第七話「普通の友達」
町から村に帰ってきた日、学校は休校日だったはずだが、俺のクラスメイトは全員学校に来ていた。
俺は先生に呼ばれたから来ただけだったが、まさかこのために呼ばれたとは思っていなかった。
「合格おめでとー!」
俺の姿が見えるや否やみんなそう言いながら俺の方に駆け寄ってくる。
来月から俺はこの学校を辞めて、町の専門学校に通うことになる。
その学校では十二歳まで通うことになり、その後は大学に行く。
つまり、この学校で過ごす時間は残り一ヶ月なのだ。
その上、この学校は今後二週間ほど休みなのでみんなと会える機会はもう数日になってしまう。
町での生活の準備もあるのでこれは送別会ということなのだろう。
二年間一緒に過ごした仲間たちに一人ずつ別れの挨拶をしてくれた。
最後はヘレネスと話すことになった。
「なかなか会える機会はないかもしれないけど僕は君のことを応援しているよ」
「ありがとう、君こそ頑張ってね」
「うん」
最後にみんなからの手紙をもらって解散した。
しばらくしてみんながいなくなってから、算術の先生に呼ばれた。
「奨学金っていうのは、いずれ全額返さないといけないんだ」
「はい、わかっています」
「卒業後に六年分の学費を払うことになるから、大学ではどうするつもりなんだ?」
「十八年に分割して学費を返すので、大学での六年間は両親にお金を出してもらうつもりです」
「わかった。あの学校に入ったからといって必ず医者になれるというわけではない」
「もちろん、これからも勉強を怠るつもりはありません」
「これからも頑張れよ」
俺の意志確認だったのだろう。
最後に俺を鼓舞してくれた。
「今まで本当にありがとうございました」
「これからも何か困ったときは頼ってもいいんだぞ」
お辞儀をしてこの学校を後にした。
学校を出るとヘレネスが外で待っていてくれていたようだ。
「何かあったのかい?」
「いや、ただこれからのことについて先生と話していただけだよ」
「そうか。じゃあ、少しあっちで話さない?」
「うん」
学校の裏にある小川の岸辺に座る。
百メートルほど下流の方で俺と同じぐらいの歳の子供が遊んでいたが、ヘレネスは特に気にせず寝転んだので俺も同じようにする。
「僕も大学には行こうと思っているんだ」
「そうなんだ。医者になりたいの?」
「いや、もうすでに出遅れているし、お父さんの様子を見ていると少し医者になろうとすることが申し訳ないんだ」
どうして、と聞こうと思ったがそれもわざわざ掘り起こすのも申し訳ないと思ったので辞めることにした。
「勝手に僕が行ってみたいと思っているだけなんだけどね」
「いや、それで十分だと思うよ」
そうかな?と薄ら笑いをする。
この二年間の日々は一緒に受験をする人はおらず何千時間を一人で合格するためだけに勉強してきた孤独の日々を振り返る。
「それなら、一緒に大学目指さない?」
やはり一緒に競え合える仲間がいるということは今後大きな強みになっていくのかもしれない。
学校こそ違ってもお互い目標に向かって進むことはできる。
そして、遠くにいてもお互いの影響力は掻き消されることはないのではないか。
「うん。すぐに追いつくからね」
俺たちは拳を合わせてそう誓った。
5月までにできるだけ物語は進めたかったので7〜9話は量が少なくなってしまいました
いずれ書き足します
すみません