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悪あがき

作者: ぐり

「本当に、茉莉ちゃんは器量良しだわね」

 幼い頃から幾度となく耳に入る言葉。

『馬鹿野郎!子供だって傷つくんだよ』

 心の叫びを感じるかの様に母は私に明るく言い放った。

「男は度胸、女は愛嬌。笑う門には福来るってね」


 姉は美人だ。色も白くもち肌で、目はパッチリと愛らしい。

 それに引き換え、私は地黒で平凡な顔立ち。


 自分のファッションが似合ってないのは分かってる。でもどうしても、姉と同じ土俵には上がれない。

 大体が姉妹なのだから多少は似ている。でも、テレビの物まね番組の「顔そっくりさん」を見ていても分かるように、似ているから美形とは限らない。

 他人なら、「似てる人」で済む話かもしれないけど、身内に似ているけど、出来が違う人が居るのは結構堪える。

 それぞれに美形なら「美人姉妹」で良いのかもしれないけどね。


 お下がりの服。写真で同じ服を着ているのを見ると差は歴然としていた。お揃いの服を着た時も同様。

 どうしても見劣りする自分を見る位なら、姉と違う所に立つしか無い。一般的な服を着ていてかぶったら最低。


 高校生の頃彼氏が出来た時にも、姉が居るかもしれない家に呼ぶのは嫌だった。

 神様の意地悪なのか、本性を暴いてくれたのか、ただ単に行動範囲が狭かったのか。

 かなりの高い確率で彼氏と一緒に居る時に姉に遭遇した。

 ファッション雑誌から抜け出たようなファッションで、声を掛けて来る姉を見た彼氏の反応は。

 馬鹿みたいに呆けた顔で姉の顔を見つめる。

 一緒にお茶でも飲もうなんて話になってからは、私の事は眼中に無いって感じ。

『あんたは芸能リポーターか』なんて、突っ込みを入れたくなる程、姉の情報収集に夢中になってしまう。

 更には、盛んに家に来たがるようになるともう付き合いを続ける事なんてできっこない。


 姉が先に結婚した。豪華で本当に夢のような披露宴だった。美男美女カップルに贈られる言葉は尽きることなく、お色直しも三回したけれど、入場の度に割れるような拍手が沸き起こった。

 私の彼氏がビデオを撮影してくれた。彼氏に頼めた理由は、初めて姉に会った時にも、

「どうも」

 で済ませ、私のほうを向いて話してくれたから。そんな反応する人を初めて見た。

 披露宴でも

「ほえ~。まるで芸能人の披露宴みたいだなぁ。テレビ観てるみたいだ」

 言い方があまりにも他人事のようだったので、プロポーズを受け入れる決心が出来た。


嫌な事を思い出した。

 私の結婚式の時、姉が教会で式を挙げたからと言う訳ではないけど、私は神前挙式を希望した。

 挙式の時に姉は色留袖と言う、明るい色調の留袖を着ていた。けれど、披露宴が始まり私達が入場すると…

 一番入り口に近い親族席には、艶やかなドレス姿の姉が居た。

 人間あまりにも突飛な事態に遭遇すると思考が停止してしまう事を初めて経験した。

 花嫁に負けず劣らずの華やかなドレスに、ヘアメイクまで変えていた。

 さらに、キャンドルサービスでテーブルを回る時に、親族席は両親の間から火を灯す予定だった。四人を正面から捉えた写真を撮ってくれるように夫の友人にお願いしておいた。

 結果は、父と姉の席が入れ替わっており、更に写真のピントは姉に合わせてあった。新郎新婦は首から下と言うありさま。

 更に更に、後日式場に頼んでおいたビデオを見た時には吃驚。

 お色直しの間のスピーチ、歌などの合間合間に華麗にテーブルを回る姉の姿がチョクチョク映し出されている。

 ビデオは二度と見る気になれなかった。

 その後、母が姉に凄く怒っていた。姉の言い分は、自分は着物は好きじゃないのに、姉妹で既婚者なんだからせめて着物を着た方が良いと母に言われた。

 でも、披露宴はやっぱり洋装で出たかったので、色留袖を選んだ後自分で式場に行ってドレスのレンタルと美容室の予約を入れて来た。

 自分でお金を払ったんだから文句言うのがおかしい。と言うものらしい。


 妹の結婚式を台無しにして人としての分別がなってないと言われても、

「あらそうなの……。亜紀ごめんねぇ。悪気はなかったのよぅ」

 で済まされてしまった。

 

 結局父が取成して何とか怒りの矛先を収めたけど、

「でも、あのドレスは似合っていた。うん」

 この一言で父の払った代償は大きかった。後々まで延々と母に当てつけられる結果になるとは。


 姉はたける(あに)と梨香(妹)に恵まれた。

 私は亜紗美(姉)と翔(弟)に恵まれた。

 従兄妹同士になる四人は年も近く一緒に居ることが多かった。


 私と姉の仲は比較的良好な関係だとも言える。

 小さい頃は

『どうして、姉ばかり褒められるのだろう?』

 なんて、釈然としない部分はもっていたけれど、別段意地悪された訳でもなく。

 何となく、そういうものと言う感じで受け止めていたのだと思う。


 甥っ子のお古を貰ったり、娘が着ている服を見て、

「これ、可愛いなぁ。着れなくなったら頂戴」

 と言われ、小さくなった服を渡すとちゃんと姪っ子が着ている。


 結局、私がひがんでいるだけで、姉の方は何を思うでもなく、妹、肉親として捉えているのだと思う。

共感出来るような話を書きたいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] わたしにも美人の姉がいて、わたしは平凡な顔立ちなので、本当に共感できました。 結構な差があるけど、わたしたちは本当に仲が良いので、あまり気にはなりません。 でもやっぱりわたしも心のどこか…
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