表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/32

21.ダンジョン説明、ちょっとだけ



「ついたねおにいちゃん」

「だな。ここが今回の、クエスト場所だ」


 街で受付してから二時間。

 俺たちはハマンマ洞窟へと到着した。


「あのバシャっていうの、遅かったな。

 ベルならもうちょっと速く着けたぞ」

「あぁ……、お前らはもっと速く移動できそうだよな……」


 俺がついていけないからなぁ。どうしても従来通りの、馬車や徒歩での移動となってしまう。


「抱えてもらうわけにもいかないしなぁ」


 まぁ俺一人くらいなら抱えられるんだろうけれども。

 体格差がありすぎるから、たぶん抱えられてる俺の方が耐えられない。


「ならゴシュジン、ベルの背中に乗るといいぞ!」

「お前の背中に……?」

「あぁなるほどですわね。

 あなたの背中なら、全員乗ることが出来ますわ」


 それはつまり……、ドラゴン形態ってことか?


「ベルはそこそこ大きな魔竜だからな! 三人分くらいなら乗せられるぞ!」

「そのサイズはそこそことは言わないのでは……」


 以前言っていたのは、五メートルほどダンジョンの通路より、余裕で大きいのだったか。

 それはもう、巨大生物の域なんだよな……。

 背中に乗って移動しているというよりは、巣に連れて行かれる哀れな人間って絵面になりそうだ。あぁでも、サイズは調整きくんだっけ?


「ま、まぁともかく……。移動手段はまた今度考えよう」


 何にせよ……、ダンジョンだ。

 やや賑やかな空気になってしまったけれど、今から挑むのはAランクのダンジョン。モンスターとはやり合える戦力を有してはいる――――かもしれないが、それ以外の部分で何が起こるか分からない。


「トラップとか、どういう類のものがあるか分からないからなぁ」


 俺がそうつぶやくと、ヒナが「はい」と手を挙げて質問してきた。


「おにいちゃん。どうして自然発生なはずのダンジョンに、そんな人為的な仕掛けが生まれるの?」

「あぁそうか。そこの説明が必要かもな」


 俺は一呼吸おいて説明を開始する。


「俺らが潜ってるダンジョンってのは、半分自然発生、半分人為的なものだからだ」

「そうなの……? じゃあ誰かが発生させてるってこと?」

「まぁ誰かというより、すでに滅んでしまっている魔王の魔力――――の残り香だな」

「残り香」


 そう。

 三百年前に倒された魔王だったが、死に際、世界中に魔力を振りまいて逝ったらしい。

 世界中に散った魔力は、当時の魔王城や、魔王に付き従っていた数多のモンスターを再現する、半人工的な建造物となり土地に顕現した。


「ニンゲンはそれを『ダンジョン』って呼称してるんだ。

 まぁ……ありがたいことに。それを使って商売させてもらってるのが、冒険者なんだけど」

「なるほどぉ。ニンゲンのダンジョン文化って、そうやって生まれたんだぁ」

「魔王なー……。ハナシには聞いたことあったけど、アイツ死んじゃってたんだなぁ」

「意思を持った魔法とか、よく分からない話ですわね」

「非常識なお話もあったもんだねぇ」


 非常識代表たちが何か言っている。

 まぁともかく。


「この間俺を連れ出してくれたダンジョンを例に挙げると……。

 中で発生していたモンスターたちは、魔王の息のかかっていたモンスターたちの再現体。途中にあったトラップなんかも、当時の魔王城及び、魔王の思考回路の一端を切り取って疑似再現されたであろう物体。……って感じらしい」


 仕掛け弓矢なんかがそれの最たるもので。

 あんなもの、自然物ではあり得ない。が、しっかりと弓矢として設置されている。


「たしか本来の魔王城に設置されてた弓矢は、炎属性纏ってたり、毒が塗られてたり、透明状態だったりとか、更に悪質なものだったとも聞く。上級ダンジョンには、そういったものも発生しているらしいから、今から潜る場所にもあるかもしれないな」

「注意しないとだね!」

「うん。警戒してくれると助かる」


 若干話が逸れたけど。

 そんなワケでダンジョン内には、そういった半人為的なものが設置されては作動・消失・また再生……と、そんなサイクルが巡っている。

 ダンジョンに『呼吸』なんて現象があるのもそのせいだ。


「まぁ大抵のトラップが、高濃度の魔力を帯びているからさ。魔力感知が使えれば、そこに罠があるってことには気づけるんだ」


 中には巧妙に隠されているものもあるし、高ランクのトラップなどは、俺なんかでは到底解除できないけども。


「だからこそ、上級ダンジョンに入るときは、相応のアイテムが必要になってくるわけだな」

「個人では賄いきれない事態も多いから、ということですわね?」

「その通りだ」

「だからゴシュジンは、いっぱい高いアイテム買ってたんだな!」

「その通りだ!」


 ……うん。何で上級者向けのアイテムって、あんなに高いんだろうね。

 正直今回のクエストの準備だけで、これまでため込んだ金の三分の二が消し飛びました。


「万が一ってこともあるし、命には代えられないから仕方ないけどな……」

「そうなんだねえ」

「何が起こるか分からないしさ。

 今は俺だけじゃなくて、ヒナたちも守らないといけないからな」


 こいつらも万能に見えて、出来ないことはあるだろう。

 それに状況判断が出来ないときは、俺がアイテムを使って乗り切る場面も出てくるかもしれないし。

 そうなったときのため、備えは必要なのだ。


「守ってもらう……。うん、そうだね」

「どうかしたか?」


 俺の言葉にヒナは、「ううん」と首を振る。

 その後「ありがとうおにいちゃん」と頷いた。

 心配し過ぎかな? むしろ、心配しすぎたからこその、動揺だったのかもしれない。

 もうちょっと信頼しているよな言葉をかければよかったかなぁ。う~ん……、年頃の娘さんは難しいですなぁ。


「ねぇねぇそれでおにいちゃん」


 くいくいと袖を引っ張るヒナに、俺は首を向ける。


「ん? 何だ?」

「クエストって、どうやれば終わりなの?」

「………………オゥ」


 そういえばそうでした。

 実は我ら。

 まだ一度も綺麗に、ダンジョンのクエストを終えたこと、無かったんでしたね。








 今回のダンジョン内はあまり外と変わらず、特に防寒や防暑も必要ないくらいだった。

 中は明るく、王様たちが住む城のようになっているため、ところどころに大きな燭台が取り付けられている。そのため、こちらで灯りを点ける必要はなさそうだった。


「これ、お城ってやつだよねおにいちゃん?」

「だな……。まぁ、ダンジョンにはこういった場所を模してくる側面もあるんだよ」


 元・魔王城の一部というわけでもないらしい。過去には、街中を模したフィールドもあったしくらいだ。

 つくづくダンジョンってやつは、不思議な場所だと思う。


「見かけによらず、異常に寒かったり暑かったりすることもあるんだが、この場所は大丈夫そうだな」

「大丈夫だよおにいちゃん! 私たちは概念だから、気候の変化にはほとんど左右されないよ!」

「それもそれでスゲー話だな……」


 羨ましいよりも先に、とんでもねぇなという感情が先に来る。

 つくづくと言うなら、この三人娘も不思議な奴らである。


「残り魔力もあまりなさそうだし。そういうところに気を張らなくて良いのは、ありがたいことだな」


 本来、気温調整にどれくらいの魔力エネルギーを消費するのかは分からないが。無駄な労力はいつだって避けたい。


「ただ……、それ差し引いても。もうそこまで魔力が残ってないっぽいんだよなぁ」


 ここまで移動する間にも、残量は減ってきているワケで。

 すでに残量は、十パーセント代に入っていた。

 俺がそう心配していると、ルーチェが「大丈夫ですわ」と口を開く。


「このフロアから漂ってきているモンスターの香りから見るに……。わたくしたちが全力を出さずとも、楽に討伐できるレベルのモンスターしか生息していないようでしてよ」

「え、ルーチェお前、そういうの分かるのか?」

「まぁ。匂いというか肌感覚というか。お肌の調子で何となくはですけれど」

「さすがは魔法そのものだねルーチェちゃん」

「ふふん。もっと褒めてよろしくてよ? ……まぁ一番敏感なところを外気に触れさせれば、更に制度は上げられるのですが、胸をさらけ出すのはよろしくないんでしたわよね?」

「あぁはい……。ぜひやめてくださいお嬢サマ」


 そしてそこが一番敏感なトコロなのね、とは、まぁ流石に言わなかったけれども。

 しかしルーチェの魔力感知があれば、俺の感知は必要なさそうだな。

 モンスターだけでなく、トラップの位置や種類まで、的確に指摘してくれる。


「しかし……」


 ……普通(前例がないから普通もクソもないが)「『魔法』に意思が宿った!」って聞いたら、じゃあ職業は魔法使い(ソーサラー)かな? って思うじゃん。

 でもこいつがやってること、斥候(スカウト)格闘家(モンク)なんだよな……。いやすっげえありがたいよ!? すげえありがたいんだけど……、何だか腑に落ちない。


「ちなみに前回の失敗を活かして、もう武器は使わないことにしましたわ!」

「致命的に合ってなかったしなァ……」


 結局大量に借りて行った武器は、ほとんど振るうことなく返却してしまった。

 ルーチェ曰く、「物理の距離感が測れませんわ!」とのことで。あまりにも武器センスがゼロだった。

 まぁ……、己の拳で殴るという最大級の武器を有しているので、問題ないとは思うけれども。


「さてそれでいて旦那様。少し気になることがございますわ」

「ん? 何だルーチェ?」

「このダンジョン……。確か旦那様が受付で聞いた情報だと、地下三階程度だという話でしたけれど。どうやら、この先に広間がいくつかあるだけで、下には何もなさそうですのよ」

「うお、マジか……」


 というかそんなことまで分かるのか。

 敏感な部分をさらけ出してなくとも、十分すぎる成果である。


「ゴシュジン、どういうことだ? イライでは確か、全三階層だってハナシだっただろ?」


 疑問と共に見上げてくるベルに、俺は「あぁそれはな」と返し、そのまま説明する。


「依頼内容の差異は、残念ながらゼロではないんだよ。

 ダンジョンはあくまで『外』から観測されるもので、調査隊も中までは入らないからな」


 外側からの魔力感知、気配察知、構造把握などにより情報を得ているのだと聞く。

 まぁ、全十階層が全五十階層だった……とかのレベルでのズレは無いだろうけど、二、三階層のズレならよく聞く話だ。……が。


「ふぅん? なら、あんまり問題ないのか?」

「いや……。説明しといてなんだけど、考えてみればそうとも言い切れないかもな……」


 横合いからのベルの言葉に、俺はやや神妙に返す。

 階層の増減がある、とかならば。大まかな構造把握にズレはない。想定している種類のダンジョンだから、多少苦労が増えるくらいで済むだろう。

 けれど今回は、階下に続くタイプではなく、一階層だけが広く取られているタイプであるとルーチェは言った。その言葉を信じるならば、ダンジョンの(・・・・・・)タイプ自体が(・・・・・・)違う(・・)ということになる。


「そうなると……、何が問題なのおにいちゃん?」

「そうだな。ダンジョンごとに、特に大きな差異はないんだけど……。外からの情報と中からの情報が『大きく』違うってことが、懸念材料かな……」


 階層があるタイプと、大部屋一つタイプでは、気を付けなければならないことがけっこう違ってくる。

 攻略に必要なアイテムも、使い方を考えなければならないし。

 そして何より、ダンジョンタイプの違いによる一番の恐ろしいところは……。


「イレギュラーが起きやすいってことだな」

「イレギュラー?」

「うん。幸い、うちにはルーチェが居るから今は問題なさそうだけど」


 例えば。予想してなかった場所にトラップがあったりとか、変なところに通路があって、そこにモンスターが潜んでいたりとか。そういう事例だ。

 今の段階では何も言えないが、とにかくイレギュラーが起こりやすい。

 そして一つのイレギュラーは、連鎖的に起こっていったりもするし。


 なので低級冒険者のうちに|中と外の情報が違うという《そういった》ことが起こった場合は、即撤退した方が良いという教えがあるくらいだ。

 なるほど……。だから俺のパーティに依頼したのか受付のお姉さん。

 このイレギュラーさは、秘密裏に処理しなければまずい危険度だ。


「まぁ、広間がいくつかあるタイプなら。むしろド直球に強いモンスターがいる……くらいのイレギュラーだろうから。変な罠とかは気にしないで良いとは思うけどな」


 ルーチェは肌感覚で、ここのモンスターくらいなら問題ないと言った。

 つまり、イレギュラーで更に強いのが出てきたとしても、三人の力を合わせれば倒せるはずだ。


「なるほどね……。じゃあそれらを倒して、一番奥にある宝箱を取ればクエストクリアなんだね!」

「そういうことだな」


 クエストクリアの条件。

 それは、ダンジョンを発生・形成させている大元のアイテムを取得すること。

 分かりやすく宝箱と説明しているが、部屋自体に設置されているものもあれば、隠されているときもある。

 まぁ、クリア目的となるアイテムを取ることによって、ダンジョンは沈静化され、出入口に戻ることが出来るって寸法だ。


「ただココは……、洞窟自体がダンジョン化している場所だからなぁ。帰りも歩いて戻らないといけないかも」


 そうなったときには、どのみちダンジョン自体の魔力は切れてるはずだから、モンスターは発生しないと思うけど。


「よし! 難しいハナシは終わったな! よくわからないけどぶっ飛ばしに行くぞ!」

「良く分からなかったのかよ……」

「わたくしは理解しておりますわ! 自在に姿を変え、外からの情報をくらませる……。同じ魔法として、ダンジョンには敬意を表しますわよ!」

「理解の仕方が特殊なんだよな……」


 げんなりしていると、ヒナが慌てて「わ、私はしっかり理解したからね、おにいちゃん!」と元気づけてきた。

 うう……。しっかり者が一人でもいて、良かったよ……。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ