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光と風の境界  作者: 770
10/39

光と炎、誇りを懸けて

(^^)/

 夜風が窓を揺らし、月光が宿の木の床に淡く反射していた。

 勝利の余韻が、まだ部屋の中に残っている。


ヴェント「ほんじゃ!準々決勝勝利を祝って――かんぱーい!!」

ルミナ「……そのテンションで明日も明後日も宴するつもりでしょ」

シルフィナ「ふふ、いいじゃない。お祭りなんだし」

ヴェント「いやぁ、やっぱ戦ったあとの飲み水は格別だな!」

ルミナ「どうせその“水”も中身は酒でしょ」

ヴェント「細けぇことは気にすんなって!」


 笑い声が重なり、窓の外の星々が揺れる。

 闘技場の喧噪はもう遠く、街は静まり返っていた。

 その静寂を破るように、コンコンと軽いノック音。


ヴェント「ん? 誰だ?」

 ドアを開けると、廊下の明かりに照らされた一人の影。

 深くフードを被った少女――その姿にルミナが目を細める。


ルミナ「あなた……確か、レッドファングの……セリナ、だったわね」

セリナ「急にごめんなさい。少し、話をさせてほしいの」

ルミナ「……」

シルフィナ「敵意はないみたい。魔力の流れも穏やか……」

ヴェント「なら入れよ! 話くらい聞いてやる!」


 セリナは静かに頷き、フードを外した。

 紅と蒼の髪が月明かりに輝く。

 その瞳は、どこか哀しげで、どこか誇り高かった。


セリナ「単刀直入に言うわ。――私は“悪魔”なの」

 三人の空気が一瞬で変わる。

 シルフィナが無意識に結界の詠唱を始め、ルミナの指先に雷光が宿る。

 ヴェントは構え、目を細めた。


ヴェント「……マジか。なんで人間界に?」

セリナ「待って! 戦う気はないの。むしろ――助けを求めに来たのよ」

ルミナ「“助け”?」

セリナ「ええ。私は今、“魔界秩序維持組織”の一員。

 ……簡単に言えば、魔界で暴走する連中を止める側」

シルフィナ「そんな組織があるのね」

ヴェント「魔界にも法律とかあんのか?」

セリナ「ふふ、似たようなものよ。でも今、その秩序が崩れかけてる」


 セリナは椅子に腰を下ろし、静かに語り始めた。

 その声は凛として、どこか痛みを含んでいた。


セリナ「魔界は今、“三つの派閥”に分かれてる。

 一つはリリアナ=ヴァルガ率いる“秩序維持派”。

 一つはカイエル=ヴァルガの“統一派”。

 そして中立の“保守派”、ナディル=ヴァルガ。

 本来は兄妹で手を取り合ってた。でも……くだらないことがきっかけで仲違いした」


ヴェント「くだらないこと?」

セリナ「うん。夕食の献立、だとか。誰が先に王座の椅子に座ったか、とか。

 最初は本当に“子供の口喧嘩”だった。けど、そこから軍まで巻き込む大戦争になったの」

ルミナ「……なんていうか、信じられない話ね」

シルフィナ「けど……魔界って、そういう“感情”で動く場所でもあるんだろうね」

セリナ「そう。強い感情が、力になる場所。だからこそ、争いは止まらない」


 セリナの声に、ルミナの眉が僅かに動いた。

 どこかで聞いたような話。

 かつての魔王討伐の記憶が、ほんの一瞬だけ頭をよぎる。


セリナ「私はリリアナの直属。秩序を守るために動いてる。

 でも、いま“統一派”が勢力を伸ばしてる。

 このままじゃ、魔界が崩壊する」

ヴェント「……それで、人間界に?」

セリナ「そう。強い人間を探してる。

 魔界を外から見られる“第三の目”が必要なの」

ルミナ「……スケールが、想像以上ね」

シルフィナ「でも、放ってはおけない話」

ヴェント「魔界、かぁ……。興味はなくはなくない」

ルミナ「……どっちよ」


 ヴェントの言葉に、セリナの視線が動いた。

 その瞬間、彼女の瞳が微かに光を宿す。


セリナ(この魔力の波長……やはり……“暴風”の残響……?)

 彼女は気づく。

 ヴェントとルミナに宿る、かつての“カイ”の魔力。

 しかし、それを言葉にはしなかった。


セリナ「……焦らなくていいわ。

 私の力も、あなたたちの目で確かめて。トーナメントはあと二日あるんでしょ?」

ヴェント「おう! じゃあ、明日――お互い全力で見せ合おうぜ!」

ルミナ「ふふ、面白くなってきたじゃない」

シルフィナ「……風が、嵐を呼ぶかもしれない」


 セリナは小さく微笑み、フードをかぶり直した。

セリナ「じゃあ、また明日。……おやすみ」

 扉が静かに閉まり、残ったのは風の音だけ。


 翌朝。

 青空の下、闘技場の門が開かれる。

 観客の歓声が天を裂き、光の魔法幕に試合の文字が浮かんだ。


第一試合:勇者アルディスチーム VS ルミナとその他チーム

第二試合:レッドファング VS 王家チーム


 陽光が剣を照らし、砂が舞い上がる。


実況「準決勝――開戦!!!」


 雷鳴のような歓声が轟く中、ヴェントが剣を抜き、ルミナが微笑んだ。

 セリナは対面の観客席から、彼らの姿を見つめていた。


セリナ(やっぱり……この子は、“暴風”の血だ)


 空が震え、風が走る。

 新たな戦いが、静かに始まろうとしていた。

(^^)/

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