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27.雑に覚醒の話(真)



「うぉ、ぉぉぉ、ぉぉぉぉ……ッッ!! は、はやい……! こわい……!!」

『大丈夫だぞゴシュジン! 振り落とされることは、絶対(・・)無いからな!』

「そうだとしても、こわ、い……!!」


 あれから三分後。

 現在俺は、夕暮れの空を舞っている。

 舞っているというか――――超速飛行をしている。


「空気は痛くないけど、た、ただただ怖いぞこれ! お前いつもこんな風景を見てるのかよ!」

『慣れれば楽しいぞゴシュジン! あはは!』

『ヒナたちもついてるからね!』

『根性ですわ!』

「……ッ!!」


 俺の今の状況を説明すると。

 ドリー・イコンは今。

 魔剣・ヴァルヒナクト、

 魔竜・ベルアイン、

 魔法・ルーチェリエルを、装備(・・)していたのであった。


 以下、回想。

 アンド、超絶テキトーな説明だ。



『ベルたちを……、装備する? 乗るだけじゃなくて?』

『そうだ! ガイネンとして、一体化しよう、ゴシュジン!』

『???』

『さっそく入ってみますわよ! ――――えい!』


 言うとルーチェは、黄色い光の玉となり、俺の身体の中に入ってきた。


『おわぁ!? な、なんか……、ルーチェを俺の中に感じる……!?』


 傍から聞くとヤバイやつの発言みたいだがともかく。

 なんか、俺の中にもう一概念入っている感じがして……、とてもその、異物感がすごい。


『いいなあルーチェちゃん!

 おにいちゃん私も! 私も(つか)って(つか)って!』


 ぽん! と可愛らしい音とは裏腹に、邪悪なオーラを纏った魔剣に変身するヒナ。

 言われるがままに俺もそれを持つと、ただ持っただけではなく、この魔剣が俺の一部であるかのような概念が入り込んできた。


『な、なんだ、この感覚?』

『ゴシュジンはベルたちと繋がったって言っただろ? だから、こうやってベルたちを、支配下に置くことが出来るんだ!』

『支配下?』

『簡単に言えば、レーゾクだ。あれ? ドレイだっけ?』

『所有者でしてよベル』

『そうだよおにいちゃん! 別名せいどれ――――』

『ヒナさんそれ以上はいけない!』




 以上。説明パート終わりだ。


「…………あれ!? 全然説明されてなくない!?」


 俺が幼女に危険な単語を言わせないだけで終わってしまった。

 その後も、竜に姿を変えたベルにまたがって、飛翔しただけだしな……。


「えー……、つまりまとめると。

 今お前らは、俺の装備や能力、はたまた『概念として一体化』しているため、俺の意のままに動く……ってことでいいのかな?」

『おおまかにそんな感じだよ!』

『だいたい合ってますわ!』

『難しいことはよくわかんないぞ!』

「不安しか生まれなっったですね!!」


 ただ、とにかくだ。

 今は未知の力でも何でも良いから、使っていけるものは使って行こう。

 ぶっちゃけ手段を選んでいる時間はないわけだし。

 それに――――


「それに、お前らの事。信用してるからな」

『おにいちゃん?』

「何が何だかよくわかんないけど――――お前らが、俺の力になってくれるはずだから。

 ……だから、お前らの力を信じてる!」


 凍てつく空気は。

 決意に後押しをしてくれる。


「改めて三人とも、よろしく頼む。

 あの街を守るため、力を貸してくれ」

『うん!』『おう!』『ええ!』


 三者三様の返事を胸に、

 魔竜(ベル)を駆り、魔剣(ヒナ)を携え、魔法(ルーチェ)を纏う。


 俺は。

 今から見るこれからの光景を、一生忘れることは無いだろう。

 人生のターニングポイント。

 もしくは、折り返し地点からのやり直し。

 ドリー・イコンという人間が、この先どうなっていくかを決定づける、激戦が幕を開けた。







 街に災いが降り注ごうとしていた。

 鮮やかな夕暮れが迫る街の午後。

 山間の向こうから、大量の石像モンスターが飛来する。

 それを、街の人々は、どんな目で見ていたのだろうか。

 当惑。竦み。怯え。――――恐怖。

 混乱は狂騒を呼び、混濁の渦を巻き起こす。

 けたたましく鳴くガーゴイルの声が、追いかける俺の耳にも届いた。

 ――――だから。


「『ルーチェリエル』ッ!」


 左手に魔力を収束させ、一気に放出させる。

 すると目の前の空間は、神聖なる光と共に、瞬間昼間かと見紛う明るさに見舞われた。

 厳密に言えばルーチェリエルは最上位の防御(・・)魔法だ。今放ったこの魔法は、ルーチェの魔力を使って、魔力の塊を飛ばしただけに過ぎない。……のだが、それでこの威力は凄まじすぎる。


『イイ感じでしてよ、旦那様♪』

「お、おう! ……強い魔法使うのって、こんな感じなんだな」


 器用貧乏タイプで生きてきたから、色んな種類の魔法を使えはすれど、大きな一撃を放ったことは無かった。

 なんつーかこう……、毛穴が開いていくというか、血管が広がるというか……。


『デトックス効果というヤツですわね?』

「絶対違うと思う!」


 最上位の光魔法を放つ健康法が、あってたまるか。


「とにかく……。よし、次に行くぞ!」


 はじけ飛んで行くガーゴイルらの残滓を目で追いつつも、次の集団へと目をやりベルを駆る。

 街の混乱は加速する。が、中には俺の姿を発見した奴らもちらほらいるようだ。


「なんだアレ!?」「人……、冒険者か?」「軍の人なんじゃないの!?」「いや、軍の人間はまだ出動していないだろう?」「アレもモンスターたちの親玉か?」「速くてよく見えないな」「ドラゴンじゃないのかあれ!?」「魔法打ってたぞ! 大丈夫なのか!?」


「……なんか、余計に混乱させている気がするが」


 まぁ今は仕方ない。

 説明や事態の理解は、この件が収束した後、存分に行おう。


「行くぞ! ……ベルアイン!」

『おう!』


 駆る魔竜へと指示を送る。

 ガーゴイルの集団の真ん中へと突っ込んで行ったかと思うと、ベルはその大きな口からたちどころに炎を吐き出し、凶悪な石像たちを燃やし尽くした。


『いくぞォォォ!!』


 咆哮と共にがぱりと口を空ける。

 一つ。また一つと、石像は粉々に噛み砕かれていき、ぱらぱらとその残滓は中空を舞った。


『大勝利だ、ゴシュジン!』

「よくやったぞ!」


 首を曲げてこちらを振り向くベルに、俺は親指を立てて答える。

 くるると心地よく喉を鳴らし、魔竜は次のターゲットへと視線を移した。


『ゴシュジン! アレ!』

「うお、まずい!」


 現在ガーゴイルたちは、街の上空を漂っている状態だ。

 だからまだ街の人たちに害は出ていないのだが……、ここだけは話は別だ。

 周囲を見渡すための鐘付き塔だけは、他と比べて背が高い。

 ギリギリまで見張っていたであろう軍の男性が一人残っていて、今にも石像の集団に襲われそうになっていた。


「――――間に合え!」


 ベルに指示して空を駆ける。

 しかしそれでも間に合わない。狂爪は、今にも彼の身体を引き裂こうとしていた。

 魔法をぶっ放すと、鐘付き塔ごと吹き飛ばしてしまうからアウトだ。それに男性が無事だったとしても、残骸が街へと降り注いでしまうだろう。


『旦那様! 狙ってくださいまし!』

「狙う――――そうか!」

『コントロールはお任せを!』


 今の俺と、そしてルーチェなら出来るはずだ。

 意識を魔法に移し、大魔法『ルーチェリエル』を起動する。

 先程の、広範囲殲滅の魔法ではなく、一点狙い。

 超高威力の魔法を、細く、細く、練り上げるイメージ。

 熱。波。うねり。そして、ルーチェのコントロールを信じる。


「『発射!」ですわ!』


 一線。もしくは、一閃。

 細い糸のように空を切る大魔法は、うねりを上げて鐘付き塔へと発射される。

 街並みの屋根の旗を避け、塔の格子を避け、軍の男――――の、わずか数ミリ横を避け、その先にあるガーゴイルの腕を細く穿つ光の閃。

 神聖なる魔法に触れたが最後。

 その体を悶えさせながら、ガーゴイルは中空で灰と化して消えていった。

 そして第二波を食い止めるため、ベルの炎をまき散らす。

 鐘付き塔は無事守りきれたみたいだった。


「早く下に!」

「あ……、ありがとう! アンタ、冒険者か!?」

「おう。後でいっぱい報酬くれ! 無事でいろよ~!」


 安心させるための軽口を叩きつつ、俺は引き続きオフニーグルの街を旋回する。

 日は沈む。

 夜になると夜目が効かないこちらが不利だ。なので、そろそろ決着をつけなければならない。


「――――ヒナ、いけるか?」

『うん。任せて、おにいちゃん』


 いっぱい。

 役に立つからね。と。


 可愛らしくも頼もしい声が聞こえて。

 魔剣の嘶きが。

 聞こえる。






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