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【コミック3巻6/14発売】前世魔術師団長だった私、「貴女を愛することはない」と言った夫が、かつての部下(WEB版)  作者: 三日月さんかく
第4章

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90/126

書籍1巻発売記念SS(心理テスト)

もうすでに発売しているところもあるようですが、明日『前世魔術師』1巻発売です!!

よろしくお願いいたします!!



 今日も一日、私は奥様としてロストロイ魔術伯爵家の平和を守り抜いた。

 というわけで今日のご褒美タイムである。自分を甘やかすことに関して、私はなかなかのプロなのである。


 リドギア王国北部の酒蔵が作っているスノーウォッカが今日の私のご褒美だ。

 スノーウォッカはグラスに注ぐとき、雪の結晶のようなものがキラキラと浮かぶ不思議なお酒だ。

 居間のローテーブルにスノーウォッカの瓶を三本ほど並べていると、すぐさま執事のジョージがやって来る。そして私が選んだお酒の銘柄を見て、「では味の濃い肴をご用意いたします」と微笑み、サラミやナッツや酢漬けのお魚をちょこちょこ持ってきてくれた。

 ジョージはどんなお酒にどんな肴を合わせるかをきちんと考える、出来た執事だなぁ。

 私はおいしいお酒が飲めればそれでいいので、ワインのマリアージュやらペアリングは至極どうでもいい。岩塩が肴でも文句はないタイプである。そんな私のためにいつも最高の組み合わせを考えてくれるジョージはとても良いやつである。


 ローテーブルに並んだ肴をつまみつつ、スノーウォッカを雪の結晶ごと飲んでいると。

 ギルが居間にやって来た。


「こちらにいらっしゃったのですね、オーレリア」


 魔術師団から帰宅したギルは、夕食を食べるとすぐに執務室にこもって領地からの報告書を読んでいた。それがようやく終わったのだろう。

 ギルはニコニコとした笑顔を浮かべ、私が腰掛けていたソファーの横に腰を下ろした。


「今日も一日お疲れさま、ギル。いっしょにスノーウォッカを飲む?」

「では、少しだけいただきます」


 私は空のグラスにお酒をほんの少しドポドポドポドポッと注ぎ、ギルは「あ、いえ、オーレリア基準の『少し』ではなく、一般的な量の『少し』のつもりだったのですが……。まぁ、いいです」と言った。


 ギルはスノーウォッカをゆっくりと舐めながら、一冊の本を膝の上に置いた。


「何の本? 魔術式の論文?」

「いえ。これは心理テストの本です」

「心理テスト?」


 妙な本を買ってきたなぁ、と首を傾げる私に、ギルは銀縁眼鏡のつるをクイッと上げた。


「チルトン領へ里帰りした際に、僕が義弟妹たちから尋問を受けたことを覚えていらっしゃいますか?」

「そういえば、そんなことがあったね」


 尋問という言葉の響きは恐ろしかったが、内容は心理テストでギルの本性を暴くというものだった。

 たしか、ギルの独占欲とか愛情深さとかストーカー度がヤバかった気がするけれど。そんなものは深層心理を暴くまでもなく、日常生活で丸見えだったので、特に驚きはしなかったなぁ。


 それよりもギル、ついに私の弟妹たちを義弟妹と呼ぶようになったのか。

 一番上の弟でさえ十一歳なので、二十歳差の義理のきょうだいか……。もはや親子の年齢差だ。


「そのときの心理テストがなかなか興味深かったので、僕も本を購入してみました」

「ふぅーん」

「オーレリア、ぜひ心理テストを受けてみませんか?」

「うん、いいけれど」


 ギルの膝の上に広げられた心理テストの本を、私は横から覗き込む。

 本にはガッツリと付箋が貼られていた。これがギルの気になる心理テストらしい。


「『恋人の一途度チェック』……、『理想の結婚生活を知ることが出来るテスト』……、『相手が望むキスのシチュエーション』……。心理テストで本当にこんなことが分かると思っているのか、ギルよ?」

「覗き込まないでください、オーレリア! テストにならないじゃないですか!」


 ギルはプンプンと怒って、本を自分の胸元へと引き寄せた。妙に可愛い動作である。

 私は「ごめんごめん」と謝ると、本の内容が見えないように少し離れた。


「では、第一問目です。『オーレリアは僕とデート中です。そこに悪い魔術師が現れ、僕を動物の姿に変えてしまいました。僕は次のうち、どの動物になったでしょうか? ①馬……』」

「――待って、ギル。悪い魔術師が、ギルを動物の姿に変えた?」


 どういう展開なんだ、それは。


「変身魔術は自分自身に掛けるものでさえ、とてつもなく高度なのに。それを他者に掛けたってこと? しかも天才魔術師団長ギルを相手に? 私はどうやってその魔術師と戦えばいいの? 戦ったところで、本当に勝機はあるのかな……?」


 その悪い魔術師がギルの隙をついたのか、真っ向勝負でギルを倒したのか分からないが。

 そんな凄腕の魔術師相手に、爆破魔術一択の私が勝てる気がまったくしないぞ。


「お待ちください、オーレリア。重要なのは、僕がどの動物に変身させられたかで、悪い魔術師の部分ではなく……」

「いや、めちゃくちゃ重要でしょ!? だって夫が動物に変えられちゃったんだよ!? その魔術師をぶちのめさなくちゃっ!! ギルが例えどんな動物になっても最後まで面倒を見る気はあるけれど、私は人間のギルと生きたいもの!!」

「おっ、オーレリア……!!!!」


 ギルは心理テストの本を膝から落とし、私を強く抱きしめた。


「僕が間違っていました!! こんなもので貴女の心を知ろうなどと、僕はなんという愚かなことを……!!」

「ねぇギル、本当に変身魔術を他者に掛けられるものなの!? 気になって仕方がないんだけれど! なにか参考になる変身魔術の本はないかな!?」

「ええ、そうですね。書斎に行って調べましょう。まだ翻訳されていない変身魔術の本があったはずです」

「うわぁ、気になるぅ~」


 私たちはスノーウォッカの瓶とグラスを持ち、書斎へと移動することにした。


 今日もじつに長い夜になりそうだ。


特典情報は活動報告に書きました。

有償のタペストリーまで作っていただきました!


そして、なかなか4章に突入出来なくて申し訳ありません;;

いま複数書籍化作業をやっていまして、締め切りがいっぱいです;;

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