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【コミック3巻6/14発売】前世魔術師団長だった私、「貴女を愛することはない」と言った夫が、かつての部下(WEB版)  作者: 三日月さんかく
第3章

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44:クリュスタルムの返還3



 このままクリュスタルムとはお別れなのかな、と。

 しんみりしていたら、クリュスタルムによる恒例の美女選定が始まった。


 クリュスタルムはトルスマン皇国から選ばれた巫女姫達を一人一人審査し、

〈好みではないのじゃ〉

〈そなた 生娘ではないのじゃ!〉

〈顔は好みじゃが 性根が悪過ぎるのじゃ〉

 などと、バッサバッサ落選させていく。そして誰もいなくなった。


 唯一クリュスタルムからの合格点が出たのは、アウリュムを持ち運ぶ役目を担っていたプラチナブロンドの少年だけだった。


 彼に関しては好みにうるさいクリュスタルムも、

〈実に好みの顔の生息子なのじゃ! さすがは兄上の側仕えじゃ!〉

 と絶賛していた。


 少年は私より一つ年上の十七歳とのことだが、クリュスタルムに生息子と連呼されて泣きそうな表情をしていた。

 そうだよね。祭司とはいえ多感な時期だもんなぁ。


〈兄上! 気に入る巫女姫がおらぬので 妾は帰国の準備が整うまでは オーレリアとギルと共におるのじゃ!〉

〈クリュスタルムが巫女姫達を気に入らないと言うのなら仕方がない 我が麗しの妹の願いは すべてこの兄が叶えてみせよう

 大祭司よ!! 新たな巫女姫の選定をするのだ!! トルスマン皇国からすべての美しい乙女を集めよ!!〉


 アウリュムのやつ、めちゃくちゃ妹を甘やかすじゃん?

 クリュスタルムの性格が形成された原因の一端が見えたような気がした。


「いや、待ってくれ、クリュスタルム」


 ギルが青褪めた表情でクリュスタルムに問いかける。


「貴様はトルスマン皇国へ帰ることを悲願としていただろう。ようやくアウリュムや大神殿の者達と再会出来たのだ。このまま彼らと過ごすべきではないか!? というか、もういい加減、僕の妻から卒業しろ!! してくれっ!!!!」

〈兄上や新しい大祭司達とも無事に相まみえることが出来たのじゃから そう急ぐこともなかろう どうせ帰国の準備に今暫く時間が掛かるのじゃ その間オーレリアとギルと過ごしたところで なにも問題はないのじゃ〉

「……アウリュム殿、貴方も百五十年ぶりに再会出来た妹と、離れたくはないでしょう!? もっと一緒に居たいですよねっ!?」

〈恩人よ 我は愛しい妹のしもべに過ぎぬのだ クリュスタルムが望むものすべてを叶えてやることが この兄の使命だ

 妹が望むならば 帰国までの残り時間は恩人達に譲ろう〉

〈兄上 ありがとうなのじゃ!!〉

〈お前の喜びが我の喜びだよ クリュスタルムよ〉

「くそっ!! くそっ!! 妹を甘やかすな、台座のくせに……!!」


 あてが外れたギルが、珍しく暴言を吐きながら頭を抱えている。

 私はポンッと夫の肩を叩いてあげた。





 その日以降、私は連日登城してはクリュスタルムをアウリュム達に引き合わせ、本国から駿馬で送られてきた美少女達の肖像画を査定するトルスマン皇国の大祭司達に付き合い、そしてクリュスタルムを連れて夕方に帰宅する……というスケジュールになった。


 ギルも最初の二日ほどは付き合っていたのだが、『長期休暇中のはずの魔術師団長が登城している』という噂が魔術師団まで伝わってしまったらしく。

 「ペイジ副団長がちっとも帰って来なくてぇぇぇ!! ロストロイ団長、急ぎの仕事の確認だけでもお願いしますぅぅぅ!!!!」と泣きながらやって来た部下達に連行されていってしまった。

 どう考えても確認だけで終わってない模様。可哀想に。


「僕、将来子供が生まれたら、育児休暇を二年くらい取ろうと思います……」

「まぁ頑張れ」


 王城の廊下で半分死んだ目をしながら私に抱きついてくるギルの背中を撫でようとして……、やめた。

 ギルの背中には、現団員だという青年(骸骨のように頬がこけている)と中年男性(頭頂部が風前の灯)が泣きついていたからだ。すごくすごくむさ苦しい。


 彼らはギルの発言を聞いて、「なら団長、俺、今すぐ婚活パーティー行って結婚して子供作るんで、育児休暇二年くださいッス!」「俺の時は育児休暇二週間しかくれなかったじゃないですか、ロストロイ団長……っ!」と喚いていた。

 今の団員も愉快そうな感じの人ばかりだなぁ。


 そして二人によって、ギルが魔術師団の建物がある方向へと引きずられて行く。

 その姿を見送るのが、なんだか毎日の日課になってきてしまった。


〈さぁオーレリアよ! 兄上達のもとへ参ろうぞ!〉

「そうだね、クリュスタルム。あ、すいません、案内を中断させてしまって。トルスマン皇国の方々の元までお願いします」


 私が声を掛けたのは、初日からずっと案内やお世話を担当してくれている王城の侍女だ。

 素朴な三つ編みを背中に流している彼女は、戸惑った表情でギルを見つめていたが、私の言葉にすぐに「はい。ご案内いたします」と返事してくれた。

 ギルのやつ、女性嫌い設定が長かったみたいだからなぁ。この侍女さんも、今までとは違う様子のギルを見て驚いているんだろう。

 なにせ彼女、初日からギルの様子に「え??」という表情を何度も浮かべていたし。色々予想外だったのだろう。


 侍女のあとを付いていけば、本日も無事にアウリュムと大祭司達が待ち構えている部屋へと到着した。

 部屋の中央にあるテーブルには、本国から新しく届いたらしい肖像画が山のように積み重なっている。


〈今日も女神のように美しいよクリュスタルム お前の為にまた新しい肖像画を届けさせた

 気に入る者がいれば何人でもお前の巫女姫に選びなさい お前に選ばれることは トルスマン皇国の民ならば永遠の名誉に等しい〉

〈ありがとうなのじゃ兄上!〉


 クリュスタルムはアウリュムの上に設置されると、祭司達に指示を出し、肖像画を見やすいように掲げさせる。


 さて、今日は新しい巫女姫が誕生するのかな。


 私は先程の侍女が淹れてくれたお茶を飲みながら、部屋の隅にあるソファーでのんびりと寛ぐことにした。


別作品ですが、『転生スケベ令嬢と、他人の心が読める攻略対象者』が第3回集英社WEB小説大賞金賞を受賞し、書籍化が決まりました。

タイトルに偽りのなさすぎる幼馴染みもののラブコメとなっております。少年誌レベルの下ネタ耐性がある方は、ぜひ読んでみてやってください。

ヒロイン・ノンノはオーレリアよりあほの子で、ヒーロー・アンタレスはギルよりしっかり者の金髪美少年です。


そしてノンノとアンタレスを応援してくださった方々、本当にありがとうございました!

ノンノとアンタレスをこれからもよろしくお願いいたします!

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