約束の炎
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闘技場の中央に立つ二つの影。
片や――レッドファング。
炎と氷の魔導戦士セリナ=ヴァルガ、雷槍のガレド、精霊使いメルア。
そして――ルミナとその他チーム。
風の剣士ヴェント、光魔法を操るルミナ、精霊魔導士シルフィナ。
空は白く焼け、観客席は一言も発さず試合開始を待っていた。
これが王都ガルディナ、十年に一度の最終戦。
セリナ「さ、腕を見せてくれる?」
ヴェント「やれるだけやってみるよ!」
メルア「セリナ様……本当によいのですか?」
ルミナ「まぁ、やれるだけやってみましょ」
ガレド「セリナ様ぁ、こいつらほんとに強ぇのか?」
シルフィナ(悪魔相手に……どこまでやれるかな)
審判「はじめッ!」
金属の音が弾ける。
同時に、風と雷が交錯した。
ヴェント「行くぜ! ストームシフト!」
ガレド「遅ぇ!」
稲妻が唸り、ヴェントの体をかすめる。だがヴェントは即座に後ろへ跳び、地を蹴って逆襲。
剣と槍がぶつかり、風が爆ぜる。
ルミナ「《ライトニング・ドロップ》!」
メルア「《アクア・プリズム》!」
放たれた雷撃が、メルアの水球に吸収されていく。
次の瞬間、球体の内側で電流が炸裂し、ルミナの頬を焼いた。
ルミナ「くっ……反射魔法!?」
メルア「学園の二席なら、そのくらい耐えられるでしょ?」
観客席がどよめく。
実況「なんと、序盤から魔力戦が拮抗している! 速すぎて肉眼では追えません!」
ヴェントは剣を回転させ、ガレドの槍を弾いた。
ヴェント「おらっ!」
ガレド「まだまだぁッ!」
空気が弾け、稲妻の竜巻が二人を包む。
砂が巻き上がり、二人の姿が消える。
シルフィナ(雷同士が干渉して風圧を生んでる……)
セリナ「ふふ、やるわね。じゃあ少し、こちらも見せてあげる」
セリナの目が紅く光った瞬間、会場全体の温度が上がった。
風が燃え、空気が震える。
ガレド「セリナ様、やっちゃってください!」
メルア「了解――《マナリリース》!」
二人の魔力が解放される。
空気が圧縮されるほどの魔力のうねりが発生し、砂嵐が会場全体を覆った。
ヴェント「うわっ、すげぇ圧力!」
ルミナ「こんな魔力密度、人間界じゃありえない!」
数分が経ち、戦況は五分に戻った。
ヴェントとガレドは互いに傷だらけ、ルミナの頬にも焦げ跡がある。
それでも笑みを崩さない。
ヴェント「まだまだいけるぜ!」
ルミナ「調子乗らないで!」
セリナ「ふふ……そう、それでいいの。じゃあ、ここからは――私が相手」
セリナが前に出ると同時に、ガレドとメルアが後退した。
会場の熱が変わる。
彼女の剣が構えられた瞬間、空気が静まり返った。
ヴェント「 ルミナ、援護頼む!」
ルミナ「了解!」
ヴェントが突撃。セリナの刃が紙一重で受け流す。
剣が弾き、火花が走る。ルミナの雷弾が飛ぶ。
セリナ「《アイス・ウォール》!」
氷の盾が生成され、雷を吸収する。
すぐに炎が燃え上がり、氷が蒸発する。
その一瞬の隙をついてヴェントが滑り込む。
ヴェント「はぁぁっ!」
セリナ「……悪くない!」
二人の剣が交錯した瞬間、地面が爆ぜた。
砂と光の嵐が広がり、観客が悲鳴を上げる。
シルフィナが結界を張りながら呟く。
シルフィナ「……これが、レッドファングの真の力」
ルミナ「ヴェント、今!」
ヴェント「わかってる!」
風が剣に集まり、空気を裂く。
セリナは炎の軌跡を描きながら受け止めた。
衝突――風と炎の奔流。
セリナ「楽しいわね……でも、そろそろ」
セリナの魔力が一気に膨張する。
セリナ「ー焔魔顕現ー」
紅い光が彼女の体を包み、皮膚に黒い文様が浮かび上がった。
観客がざわつく。
観客「な、なんだ……あの姿は……」
ルミナ「まさか……」
シルフィナ「魔人化……!」
ヴェント「っ、これが……悪魔の力か!」
セリナ「さて、どこまで私を楽しませてくれるかしら」
一瞬で間合いを詰め、セリナの剣がヴェントの頬を掠める。
ヴェントは後ろに飛び退き、息を整える。
ルミナが雷を放ち、シルフィナが水の壁で援護する。
しかし、セリナはそのすべてを片手で弾いた。
セリナ「《スカーレット・カリス》!」
紅炎がヴェントを呑み込む。
ヴェント「うわぁぁぁっ!」
ルミナ「ヴェント!」
炎の中、ヴェントが立っていた。
剣を握る手が震えている。
ヴェント「ヒヒヒ」
空気が変わる。風が逆流し、彼の瞳が光を帯びた。
シルフィナ(……あれ、ヴェントの魔力……暴走してる!?)
ヴェントの周囲に風が渦を巻き、光の筋が走る。
一歩踏み出した瞬間、空間そのものが歪んだ。
ヴェント「ヒッヒー!!!」
風の剣が閃光のように走り、セリナを貫いた。
セリナ「くっ……!」
爆音。炎が四散し、彼女の肩口が裂ける。
観客席から悲鳴が上がる。
メルア「セリナ様っ!!」
次の瞬間、メルアが詠唱する。
メルア「衝撃よ、暴れ狂え!《バーストウェイブ》!」
衝撃波がヴェントを直撃し、彼の体が場外まで吹き飛ぶ。
シルフィナ「ヴェントっ!!」
駆け出そうとした彼女は、すぐに審判に手を上げた。
シルフィナ「棄権します……これ以上は無理!」
審判「勝負あり!」
司会「優勝は――レッドファングゥゥゥゥゥ!!!」
観客「おぉぉぉぉぉぉっ!! 」「いい試合だったぞぉぉ!!」「 レッドファングー!! 」「ルミナたん結婚してえぇぇ!!」
歓声が渦を巻く中、砂塵の中からヴェントがよろよろと戻ってくる。
ヴェント「うぐぐ……」
シルフィナ「大丈夫……? どこか折れてない?」
ルミナ「アンタ何よ、さっきの……すごい魔力だったじゃない」
ヴェント「ん....?あぁ.....どうだっけ?」
セリナが近づき、肩を押さえながら微笑む。
セリナ「やはり、私の目に狂いはなかったわ……」
ヴェント「……?」
セリナ「一緒に来て……くれるわね?」
ヴェントはしばらく彼女を見つめ、それから小さく頷いた。
ヴェント「……あぁ」
夕陽が差し込む。観客の歓声が遠のく中、二人の間に吹く風だけが残った。
それは、これから始まる新たな旅の前触れだった。
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