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【コミック3巻6/14発売】前世魔術師団長だった私、「貴女を愛することはない」と言った夫が、かつての部下(WEB版)  作者: 三日月さんかく
第6章

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106:ロストロイ領



 ロストロイ領に出発する前に、私とギルはこんな約束をした。


「……オーレリア、視察の途中に教会で二人だけの結婚式をしませんか? 神父様にすでに話は通してあるので、短時間だけなら本堂を貸し切ることが出来ます」

「湖の真ん中にある教会のこと? 海に繋がっている関係で、潮の満ち引きで道が出来るっていう」

「はい。そうです」


 王家の寄付金のおかげでとっても綺麗な教会で、結婚式を挙げたがるカップルがたくさんいて、そのおかげで縁結びの地としても有名なんだっけ。

 そういうカップルに人気の場所って、なんだかギルは好きそうだもんな。相手が私限定でロマンチストなんだよなぁ。


 まぁ、以前から結婚の誓いをやり直すことは決めていたし、場所もギルが文句ないのなら、私はそれでいいや。


「いいよー。じゃあ、クリュスタルムの分身で作ってもらった結婚指輪も持って行かなくちゃね。あれってどこに保管してたっけ?」

「こちらにありますよ。僕が肌身離さず守っていました」


 ギルはそう言って、ジャケットの内ポケットから天鵞絨張りの指輪ケースを取り出した。

 わぁ、四六時中持ち歩いていたのか、ギルよ。

 でもクリュスタルムの分身だしな。金庫に入れたら可哀想だよねぇ。

 それにしてもギル、クリュスタルム本体より分身のほうが仲いいじゃん。


 なんだか温かそうな結婚指輪を眺めると、またしても『居場所探知魔術』が組み込まれていることに気が付く。

 結婚直後にギルから焔玉のドデカイハートのピアスを貰って、仕込まれていた『居場所探知魔術』に気付いた時、ギルの愛の重さにドン引きしたけれど。今では特に何も思わなくなっているな。あぁ、これにも仕込んだんだねー、ってくらいの気持ち。これが慣れか。


「……あ、でも、今回はギルの結婚指輪にも『居場所探知魔術』がかけられてるんだね?」

「さすがはオーレリア。もう気付いてしまわれましたか」


 ギルはちょっと照れ臭そうに笑う。


「貴女をどんな瞬間も不安にさせないために、いつでも僕の居場所を把握していただこうと思いまして。まぁ、夫として当然の配慮ですよ」


 ギルが普段から私を熱烈に愛している言動を繰り返しているので、微塵も不安になりようがないのだが。

 まぁ、これも夫からの愛だから受け止めておこう。


「ありがとう、ギル! 二人だけの結婚の誓いが楽しみだね!」

「はい、オーレリア!」


 こうして私とギルはロストロイ領へと旅立った。





 ロストロイ領は元王家直轄地のため、王都からほど近く、街道もしっかりと整備されてあった。

 そのため、馬車で二日ほどの旅でロストロイ領に入ってしまった。


「これだけ近い場所にあるのに、なんで全然領地に行かなかったんだ、ギルよ?」

「逆にこれだけ近いと、領地で何か問題があればすぐに王都まで連絡が来るので、わざわざ見に行かなくても平気だったんです……」


 ギルが目を逸らしながら言う。

 まぁ、それだけ領地経営が安定しており、魔術師団を優先出来たのだろう。


「領地が安定してるのはいいことだけれど、どんな人が代官をしているの?」

「はい。ジョージの双子の兄です」

「ジョージの双子の兄!!? ジョージって双子だったんだ!!? 知らなかった~!!!」


 ギルの話にびっくりしたけれど、長年ロストロイ魔術伯爵家で執事をしているジョージは、落ち着いていて気品があり、気配りが完璧で忠誠心も篤く、素晴らしい使用人だ。

 その双子の兄がロストロイ領でギルの代官として領地経営をしているのなら、確かにすごく安心な気がする。


 馬車が領主館に到着すると、噂のジョージの双子の兄が私たちを待ち構えていた。


「おかえりなさいませ、領主様。そしてお初目にお目にかかります、オーレリア奥様。ロストロイ領で代官を務めております、フレッドと申します」


 わぁ! 本当にジョージと瓜二つである! 銀色の髪と青い瞳で、知的そうな顔つきの六十代くらいの男性だ!


「オーレリア・バーベナ・ロストロイです。初めまして、フレッド! ジョージにはいつもたいへんお世話になっております! 今回の滞在期間は短いけれど、ロストロイ夫人として末永くよろしくお願いします!」

「ふふふ、こちらこそ何卒よろしくお願い申し上げます」


 笑い方まで弟と同じフレッドに案内されて、領主館の中に入る。

 以前は王族の別荘だったため、ものすごく大きくて煌びやかだ。ギルはとっても良いものを褒賞として勝ち取ったなぁ~。

 なぜか私の思考を読んだギルが、「もともとこの領地を貰うはずだったのはバーベナなので、すべて貴女のものですよ」と優しげに微笑んだ。


「オーレリア、今日は領地に着いたばかりですから、館内で休んでください。視察は明日にしましょう」

「うん。わかった。ギルはどうするの?」

「溜まっているはずの領主の仕事をしてきます」

「そっか。私の領地のために頑張って!」


 着いて早々たいへんだな、ギルも。


 フレッドを伴って執務室へ向かうギルの後ろ姿を、私は見送った。


ジョージときたら、兄はフレッドですよね^^

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