森を抜けて――災いの名
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陽光が木漏れ日のように揺れ、草の香りを運ぶ。
王都を発った四人は、北西へ向かう街道を歩いていた。
鳥のさえずりが穏やかな旅路を彩っている。
セリナ「ところで三人は、どこで鍛えたの? 皆、師匠がいるんでしょ?」
シルフィナ「私の師匠は――ミリアリア様だよ」
セリナ「……ミリアリア? “大精霊魔導士”のミリアリア!? 道理でいろんな属性を使えるわけだ……って、あの方が亡くなったのって五十年前なんだけど……あなた、いったい――ムグッ!」
シルフィナが無表情のまま、セリナの口にパンを突っ込む。
シルフィナ「それ以上はいけない」
セリナ「もぐもぐ……(なにこの既視感)」
セリナ「……で、二人は?」
ヴェント「師匠ってほどじゃねぇけど……魔法とか戦い方を教えてくれたのは母さんだな」
ルミナ「私も。母さん以外に習ったことなんてないわね。あとは学園の授業くらい」
セリナ「お母さんって……っ! もしかして――エリシアさん?」
ヴェント「知ってるのか? 元冒険者だって言ってたし、どっかで会ったとか?」
ルミナ「不思議な縁もあるもんね~」
セリナ「……まぁ、会ったというか、助けてもらったというか……(そういうことね、エリシアさん)」
ヴェント「へぇ、人助けならぬ“悪魔助け”か。母さんらしいな」
ルミナ「元々、支援魔法が得意だったらしいしね!」
セリナ「そ、そうね! 本当に優しかったわよ!」
セリナ(どこまで話していいのかしら……)
風が木々を揺らし、遠くで鳥が飛び立った。
ヴェントが枝を避けながら振り返る。
ヴェント「セリナはどうなんだ?」
セリナ「ん?」
ヴェント「師匠だよ。いるんだろ?」
セリナ「私は……お姉――リリアナ様と、その姉弟子のDC様よ」
ルミナ「リリアナ……魔界でも有名な悪魔よね? で、DC?」
シルフィナ「“DC”。ここ十年くらいで名前が上がってる、“三災害”の一人……」
セリナ「ええ。ダークチャーム様よ」
ヴェント「ダークチャーム? って、エファレントさんと同じ名前じゃないか」
ルミナ「あ――!」
ヴェント「なんだよ、いきなり大声出して」
ルミナ「ヒマワリ=ダークチャームよ! 歴代最速・最年少で上級魔法学園を卒業した! エファレントさんの娘の!」
ヴェント「えぇ!? 母さんと一緒に旅してたって言ってたぞ!? それが……“三災害”?」
シルフィナ「つまり……ヴェントとルミナのお母さんは、“三災害”と旅してた冒険者ってこと?」
セリナ「……実は、すごい人なのよ」
ヴェント「確かに……俺が本気で撃った魔法斬撃でも、びくともしなかったしな」
ルミナ「そうね……二日寝込むほどの魔力消費で作った天災級魔法を、片手で止められたもんね」
セリナ「なんでそれで気づかないのよ……」
シルフィナ「一般人の基準が、もうおかしい……」
セリナは思わず苦笑した。
“彼女たちは、本当にあの人の子なのね”――そう胸の奥で呟きながら。
ヴェント「ところで、“三災害”ってのはなんなんだ?」
ルミナ「あんた、授業聞いてなかったの? 習うでしょ」
ヴェント「座学は寝てた……」
シルフィナ「はぁ……。昔、魔王が倒されてから百年くらい経った頃かな。魔界に“三大悪魔”が現れたの。後に“四大悪魔”と呼ばれるようになったわ」
ルミナ「ここ最近の大物悪魔はそのあたりね」
シルフィナ「そう。で、二十年前に魔王が再誕したとき、それを討伐したのが勇者アルディス。そのあとに魔界で現れた三体の魔人――その魔力と影響力の高さから“三災害”って呼ばれるようになったの」
セリナ「ちなみに、“四大悪魔”のうちの一人が――我が父、イグニス=ヴァルガなのです」
ヴェント「なにっ!? セリナの父さんってそんなすげぇ悪魔なのか!?」
ルミナ「そりゃ、その魔力も納得ね」
ヴェント「で、三災害の一人はエファレントさんの娘さんだとして、あとの二人は?」
セリナ「細かくは言えないけど……三災害は“深淵”“破滅”“暴禍”って呼ばれてるの。DC様が深淵、破滅は獣人族のリーディ様。そしてもう一人は――」
そのとき、地面が震えた。
土が爆ぜ、木々の間を何か巨大な影が駆け抜ける。
ジャリ…!
アーマードラゴン「ギャイアァァァァァァァァッ!!」
ヴェント「竜種!? こんな南部で!?」
ルミナ「しかも、あれは……アーマードラゴン!? 鋼鱗竜じゃない!」
セリナ「一気にやってしまいましょう!」
シルフィナ「私たちのパーティの初戦だね」
ヴェント「いいね、それ! 行くぞっ!」
風が荒れ、魔力が閃く。
木漏れ日の森が、一瞬で戦場に変わった。
火と氷、風と雷、そして精霊の光が交錯し――。
新たな冒険の始まりを、森が見届けていた。
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