ。お化けより怖いのは――遅刻して日が暮れることだからね」
ルミナ「了解、じゃあ先頭はもちろん……ヴェントで」
ヴェント「おいっ!? なんで俺が先頭なんだよ!」
シルフィナ「勇者ってそういう役目だよ」
セリナ「勇者じゃなくても、怖がりは克服しなきゃね」
ヴェント「くっ……お前ら絶対楽しんでるだろ!」
ルミナ「バレた?」
シルフィナ「バレた」
セリナ「完全にバレてるわね」
ヴェント「くそぉぉぉぉぉ!」
そのとき、草むらから「ガサッ」と何かが動いた。
ヴェント「うわあああああ!!!」
ルミナ「落ち着いて! ただのリス!」
セリナ「ほんとに反応が早いわね……」
シルフィナ「戦闘反応だけは一流」
ヴェント「からかうなぁぁぁ!」
笑い声が森の奥へと溶けていく。
その明るさが消えかけた頃、風が凪ぎ、空気が一変した。
青灰色の霧が立ちこめ、地面が湿り、古びた石の匂いが漂う。
木々の切れ間から、黒ずんだ墓標がいくつも顔を出していた。
風が笛のように鳴り、空気が重く沈む。
セリナ「……ここね。瘴気、かなり濃いわ」
ルミナ「まさか本当に“悪魔出現”なんてこと、あるのかしら」
シルフィナ「感じる……底のほうで、何かが眠ってる」
ヴェント「うぅ……やっぱり帰らね?」
三人「ダメ」
ヴェント「即答!?!?」
笑い声が静寂の中に吸い込まれていく。
やがて――風の中に混じる“誰かの笑い声”が聞こえた。
それは、まるで墓の底から響くような、不気味な嗤いだった。
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