紅蓮と聖光、王と悪魔の剣
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昼下がりの陽が闘技場を赤く染めていた。準決勝第二試合――王家チーム対レッドファング。観客席はすでに立錐の余地もなく、人々は歓声よりも息を飲むような静けさで、その瞬間を待っていた。
王家チーム。中央には白金の鎧を纏った老王、レオンハルト=ガルディナ。背後には二人の王子、第一王子ディルクと第三王子ニコル。
王の顔には戦士の光が宿っていた。
レオンハルト「二十年ぶりか……やっとまた剣を握れる。腰の調子も万全だ」
ディルク「父上、あまり張り切りすぎると、また侍医が嘆きますよ」
レオンハルト「はっはっは! 王が戦わずして、国の栄光など語れるか!」
対するは赤と青の髪を揺らす女、セリナ=ヴァルガ。静かな熱を纏い、両脇には雷槍のガレドと精霊書を掲げるメルア。悪魔の血を引くことを、この場の誰もまだ知らない。
ヴェント「あれが七十歳の体かよ」
シルフィナ「本物の戦士......重力の気配が違う」
ルミナ(構えが正しい。……無駄がない)
号砲が鳴り、稲妻が爆ぜた。
開幕と同時に、ディルクが双剣を構えて飛び出す。
ディルク「疾風迅雷――《ヴァルテクス・ドライブ》!」
雷鳴が地を走り、砂が焼ける。だが対峙するガレドもすぐさま咆哮を上げた。
ガレド「雷よ、我が槍に宿れ――《ライトニング・チャージ》!」
槍が輝き、二つの稲妻が激突した。轟音、閃光、砂煙。瞬きの間に十度の突きが交わり、空気が裂ける。
ヴェント「速すぎて見えねぇ……!」
ルミナ(あの槍……魔力を導線にしてる。焦げないのが異常……)
最後の一閃。ガレドの雷槍が空を裂いた。
ガレド「らあぁぁっ!」
閃光が走り、ディルクが両膝をつく。鎧が焦げ、双剣が砕ける。
ディルク「見事だ……父上、あとは頼みます」
レオンハルト「強くなったな。次は、ワシが行こう」
老王がゆっくりと進み出る。その動きに無駄がなく、踏み出すごとに砂粒が震えた。対峙するセリナの剣は紅と蒼。炎と氷、相反する力が一本の剣に宿る。
レオンハルト「ふむ、見事な立ち姿だ。剣士の血を感じる」
セリナ「あなたこそ戦闘の王。光の剣……確かめさせてもらうわ」
二人が同時に地を蹴る。剣と剣が交わるたび、火花ではなく光の柱が立ち、地面に焦土が刻まれていく。
ルミナ(炎と光が共存してる……制御が異常)
シルフィナ「重力の剣筋……剣圧で風が巻いてる」
ヴェント「……人間って、あんな動きできるのかよ……」
レオンハルト「聖なる刃よ、我が手に集え――《セイクリッド・ブレード》!」
セリナ「燃えろ――《フレイム・エッジ》!」
光と炎がぶつかり合い、闘技場の空が裂けた。
レオンハルトの瞳が僅かに光を帯びる。
レオンハルト「少し、歳の功を見せよう。《聖王斬》!」
空気が止まる。音が消えた。世界の全てが静止する。
止まった世界で、王の剣がゆっくりと振り下ろされた。
セリナ(時を止める……剣?)
彼女の体から魔力が逆流し始めた。炎と氷が反転する。
セリナ「双魔、反転――《ディア・ミラージュ》!」
静止した世界に紅と蒼の逆流が走り、時間が再び動き出す。
光と魔がぶつかり、世界が再び爆ぜた。
光が晴れ、二人が残る。
レオンハルト「ほう……止めても避けるか。若いとは恐ろしい」
セリナ「止まるのは、あなたの時間だけよ」
観客席が静まり返る中、後方では別の戦い。メルアとニコルが杖を掲げ合っていた。
メルア「風よ、土よ、螺旋を成せ!《ツイン・サイクロンフィールド》!」
ニコル「光よ、祈りを守護に変えたまえ。《サンクチュアリ・エリア》!」
精霊陣と聖域がぶつかり、地面が波打つ。
シルフィナ「領域干渉……精霊と聖光を重ねて中和させてる……」
ヴェント「つまり……どっちが勝ってるんだ?」
メルア「均衡なんて退屈ね――地よ、裂けろ、《アースブレイク》!」
地面が破裂し、聖域が揺らぐ。
ニコル「穏やかなる光よ、傷を癒せ。《アークリペア》」
光が走り、地割れが消える。二人の魔法がぶつかるたび、世界の形が歪んでいく。
再び中央。セリナと王。二人とも息を荒げながらもまだ立っていた。
レオンハルト「見事だ……だが、王は最後まで立たねばならぬ!」
レオンハルト「《ディヴァイン・エクスプロード》!」
天から光柱が降り注ぎ、全てを焼く。観客席まで眩しさが届く。
セリナ(――炎と氷、対極の力……いまこそ)
セリナ「《スカーレットアークティカ》!」
赤と青が混ざり、白が生まれる。
凍る炎、燃える氷。矛盾する現象が一つに融け、王の聖光を飲み込んだ。
風が止み、静寂。光が収まり、王の剣が地に落ちる。
レオンハルト「見事だ、若き使者よ。……二十年ぶりの戦い、これほど心が躍ったのは初めてだ」
セリナ「あなたのような王がいるなら、この国はまだ光の側ね」
レオンハルト「ははは、腰もまだ壊れておらん。続きは――十年後にしようか」
観客が総立ちになり、歓声が雷鳴のように響く。
実況「勝者――レッドファング!!!!」
ヴェント「……すげぇ……なんなんだよ、あれ」
ルミナ「温度と属性の矛盾を同時に成立させてる……世界の理をねじ曲げてる」
夕陽が差し、闘技場の砂を紅く染めた。
その中心に立つセリナ=ヴァルガ。燃えるような紅の髪を揺らし、静かに空を見上げる。
その姿はまるで――伝説を塗り替える、新しい“王”のようだった。
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