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光と風の境界  作者: 770
14/39

栄光と旅立ちの杯

(^^)/

王都ガルディナ、夕陽が白亜の闘技場を朱く染めていた。

熱狂に包まれた武闘大会の幕が、静かに降りようとしている。

吹き抜ける風が、まだ砂と火薬の匂いを残していた。


王家席の前――、表彰台に立つ二つの影。

王冠を戴く老王レオンハルトが、ゆっくりとセリナの前に歩み寄る。


レオンハルト「おめでとう。久しぶりに血が沸き、肉が躍ったわ」

セリナ「ありがと。おじいさんもなかなか面白かったわよ」

衛兵「な、なんと無礼な!」

レオンハルト「よい、よい。……おぬしも何か感じておろう? あの双子……」

セリナ「あら? 知ってたの?」

レオンハルト「知っておるとも。二十年前、決勝で奴らと剣を交えたのは他でもないこのワシじゃ」


レオンハルトはゆっくりと微笑んだ。

その笑みに、歳月と誇りが宿る。


レオンハルト「しかも――青年のほうは、奴によく似ておる」

セリナ「……そう、やっぱりそう見えるのね」

レオンハルト「ふむ。血の因果というやつかもしれぬな」


ーーー


次に壇上へ呼ばれたのは、準優勝チーム。

風に乱れた髪を直しながらヴェントが大きく伸びをする。


シルフィナ「ありがたく頂戴いたします」

ヴェント「やったぜ!」

ルミナ「……また二位……」

レオンハルト「どうしたのじゃ? 準優勝では不服か?」

シルフィナ「いえ、気にしないでください」


レオンハルト「若者の悔しさは良いことじゃ。次こそは優勝を目指せ」

ヴェント「はいっ!」


ーーー


夜――。

酒場の明かりが金色に灯り、人々の笑い声が響いていた。


ヴェント「じゃあ俺たちの準優勝を祝して――かんぱーい!」

ルミナ「結局、負けても飲むのね……」

シルフィナ「ルミナは優勝する気まんまんだったもんね」

ルミナ「当たり前でしょ! この私の率いるチームが敗北なんて許せないんだから!」


笑い声が弾ける。そこへ、聞き慣れた声が割り込んできた。


リーファ「ヴェントさんっ、見てましたよ決勝戦! 本当にすごい魔力でしたね♡」

ヴェント「はは、ありがとな!」

シルフィナ「さすが、私のヴェント」

ガレド「うめええええ! これ何の肉だ!?」

メルア「……セリナ様? お食事、口に合いませんか?」


セリナはグラスを回しながら、遠くのテーブルを眺めていた。

ヴェント、ルミナ、シルフィナ――笑い声が絶えない。


セリナ「いや……いいんだけどね? 一応、同盟みたいな口約束もしたし……」

セリナ「でも、なんかもう……合流しちゃってる感じよね?」


ヴェント「まぁまぁ、かたいこと言うなよ! 飲んで、明日まじめな話しようぜ!」

セリナ「……今日はもう、話す気すらないんだ……」


リーファ「ヴェント様~♡」

シルフィナ「ヴェント~」

メルア「ヴェントさ~ん♪」

ヴェント「あははー!」

ルミナ「……なんでヴェントばっかりモテるのよ……」


ーーー


翌朝――いや、正確には昼過ぎ。

眩しい陽光に、酒臭い空気が残る宿の部屋で。


セリナ「と、いうわけで。……魔界に戻りますよ」

ヴェント「ううぅ……頭が割れそう……」

ルミナ「魔界って……どうやって行くの?」

シルフィナ「最果ての村……だよね……?」


セリナ「そうです! そこにあるダンジョンの最深部に、魔界への門が開いています」

セリナ「正確には空間魔法でも行けなくはないんですけど……私が飛べる座標は決まってて」

ルミナ「歯切れ悪いわね?」

セリナ「……飛べる場所が魔界のかなり奥なんです。瘴気が濃すぎて、入った瞬間に即死コースです」

シルフィナ「論外だね。正規ルートで行こう」

セリナ「ええ、もちろん私も同行しますから」

ルミナ「じゃあ、中央都市経由ね。でも北西部って、魔獣とか悪魔が多いでしょ?」

セリナ「そうですね。北へ越えるには“越境審査”があって、全員の冒険者ランクがダイヤモンド以上、しかも一人はブラックランクが必要です」

ヴェント「俺たちはプラチナだから……クエストこなして昇格しなきゃダメかぁ……」

シルフィナ「私、ダイヤモンドだよ」


ヴェント「すげー! 名前の横に宝石ついてる! かっこいいー!」

ルミナ「……ん? ダイヤモンドって特殊クエストを攻略するか、二十年以上の継続活動が条件でしょ? シルフィナ、あんた一体――ムグッ!」

シルフィナは慌ててパンをルミナの口に押し込んだ。

シルフィナ「ルミナ、それ以上はよくない」

セリナ「……ふふ、まぁ頼もしい仲間がいて安心ね」

セリナ「私もプラチナですから、まずは大都市に行って昇格用の特殊クエストを受けましょう」

ルミナ「ここから一番近いのは――“ネメシスシティ”ね。ここからなら三日で行けるわ」


ーーー


城門前。

王都を出る風が、柔らかく頬を撫でる。


セリナ「じゃあ、ガレドとメルアは先に帰ってて。お父さんに伝言お願い」

ガレド「了解っす! 気をつけてくださいね!」

メルア「セリナ様、どうかご無事で」

ヴェント「じゃ~な~!」

シルフィナ「……じゃ、行こっか。ネメシスシティへ」


夕陽が長い影を落とす。

その影は、四人分――。

風が吹き抜け、遠くの空で鐘の音が響いた。


こうして、栄光の終わりと新たな旅立ちが、同じ瞬間に始まった。

(^^)/

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