表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/32

26.突然の襲来



 程なくして、俺はヒナたちの元へと駆け寄る。

 三人はすっかり元のテンションに戻りつつあり、いつものようにこちらを見上がてくれていた。


「おにいちゃん、ありがとう」

「いやいやこっちこそ。……頑張ったな、ヒナ」

「……えへへ」


 ヒナはぎこちなく笑いつつも、こちらへと歩み寄る。

 眼鏡の奥と完全に目が合った瞬間、そういえばと唐突に思い出した。


「そういえば魔力(えいよう)与えておかないとだよな……。みんな、腹減っただろ?」

「あ、そうだね。そう言えば私たちは、それが目的だったんだっけ」

「そうだったな! 思い出したらお腹減ってきたぞ!」

「優雅に舐め取らせていただきましてよ?」


 うん。……まぁルーチェのセリフはあまり意識しないようにしておこう。

 そうして。いつものように、日常会話へと戻ろうとした――――直後だった。

 ズズズ……! という、地鳴りにも似た振動が、フロア全体に響き渡る。

 空気を伝い、周囲の魔力がとてつもなく膨れ上がっていくのを感じ取った。

 三人娘も即警戒態勢にうつった。そのとき。


「ゴシュジン! なんだ、あれ!?」

「モンスターが出現しようとしている!?」


 ベルの声がした方向を見ると、ここに入った時と同じように、どんどんとモンスターが発生していた。

 しかしそれらは、全て同一個体だ。

 顕現したかと思うと、それらは硬質化した翼をばたつかせ、ダンジョンの天井へと飛翔していく。不気味な眼を光らせ、一点にどこかを見据えていた。


「アレは……、ガーゴイルか!?」


 翼を持つ石像のモンスターで、硬質化した爪と牙を持っている悪魔だ。

 俺も見るのは初めてでは無いし、体長は一体百六十センチ~二メートルほどと、大型の魔獣と比べると大きくはない。……が、


「数があまりにも多すぎる……」


 この部屋はとても広い。つまり、天上の面積もその分だけ広いということで。

 そんな天井面が完全に見えなくなるくらいまでに、びっしりと敷き詰められていた。

 そして奴らは、けたたましい鳴き声を一斉に発したかと思うと――――ダンジョンの天井をがんがんと叩き出した。


「な……!?」


 本来ならあり得ない事態が、巻き起こる。

 叩いた衝撃によるものなのか。はたまた違う要因なのかは分からないが……、ダンジョンの天井が、がらがらと崩れ去ったのだ。

 前提として、ダンジョンは砕けない。破壊されない。

 しかしこの場所は、イレギュラーだらけだ。

 過去に何度かあったという、ダンジョン内のモンスターが外に出てしまったという事件。もしかしたらその事件も、こういう風に起こったのかもしれなくて。


「…………えっと」


 赤い。

 夕日が俺たちを包む。

 そしてそれと同時。

 ばさり、ばさりと。ガーゴイルの集団は、ダンジョンの外(・・・・・・・)へと飛び去って行く。


「――――はっ、」


 久方ぶりの外気が、あまりにもな光景を目の当たりにして呆けてしまった俺の思考を、元に戻す。

 渡り鳥の群れが大移動をしているかのような光景で、それがどうやら良くないことであると、やや遅れて理解した。


「あ! まずい!」


 外の状況を把握するのが遅れたが、あの方向はオフニーグルの街方面だと思う。いや、仮にそうでなくとも、外を行く一般人に被害が出てしまう可能性もある。


「追いかけねえと! ……でも」


 どうやって!?

 あのガーゴイルたちはそこまで速度は出ていないものの、走りでは流石に追い付けない。


「つーかイレギュラー続きすぎる……」


 過去にも、ダンジョンの外にモンスターが漏れ出てしまったケースはあるらしい。

 そのときは確か、散り散りになったモンスターを掃討するため、軍が動いたとかなんとか……。

 俺にそんな働きが出来るとも思えないし――――


「旦那様! 追いかけますの!?」

「あ、あぁ。まずは追わないといけないな。だけど……」


 手段が無いんだよ手段が。

 ダンジョンはすでに、完全に消滅しかかっていて、元の草原地帯に戻りつつあった。

 あたりを見回すも、都合よく馬車などは無い。そもそもここにたどり着くまで徒歩なのだし、旅の行商人でもいない限り、人より早く走れる生物なんていないだろう。


「大丈夫だ! ベルなら追いつけるぞ!」

「いやお前だけ追い付けても……、え?」

「おにいちゃん。あのね、試してみて欲しいことがあるんだけど」

「ですわよ旦那様! さぁ! 今こそパワーアップのとき!」

「え」


 え。

 ――――え!?


 そうして。

 俺のプレートは、再びプラチナの輝きを見せることとなる。


 空気は強く、冷たく、厳しい。

 ドリー・イコンはこの日。

 英雄となった。……のかもしれない。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ