ネメシスシティの勇者たち
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赤茶けた石畳が陽光を照り返し、風の街ネメシスシティが姿を現した。
塔の上を魔導機が飛び交い、賑やかな声と蒸気の音が混ざる。
王都よりも活気があり、冒険者と商人がごった返す巨大都市――その空気に、ヴェントは胸を膨らませた。
ヴェント「やっと着いたーっ!」
セリナ「……なんでそんなに元気なのよ」
ルミナ「体力バカ……てか、なんでこんなにレアモンスターばっか出たのよ……」
シルフィナ「北部はもっと混沌としてるかもね……」
ヴェント「だらしないぞお前ら! さ、ギルド行こうぜ!」
セリナ「……体力バカ、確定ね」
???「おい! お前!」
ヴェント「ん?」
街の入口に立つ金髪の少年が、まっすぐ指を突きつけていた。
年は十七、十八ほど。白銀のマントが風をはらみ、胸には聖印の剣が光る。
???「お前だよお前! 隠してもバレバレだ! お前、悪魔だろっ!」
セリナ「やばっ……勇者ですか?」
シルフィナ「うん……でも、なんか様子が変……」
ヴェント「俺に言ってるのか?」
???「そうだよ! 僅かだが瘴気が漏れてるぞ!」
ぐいっと近づいてくるが、彼の背丈はヴェントの胸あたりしかない。
???「俺はライゼル=アルテイン! 勇者アルディスの加護を受けし、正当なる勇者だっ!」
ルミナ「アルディス関係者って、みんなこんな感じなの?」
シルフィナ「めんどくさい……」
ヴェント「とにかく! 俺は人間だから! 変な言いがかりはやめてくれ!」
ライゼル「……え? 人間なのか? この魔力で?」
ルミナ「そうなの。ちょーっと魔力多めな人間なのよ~」
ライゼル「……わ、わかった……い、行っていいぞ」
ルミナを見た瞬間、ライゼルの顔が真っ赤になる。
ヴェント「なんだこいつ……まぁいい、行こうぜ」
セリナ「勇者って、いろんな意味で忙しそうね……」
その背後では、ライゼルの仲間らしき三人が呆れ顔で見守っていた。
ギルドの扉を押すと、熱気が一気に押し寄せた。
武具の音、歓声、酒の香り。冒険者たちが肩をぶつけ合い、戦果を語り合っている。
ヴェント「すみませーん! クエスト受注したいんですけど!」
受付「見ない顔だね? 何級だい?」
ヴェント「プラチ……」
シルフィナ「ダイヤモンドも同行です。特殊クエスト、ありますか?」
受付「おぉ、ダイヤモンドに昇格希望ってことね? まぁ、ここまで来たならわかってると思うけど、今は特殊クエストだらけでねぇ」
ルミナ「ん? “アーマードラゴン討伐”?」
セリナ「“鋼鉄ゴーレムから素材回収”?」
ヴェント「ああ、途中で倒してきたやつらか! ほら」
ヴェントが鞄から取り出したのは、銀に輝く竜鱗と金属の腕。
受付の目がまん丸になる。
受付「……!? こ、これは! アーマードラゴンの鱗!? すばらしい! マスターに報告してきます!」
裏手に駆け込む受付を見送り、四人は肩を落とす。
ルミナ「ラッキーだったねぇ」
セリナ「残る課題はブラックランクだけね」
シルフィナ「ブラックランクの条件は……災害級魔物討伐、ダンジョン踏破、王都資格試験、または25年以上のダイヤモンド活動……」
ヴェント「うへぇ、どれも難しそう……」
セリナ「北部に行けば災害級もいるけど、行くためにブラックランクが必要っていうね……」
ルミナ「シルフィナはどうなの? ダイヤモンド歴って25年く――ムグッ」
パンがルミナの口に突っ込まれる。
シルフィナ「……ダイヤモンド申請したの、二年前……年数昇格できるの、忘れてた……」
セリナ(さすがエルフ……時間の感覚が違うわね)
受付「お待たせしました!」
ヴェント「どうでした?」
受付「ええ! 三名ともダイヤモンドランクに昇格決定です!」
ヴェント「やったぜぇぇぇ!」
セリナ「よかったわね」
シルフィナ「……災害級クエスト、ある?」
受付「ありますよ。ただ……これは勇者様レベルの方でないと厳しいかも」
受付が一枚の依頼書を差し出す。
黒いインクで、こう書かれていた。
――東の墓地ダンジョンにて、悪魔出現。
受付「詳細は不明ですが、複数の冒険者が消息を絶っています」
ヴェント・ルミナ「やります!」
受付「……お、おぉっふ! わかりました! お気をつけて!」
ヴェント「よっしゃー! 行くぜぇ!」
笑顔で出ていく四人。
その背を、先ほどのライゼルたちが遠くから見ていた。
ライゼル「……悪魔討伐、だと? 俺たちより先に?」
バルド「また突っ走る気か?」
ノル「好敵手ができたと思えばいい」
ガレオス「勇者様、焦るな」
ライゼル「む……うるさい! でも……あいつの背中、なぜか目が離せねぇ……」
夕陽が沈み、街の鐘が鳴る。
喧騒のネメシスの風が、二つの運命をすれ違わせる。
新たな試練が、もうそこまで迫っていた。
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