表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/32

22.たたかいのじょきょく!



 入り口から細い通路を抜けた先。俺たちは荘厳な扉の前に立つ。


「入ったときも思ったけど……、上級ダンジョンは、こんなに立派な場所になったりもするんだなぁ」


 入り口付近こそ洞窟だったが、途中から王宮の室内みたいな道が続いていた。

 今足をつけている場所も、立派な赤い絨毯の上である。まるで王族にでもなった気分で、ダンジョンの床だと分かってはいるけれど、ちょっとテンションが上がる。


「実際コレ。ある程度上質な布なんだよな……」

「じゃあこの布を持って帰ったら、高く売れたりするの?」

「いや、ダンジョンを構成している物質は、ほとんどが外気に触れると消滅するんだ。

 持ち帰れるのは一部のアイテムと、時々モンスターを倒したときに残る、体の一部位くらいかなぁ」

「そうなんだぁ。じゃあ、モンスターが外に出ちゃってもすぐ消えちゃう?」

「なかなかそんなイレギュラーは起こらないみたいだけど……、過去に何件かあったらしいな」


 そのときの報告では、モンスターは普通に動き回っていたそうだ。

 まぁ魔物自体は野良のものもいたりするから、もしも混ざってしまってもなぁなぁになるのかもしれないけど。


「何にせよ生態系は不明だな」


 ダンジョン自体の解析は進んでいるみたいだが、未だに不明瞭なことも多い。

 城っぽいダンジョンでも何パターンかあるらしいから、魔王城を模したものというわけでもなさそうだし。

 まぁ尤も、魔王城自体は滅んでしまっているからこそ、不明瞭なままなんだろうけど。


「とりあえずだ。

 こういう、室内っぽいところで戦うのは初めてだろ? 気を付けていこうぜ」


 各々の返事を聞き、俺は荘厳な扉に手をかけ――――開け放つ。

 そこには……、とてつもなく大きな広間が展開されていた。

 階段も何もなく、奥に小さな扉があるのみ。

 天井は二十メートルくらいの高さで、壁には延々絵画が飾られている。そして天井部分に一つだけ、ぽつんと縮尺の小さいシャンデリアが設置されているのが見えた。


「……時々見る、カオスで不気味な夢の中みたいだ」


 ルーチェの調べによると、この先には小部屋がいくつかあるだけだという。

 そんな構造の城なんてあるわけがないし、本来ならここから更に、地下へと続いているはずなのだ。


「ロビーホールだけが立派な城なんて、普通はないからな……」


 まぁこれも、ダンジョン探索の醍醐味と言えばそうか。あり得ない風景に直面できる。それは確かに面白くはある。


「ただ……、面白がってもいられないよな!」


 ルーチェじゃなくても分かる。

 周囲というか――――すでにこの場所に。

 超大量のモンスター反応アリだ!

 魔力感知を発動して、二秒で検知された。それくらいに、密集している。


「……来るぞ!」

「「「……!」」」


 俺の声に、三人は臨戦態勢に入る。

 それと同時。

 ぐにゃりと、ぐにゃりぐにゃり、ぐにゃりと。

 次々に空間が歪んでいき――――大小様々、大量のモンスターが発生(・・)した。


「……う、ぉ、」


 言葉を失う。

 これ……は、ダメだろ。

 このクエストは、Aランクだったはずだ。

 正直俺も知識だけでしか知らないけれど……、これは、Aランクの範疇を超えている……。


「A+を飛び越えて……、Sランク級じゃねぇか!?」


 いや大事件すぎるわ!

 教本でしか見たことの無いような頂上級の魔物が、三体、四体、……それ以上。

 そしてそれらを囲むようにして、もう数えるのも無駄なくらいの魔物が、ホールに所狭しとひしめき合っていた。

 殺意高すぎるぞこれ! 人当たりの良いお姉さんのことだから、わざとでは無いのだろうけれども!


「これは……、い、一時撤退、を……」

「ガオッ!」

「ひぇ!?」


 顔の横の空間へ。

 突如として、ベルが嚙みついた。

 何事かと思ったが……瞭然。それは、矢だった。

 金属で出来た小さな弓矢を、ベルは口牙で咥えてキャッチしてくれいていた。放っておいたら、そのまま俺の頭蓋を貫いていただろう。


「ぷっ……! ハハッ! ゴシュジンに手ェ出しやがって……!」


 殺すと、歯をガチガチ鳴らして威嚇するベル。

 矢を射たであろう弓持ちのスケルトンが、こちらを見てカカカと笑う。

 その事実を目の当たりにし、あとの二人も魔力を上昇させた。


「おにいちゃん……、ダンジョンって、概念的に壊れないんだよね……」

「あ、あぁ……。そのはず、ですね……」

「じゃあ、いくら暴れても問題ありませんわね……!」

「そうだねルーチェちゃん。いっぱい殺そうね……」


 ……おぅ。

 変なところに火を着けちまったみたいです……ね?


「旦那様には、光魔法(わたくし)を張っておきますわ」

「お、……サ、サンキュ……」


 一瞬きらりと身体が光ったかと思えば、俺の身体の周りに、三重の透明魔力が現れる。


「わたくしが死なない限り、その防壁は絶対に砕かれませんわよ。ご安心を」

「そ……、そうなのです、か?」


 いつものテンション高めの声ではなく、静かに響き渡る声でルーチェは言う。

 やべぇ~……。みんな魔力――――というか、殺気が高まってやがる。

 もしかすると。

 こいつら、あのモンスター群にも勝てちまうんだろうか……。


「ま、待て待て。相手は下手すると、一体一体がS級レベルなんだぞ!? 俺、お前らとまだ別れたくないんだけど!」

「なんだよゴシュジン。照れるぞ」

「嬉しいこと言ってくださいますのね、旦那様」


 ベルは中腰体制を。

 ルーチェはツインテールをふぁさりとかき上げて。

 言った。


「それでもベルたちが負けることは」

「絶ッ対ッ、あり得ませんわッッ!!」


 言葉を言い終わると同時。

 彼女らは地を蹴って。群れへと走り去って行った。

 戦いが、始まってしまう。


「……おにいちゃん」

「ん……?

 ヒ、ヒナ……。大丈夫か?」


 穏やかに。けれどどこか低く響く声に、俺はおそるおそる声をかける。

 目の前のモンスターたちよりも、今はお前らの殺気の方が怖い。


「私……、私も……、絶対おにいちゃんの役に……」

「え? な、何?」


 何だろう。ヒナの様子が、少し変だ。

 いや。一緒に居るようになってそんなに経っていないので、「どこが」と言われると言葉に詰まるんだけど……。


 それでも何か。

 危険な――――ひどく、脆い気が、する。


「ヒナ……?」

「行ってくるね、おにいちゃん」


 言葉を遮るように、いつも通りの、明るい笑顔を向ける彼女。

 俺の気にしすぎ……の、はずはないけれど。

 でも、俺が気にかけてどうなる問題でもない、か……。

 だったら、やれることは一つだな。


「お、おう。気を付けてな!」

「うん!」


 俺は。

 安心して送り出す。

 自分の身の安全は、自力(とルーチェの加護)でどうにかする。それくらいだ。


 そうやって、一陣の風は去っていき。

 ――――三極の戦いが、始まった。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ