光と炎、誇りを懸けて
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夜風が窓を揺らし、月光が宿の木の床に淡く反射していた。
勝利の余韻が、まだ部屋の中に残っている。
ヴェント「ほんじゃ!準々決勝勝利を祝って――かんぱーい!!」
ルミナ「……そのテンションで明日も明後日も宴するつもりでしょ」
シルフィナ「ふふ、いいじゃない。お祭りなんだし」
ヴェント「いやぁ、やっぱ戦ったあとの飲み水は格別だな!」
ルミナ「どうせその“水”も中身は酒でしょ」
ヴェント「細けぇことは気にすんなって!」
笑い声が重なり、窓の外の星々が揺れる。
闘技場の喧噪はもう遠く、街は静まり返っていた。
その静寂を破るように、コンコンと軽いノック音。
ヴェント「ん? 誰だ?」
ドアを開けると、廊下の明かりに照らされた一人の影。
深くフードを被った少女――その姿にルミナが目を細める。
ルミナ「あなた……確か、レッドファングの……セリナ、だったわね」
セリナ「急にごめんなさい。少し、話をさせてほしいの」
ルミナ「……」
シルフィナ「敵意はないみたい。魔力の流れも穏やか……」
ヴェント「なら入れよ! 話くらい聞いてやる!」
セリナは静かに頷き、フードを外した。
紅と蒼の髪が月明かりに輝く。
その瞳は、どこか哀しげで、どこか誇り高かった。
セリナ「単刀直入に言うわ。――私は“悪魔”なの」
三人の空気が一瞬で変わる。
シルフィナが無意識に結界の詠唱を始め、ルミナの指先に雷光が宿る。
ヴェントは構え、目を細めた。
ヴェント「……マジか。なんで人間界に?」
セリナ「待って! 戦う気はないの。むしろ――助けを求めに来たのよ」
ルミナ「“助け”?」
セリナ「ええ。私は今、“魔界秩序維持組織”の一員。
……簡単に言えば、魔界で暴走する連中を止める側」
シルフィナ「そんな組織があるのね」
ヴェント「魔界にも法律とかあんのか?」
セリナ「ふふ、似たようなものよ。でも今、その秩序が崩れかけてる」
セリナは椅子に腰を下ろし、静かに語り始めた。
その声は凛として、どこか痛みを含んでいた。
セリナ「魔界は今、“三つの派閥”に分かれてる。
一つはリリアナ=ヴァルガ率いる“秩序維持派”。
一つはカイエル=ヴァルガの“統一派”。
そして中立の“保守派”、ナディル=ヴァルガ。
本来は兄妹で手を取り合ってた。でも……くだらないことがきっかけで仲違いした」
ヴェント「くだらないこと?」
セリナ「うん。夕食の献立、だとか。誰が先に王座の椅子に座ったか、とか。
最初は本当に“子供の口喧嘩”だった。けど、そこから軍まで巻き込む大戦争になったの」
ルミナ「……なんていうか、信じられない話ね」
シルフィナ「けど……魔界って、そういう“感情”で動く場所でもあるんだろうね」
セリナ「そう。強い感情が、力になる場所。だからこそ、争いは止まらない」
セリナの声に、ルミナの眉が僅かに動いた。
どこかで聞いたような話。
かつての魔王討伐の記憶が、ほんの一瞬だけ頭をよぎる。
セリナ「私はリリアナの直属。秩序を守るために動いてる。
でも、いま“統一派”が勢力を伸ばしてる。
このままじゃ、魔界が崩壊する」
ヴェント「……それで、人間界に?」
セリナ「そう。強い人間を探してる。
魔界を外から見られる“第三の目”が必要なの」
ルミナ「……スケールが、想像以上ね」
シルフィナ「でも、放ってはおけない話」
ヴェント「魔界、かぁ……。興味はなくはなくない」
ルミナ「……どっちよ」
ヴェントの言葉に、セリナの視線が動いた。
その瞬間、彼女の瞳が微かに光を宿す。
セリナ(この魔力の波長……やはり……“暴風”の残響……?)
彼女は気づく。
ヴェントとルミナに宿る、かつての“カイ”の魔力。
しかし、それを言葉にはしなかった。
セリナ「……焦らなくていいわ。
私の力も、あなたたちの目で確かめて。トーナメントはあと二日あるんでしょ?」
ヴェント「おう! じゃあ、明日――お互い全力で見せ合おうぜ!」
ルミナ「ふふ、面白くなってきたじゃない」
シルフィナ「……風が、嵐を呼ぶかもしれない」
セリナは小さく微笑み、フードをかぶり直した。
セリナ「じゃあ、また明日。……おやすみ」
扉が静かに閉まり、残ったのは風の音だけ。
翌朝。
青空の下、闘技場の門が開かれる。
観客の歓声が天を裂き、光の魔法幕に試合の文字が浮かんだ。
第一試合:勇者アルディスチーム VS ルミナとその他チーム
第二試合:レッドファング VS 王家チーム
陽光が剣を照らし、砂が舞い上がる。
実況「準決勝――開戦!!!」
雷鳴のような歓声が轟く中、ヴェントが剣を抜き、ルミナが微笑んだ。
セリナは対面の観客席から、彼らの姿を見つめていた。
セリナ(やっぱり……この子は、“暴風”の血だ)
空が震え、風が走る。
新たな戦いが、静かに始まろうとしていた。
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