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光と風の境界  作者: 770
15/39

森を抜けて――災いの名

(^^)/

 陽光が木漏れ日のように揺れ、草の香りを運ぶ。

 王都を発った四人は、北西へ向かう街道を歩いていた。

 鳥のさえずりが穏やかな旅路を彩っている。


セリナ「ところで三人は、どこで鍛えたの? 皆、師匠がいるんでしょ?」

シルフィナ「私の師匠は――ミリアリア様だよ」

セリナ「……ミリアリア? “大精霊魔導士”のミリアリア!? 道理でいろんな属性を使えるわけだ……って、あの方が亡くなったのって五十年前なんだけど……あなた、いったい――ムグッ!」


 シルフィナが無表情のまま、セリナの口にパンを突っ込む。


シルフィナ「それ以上はいけない」

セリナ「もぐもぐ……(なにこの既視感)」


セリナ「……で、二人は?」

ヴェント「師匠ってほどじゃねぇけど……魔法とか戦い方を教えてくれたのは母さんだな」

ルミナ「私も。母さん以外に習ったことなんてないわね。あとは学園の授業くらい」


セリナ「お母さんって……っ! もしかして――エリシアさん?」

ヴェント「知ってるのか? 元冒険者だって言ってたし、どっかで会ったとか?」

ルミナ「不思議な縁もあるもんね~」

セリナ「……まぁ、会ったというか、助けてもらったというか……(そういうことね、エリシアさん)」

ヴェント「へぇ、人助けならぬ“悪魔助け”か。母さんらしいな」

ルミナ「元々、支援魔法が得意だったらしいしね!」

セリナ「そ、そうね! 本当に優しかったわよ!」

セリナ(どこまで話していいのかしら……)


 風が木々を揺らし、遠くで鳥が飛び立った。

 ヴェントが枝を避けながら振り返る。


ヴェント「セリナはどうなんだ?」

セリナ「ん?」

ヴェント「師匠だよ。いるんだろ?」

セリナ「私は……お姉――リリアナ様と、その姉弟子のDC様よ」

ルミナ「リリアナ……魔界でも有名な悪魔よね? で、DC?」

シルフィナ「“DC”。ここ十年くらいで名前が上がってる、“三災害”の一人……」

セリナ「ええ。ダークチャーム様よ」


ヴェント「ダークチャーム? って、エファレントさんと同じ名前じゃないか」

ルミナ「あ――!」

ヴェント「なんだよ、いきなり大声出して」

ルミナ「ヒマワリ=ダークチャームよ! 歴代最速・最年少で上級魔法学園を卒業した! エファレントさんの娘の!」

ヴェント「えぇ!? 母さんと一緒に旅してたって言ってたぞ!? それが……“三災害”?」

シルフィナ「つまり……ヴェントとルミナのお母さんは、“三災害”と旅してた冒険者ってこと?」

セリナ「……実は、すごい人なのよ」

ヴェント「確かに……俺が本気で撃った魔法斬撃でも、びくともしなかったしな」

ルミナ「そうね……二日寝込むほどの魔力消費で作った天災級魔法を、片手で止められたもんね」

セリナ「なんでそれで気づかないのよ……」

シルフィナ「一般人の基準が、もうおかしい……」


 セリナは思わず苦笑した。

 “彼女たちは、本当にあの人の子なのね”――そう胸の奥で呟きながら。


ヴェント「ところで、“三災害”ってのはなんなんだ?」

ルミナ「あんた、授業聞いてなかったの? 習うでしょ」

ヴェント「座学は寝てた……」

シルフィナ「はぁ……。昔、魔王が倒されてから百年くらい経った頃かな。魔界に“三大悪魔”が現れたの。後に“四大悪魔”と呼ばれるようになったわ」

ルミナ「ここ最近の大物悪魔はそのあたりね」

シルフィナ「そう。で、二十年前に魔王が再誕したとき、それを討伐したのが勇者アルディス。そのあとに魔界で現れた三体の魔人――その魔力と影響力の高さから“三災害”って呼ばれるようになったの」


セリナ「ちなみに、“四大悪魔”のうちの一人が――我が父、イグニス=ヴァルガなのです」

ヴェント「なにっ!? セリナの父さんってそんなすげぇ悪魔なのか!?」

ルミナ「そりゃ、その魔力も納得ね」

ヴェント「で、三災害の一人はエファレントさんの娘さんだとして、あとの二人は?」

セリナ「細かくは言えないけど……三災害は“深淵”“破滅”“暴禍”って呼ばれてるの。DC様が深淵、破滅は獣人族のリーディ様。そしてもう一人は――」


 そのとき、地面が震えた。

 土が爆ぜ、木々の間を何か巨大な影が駆け抜ける。


ジャリ…!


アーマードラゴン「ギャイアァァァァァァァァッ!!」


ヴェント「竜種!? こんな南部で!?」

ルミナ「しかも、あれは……アーマードラゴン!? 鋼鱗竜じゃない!」

セリナ「一気にやってしまいましょう!」

シルフィナ「私たちのパーティの初戦だね」

ヴェント「いいね、それ! 行くぞっ!」


 風が荒れ、魔力が閃く。

 木漏れ日の森が、一瞬で戦場に変わった。

 火と氷、風と雷、そして精霊の光が交錯し――。


 新たな冒険の始まりを、森が見届けていた。

(^^)/

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