コミック4巻発売記念SS(クリュスタルムとアウリュムの未来)
本日コミック4巻発売です!!!
何卒よろしくお願いいたします!!!
「オーレリア、わかりましたよ!!!」
「突然何がわかったんですかね、ギルよ?」
本日も城の一室で開かれていた巫女姫採用会議は、クリュスタルムが〈候補者すべて不採用じゃぁぁぁ!!! 妾に相応しいのは 美しい心根が一目で見てわかるような澄んだ瞳と 己を律する強さを表す抜群の肉体美を持った 絶世の美貌を持つ生娘か生息子なのじゃぁぁぁ!!!〉と蹴散らして終了した。
相変わらずクリュスタルムは暴君のように強欲だなぁ。
とはいえ、会議の時間自体はかなり長引いてしまった。クリュスタルムはトルスマン皇国が用意したたくさんの姿絵や履歴書をじっくりと吟味していたので。
もうそろそろ魔術師団からギルがやって来て、一緒に馬車で帰宅する時刻だ。
ギルを待ちつつ、のんびりしていよう。
私はクリュスタルムと、〈すべて我が妹の望みどおりにしろ 早く新たな候補者を用意するのだ〉と神官たちに発破をかけるアウリュム、そしてお世話係のクラウス君と一緒にお茶を飲んで過ごしていた。
すると、冒頭のようにギルが駆け込んできたのである。
ギルはなんだかとっても古めかしい書物を、私によく見えるように両手で掲げた。
「こちらは団員が勧めてくれた東洋の書物なのですが。オーレリア、この頁をご覧ください。ここの記述に……」
「ごめん、ギル。私、東洋語は読めない」
示された頁を覗き込んだが、象形文字のようなものが縦書きでびっしりと書かれていて、まったく読めなかった。
「あぁ、申し訳ありません。そういえばオーレリアは古代魔術式の解読は得意なのに、大陸語以外は苦手でしたね」
「古代語は大陸語と言語の系統が繋がってるから全然平気だけれど、東洋語はねー」
「系統で言えば孤立語ですもんね」
「読めちゃうギルがすごいんだよ。よっ、大天才ギル君!」
「ありがとうございます。貴女に褒めていただけるのは僕の人生の喜び」
〈お前たち 妾や兄上が目に入らんのか? 二人だけでイチャイチャ会話を楽しみおって! 妾たちも仲間に入れるのじゃ!〉
というわけで、ギルが私たちに本の内容を要約してくれた。
「東洋には、長い間大切にされた物には魂が宿り、自ら変化する付喪神という存在が生まれるそうなんです。人の姿に顕現することもあるのだとか」
「へぇ~、すごいね! 国全体で魔力濃度が高いのかな!?」
「魔力濃度に関しては記載がないので、そこは東洋へ行ってみなければわかりませんが。つまり、クリュスタルムやアウリュムは、この付喪神という存在と同等か、それに近しい存在なのではないかと思ったんです」
「すごいギル! 大発見じゃん!! あっ、だから部屋に入ってきた時に『わかった』って言ったんだ!?」
「はい。そうなんです」
当のクリュスタルムとアウリュムは、テーブルの上でいつも通りキラキラと輝いていて、〈なるほどのう 妾たちに似た存在が東洋にもおるのじゃな〉〈似たような存在だろうと 我が妹ほど素晴らしく高貴な存在はいない〉などと話している。
「クリュスタルムたちも、自分たちがどうしてそのように在るのかわかっていなかったんだ?」
〈長い年月をかけて自我が生まれたのは覚えているんじゃが 何故 自我が生まれたのかは答えを知らんかったな〉
〈我々が自我を持った頃には 偉大なる父上もすでに故人であった 答えられる存在は周囲にいなかったのだ〉
「そっかぁ。理由がわかって良かったねぇ」
〈うむ!〉
こちらの会話を見守っているクラウス君も「アウリュム様、良かったですね」と、穏やかな笑顔を浮かべている。
のほほんとした空気だ。
そんな空気を切り裂くように、ギルがテーブルに両手をバンッと置いた。
「一番重要なのはそこではありません!!! こいつらが人の姿に顕現する可能性があるということです!!!」
ギルは力説した。
「僕は水晶の内部で、幼い少女の姿をしたクリュスタルムと会っています。つまり!!! こいつらが自分で人の姿を取れば自分で自分を世話することが出来て、巫女姫の必要性はなくなります!!! オーレリアに纏わりつく必要もなくなるということです!!!」
「そっ、そっか!?」
手足がないから自分一人で移動も出来ず、外敵から狙われても逃げられず、自分の本体を磨くことも出来ないクリュスタルムだが、人の姿になれるならすべて解決出来る。
ギルの説明に、クラウス君は「えっ!? じゃあ俺はリストラ……ってこと!?」と涙目になっているけれど。
〈確かにのう 妾は妾の世界では人の姿になれる 兄上も兄上の世界では人のお姿じゃ〉
クリュスタルムが頷いた。
……しかし。
〈だが 外側の世界で人の姿になれたことはまだないのじゃ 妾が東洋の付喪神とやらに近いものなら いずれ出来るやもしれんが それは当分先じゃろうな!〉
「なっ、なに!? 試してみなければわからないだろう!?」
〈今は無理だと自分自身で感じておる だいたい自我が芽生えたのだって長い年月をかけたのじゃぞ? そう簡単に変化など出来んのじゃ〉
「いいから試してみるんだ!! やる前から諦めるな!!」
〈ふはははははは! ギルよ 期待させて申し訳ないのぉ〉
「く、くそぉぉぉぉ……っ!!」
まぁ、そんなものだよねぇ。東洋の国とは空気中の魔力濃度が違うんじゃないかな。
私は地面に膝をついて項垂れる夫の様子を見ながら、半笑いを浮かべる。
「ちなみにアウリュムが人の姿になると、どんな感じなの?」
〈それはもう! 絶世の美少女な妾によく似て 兄上は絶世の美少年なのじゃ!〉
「へぇ~。見てみたいなぁ」
数百年後には、人の姿に顕現出来るようになったクリュスタルムとアウリュムが、お互いのお世話をし合う日が来るのかもしれない。
その頃には巫女姫制度も廃止されるのだろうな、と思った。




