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29.呼び出し



 あのあと。

 夕暮れと共に、俺たちは人々のざわめきに囲まれる。


「悪魔か!?」「反逆者だったのか!?」「いや、救ってくれたんだろ!?」「あれ冒険者のドリーだよな?」「まわりの幼女かわいくない?」「踏んで欲しい」「罵倒してほしい」「貢ぎたい」「匂いを嗅ぎたい」「孫の嫁にきてくれんかのう……」「あいつダンジョンで死んだとか言われてなかったっけ?」「いやレオス裏切って、一人だけ帰って来たんだろ?」「幼女の小さなおててはぁはぁ」「膝裏がえっちだよね」「軍の見解では、幼女は非常にえっちなのだと」「あぁ。幼女が三人そろってえっちなのは間違いない」「つまり幼女に囲まれてるドリーもえっちだということ?」「一縷の隙も無い完璧な理論ですね」「とりあえず通報しておこうぜ」「大丈夫だ通報しておいたぜ」


 そんな調子で、ざわざわと言葉は踊っていく。

 中には、魔法を操り、剣を振るい、竜を駆るその姿はが、まるで伝説にある竜騎士(ドラゴンライダー)のようだったと言い出す奴も現れる始末で。


「いやそんなんじゃ無いから。なんだかんだ、高いところって怖いから」

「楽しそうだったぞゴシュジン」

「アレはハイになってただけというか何と言うか」


 思い出しただけで胃のあたりがひゅっとなる。

 概念的に落ちることは無かったとはいえ、万が一を考えると恐ろしい。


「――――で、何があったんですかね? ドリー・イコンさん」

「それは……、こっちが、聞きた……ぐぅ…………」


 激闘を終えた後、ギルドへと報告に向かう。しかしながらその途中、俺は完全にダウンしてしまい、丸一日寝込んでしまった。

 目覚めたのは次の日の夕方で。そこから夜に至るまでのこの六時間、ずっと喋りっぱなしだ。イレギュラーな事態を伝えていると、たちまちギルド側の顔色が変わっていき、糾弾は謝罪と補填に変わっていった。


「本当に申し訳ない。こちら側の調査が、あまりにも不完全でした……!」

「い、いやいや! 顔を上げて……!」


 今回の騒動を紐解いてみれば。

 結局落ち度は、ギルド側にあったようだった。

 上級ダンジョンが発生したはいいものの、ランクが不確定なままに依頼書を登録。

 本来ならば……数日前にギルドにてベルが倒してしまった、あのルーダス一味がこのダンジョンに挑む手はずとなっていたらしい。

 ……やっぱ落ち度は俺たち側にもあるじゃねーか!

 まあただ、ベルに鎧を砕かれて瞬殺(殺してはいないが)されてしまったルーダスらが、あのダンジョンに足を踏み入れたとして、生きて帰ってこれたとも思えないので、そこは運が良かったとも言えるんだけど。


「とにかく…………………………あまりにもきつかった」

「ゴシュジンしなしなだな」

「フニャフニャですわね」

「かたくしてあげたいね」

「……言い方考えようね」


 ともかく。

 神経参ってるのです。

 だから……、


「だからこんな封書に、目を通せる自信が無い……!」


 部屋に帰ってみると、一通の手紙が届いていた。

 それも表には、『出来るだけ早く見るように』という旨が書かれており、どうやら相当緊急のもののようである。


「仕方ないな……」


 封を開けて見てみると、それは魔法屋からの呼び出しだった。


「魔法屋から……? 珍しいな。何だろ」


 クエストに出る前、飛翔の加護含む、様々な高額アイテムを購入した。まさかその代金が足りなかったとかの督促だろうか。正直これ以上お金は払えないですよ、はい。

 おそるおそる中を見てみるとそれは、遠隔対話魔法の連絡が入っているという知らせだった。


「おにいちゃん、遠隔対話魔法ってなあに?」

「あぁうん。離れたところにいても、特定の魔法波に乗せて、対象と話をすることができるんだ」

「魔法波?」

「俺も詳しい原理は分かってないんだけどな。とにかく……、街の魔法屋同士で話せたり、個人が持ってる魔法石に波を飛ばしたりと、色々方法はあるんだ。

 まぁそのためには、別途、上級者用の高いアイテムを消費しなくちゃいけないんだけど――――」


 説明しながらも書面を読み進めてみる。すると対話者は、誰あろう、元パーティリーダーのレオスだった。


「ん……? あ、やべ、マジか」


 そういえばと思いたち、古い方の冒険者バッグの中を漁る。そこには、長年使っていなかった遠隔対話用の魔法石に、レオスからの呼び出し記録が残っていた。


「この間のダンジョンに行くときに、丸っと違うバッグに変更したからな……。前の荷物に置き去りにしちまってたかぁ」


 しかも使う癖がついてなかったから、遠隔(略)石のことなんてすっかり忘れてた。

 飛翔の加護とかと同じで高価だから、『使用(しょうひ)する』という選択肢が頭から抜けていたのである。


「高級アイテムは持ってないと思ってたからなぁ。だからこそ、魔法屋で色々買い込んだんだけど」


 ……宝の持ち腐れとはまさにこのことだ。

 まぁどのみち、アイツらの居るダンジョンとは離れているからな。魔法波が偶然キャッチ出来ただけで、取ってても対話は出来なかったと思うけど。


「なぁゴシュジン。

 ゴシュジンの石の方に対話の意志を飛ばしても、意味ないんじゃないのか?」

「あぁいや……。同じダンジョン内くらいなら、相当階が離れたりしない限りは話せたりするんだよ」


 あれから十日あまりが過ぎたくらいか。

 レオスはまだ、俺が同じダンジョン内にいると思っていたのかもしれない。

 けれど繋がらないものだから、街の魔法屋の方にかけて、呼び出しをしている……と。そんなところかな。


「魔法屋は、めちゃくちゃ強力な魔法石が設置されてあってさ。

 ナグウェア地方全域で、遠隔対話が出来るんだ」


 その分めちゃくちゃ石を消費するけどな。

 一分対話するのに、通常の五倍くらいの量使うんじゃ無かったっけ。


「しかし……、そんなにまでして、俺に何の用だ?」


 悲しいかな。俺の力なんて、もう必要ないと思うんだけど。


「というか、まだあのダンジョンにいるってことか?

 あと三日か四日くらいで最奥だと思ったんだけどな」


 まぁあくまで俺の目算だから、確かなことは言えないが。

 しかし仮にそうなってくると、え~……、のべ十一日も同じダンジョンに居ることになる。そうなってくると精神的にきつそうだな……。


「仕方ない。面倒だけど行ってくるか」

「義理堅いですわねぇ旦那様は。自身もお疲れでしょうに」

「まぁ……そうも言ってられないしな」


 ルーチェの言葉に、「それに」と付け足して俺は返す。


「別にレオスが心配なわけじゃないさ。ここの魔法屋には世話になってるからな。行ってやらないとさ。この案件でずっと起こしとくわけにもいかないだろ」


 違う街には昼夜問わずやってる魔法屋もあるらしいけど。

 うちの街の魔法屋は、夜はぐっすり眠るじいさんだ。この時間まで起こしておくのは、あまりに酷すぎる。


「てなわけで、ちょっと行って――――え、着いてくるの?」

「こんな夜更けに、旦那様を一人で向かわせられませんわよ」

「レオスって、前に酷いこと言っておにいちゃんを追い出した人でしょ?」

「何か言われたら、ベルが言い返してやるぞ。場合によっては殺す。遠隔でもどうにかして殺す」

「……大丈夫だよ」


 あとベル、むやみやたらと殺そうとしない。

 お前(ダーク・)抱き(トランス)してねぇだろうな?


「ただまぁ、そうだな。

 俺とパーティ組んでるんだもんな、お前らは」


 心配してくれるのは素直に嬉しい。

 それじゃあ、護衛に着いてきてもらおうかな。


「よし行くか。終わったら軽くじいさんに紹介するよ」


 言って俺は三人を連れ、もう一度外に出た。

 街の灯りはまだ点いているとはいえ、どことなく夜が深いのが気になった。








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