まちがえてもいいんだよ
手紙が導くちいさな冒険。
誰だって経験あります…よね?
ここは動物たちが暮らす小さな島。
「くまの団地」に住むくまの子は玄関に1通の手紙が落ちていることに気づきました。
手紙を開くと・・・
「はちみつ山へお越しの方へ
はちみつ山には数多くのミツバチが暮らしています。
彼らの作るはちみつは我々が生きていく上で必要な資源です。
取り過ぎず、ミツバチ達と共に生きていくためにも、はちみつ山に入る方にはこの手紙の提示と合言葉をお願いしています。
合い言葉は つみちはのつみちは です。
管理人さる」
これは今日、はちみつ山に仕事で行ったお父さんくまの忘れ物でしょうか?
くまの子は手紙をお父さんくまの所へ届けたいと思いました。
はちみつ山へは「ヘビデン」と言われる電車に乗って4駅目です。
くまの子はお母さんくまからドングリを8個貰って出発しました。
いつもはお母さんくまと乗るヘビデン。
今日はひとりです。
「くまの団地」で運転士のヘビにドングリを4個払ってくまの子は「よっつめ、よっつめ」と唱えながら乗りました。
ヘビの運転士がアナウンスします。
「つぎは~うみのはら~うみのはらです」
「つぎは~るりがわ~るりがわです」
「つぎは~ゆうひはし~ゆうひはしです」
「つぎは~みかんやま~みかんやまです」
「よし!よっつめ」とくまの子は電車を降ります。
しかし・・・ここは「みかんやま」。「はちみつ山」ではありません。
「おかしいなあ。いつもよっつめではちみつ山なのに。はちみつの匂いもしないし。管理人さんもいない。」
くまの子はどきどきしてきました。
そういえばいつもはヘビデンに乗ったら最初に「さくらがおか」って言うのにいわなかったな。
もしかして間違えた電車に乗っちゃったのかなあ。どうしよう。
だんだん手足が冷たくなって動かなくなってしまいそうです。
すると隣で赤ちゃんが泣き出しました。
ぼくもなきたいよ。なんでちゃんと「つぎは~さくらがおか」っていうヘビデンに乗らなかったんだろう。もうドングリは帰りのぶんしかない。
お家に帰れなかったらどうしよう。
それよりも手紙がなくてお父さん困っているかも知れない。
目の前がぼんやりしてきて、鼻がツンとしてきました。
「どうしたの?どこに行きたいの?」
泣いている赤ちゃんオオカミを抱いたオオカミのお母さんが声をかけてきました。
くまの子はとうとう泣き出してしまいました。
「ぼく、よっつめなのに。よっつめじゃなくて。本当はさくらがおかなのに。お父さんいなくて。はちみつじゃなくて。」
あふれる涙と一緒にことばがでてきます。
オオカミのお母さんは赤ちゃんにミルクをあげながらずっと聞いてくれていました。
そして、くまの子の涙が引いたころに鞄からはちみつキャンディを出してくまの子に渡しました。赤ちゃんはすっかり眠っています。
「きっとキミははちみつ山に行きたかったのかな? ここはみかん山だからこのつぎがはちみつ山よ。」
くまの子はキャンディをなめながら不思議そうにしています。
オオカミのお母さんはちょうどやってきたヘビデンの運転士にくまの子を連れて行き「この子間違えて降りちゃったの。はちみつ山までドングリなしで乗せてあげて。」といいました。
運転士のヘビに「ぼく、くまの団地からよっつめのはちみつ山に行きたかったんだ。どうしてみかん山になっちゃうの?」と聞いてみました。
ヘビは「この電車は「環状線」と言って、島をぐるっと輪のように走っていて。その線路を「内回り」と「外回り」の2種類の電車が走っているんだよ。キミはくまの団地からうみのはらに行く「外回り」に乗ったんだね。「内回り」に乗るとキミの言う「よっつめ」がはちみつ山なるね。」
そして、ヘビの運転士はウインクしながらいいました。
「乗り間違えたらまた言ってくれ。間違えてもいいんだよ。この線路はつながっている。ずっと乗っていればいずれ行きたいところへいけるのだから。」
まちがえてもいい。
くまの子の顔がぱあっと明るくなりました。
「ありがとう!ぼく、駅の名前ぜんぶおぼえるよ。今度まちがえてもわかるように。だってドングリそんなにもっていないもん。そして困っている誰かに教えてあげるんだ。『まちがえてもいいんだよ』って。」
ヘビの運転士はわらいながら「つぎは~はちみつ山です」と言いました。
読んでいただきありがとうございました。
因みに駅名は
うみのはら →くまのだんち →さくらがおか →たんぼはら→なのはなばたけ→はちみつやま →みかんやま→ゆうひはし→るりがわ→うみのはら…です。
あと、もちろん後に乗り越した分のドングリはお父さんくまが支払いましたよ。
まちがっても、遠回りしてもいい。行きたいところへいけるのだから。




