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16.ベルと微笑み



 そういえばではあるけども。


「ベルは……というか、お前ら三人って、まだ魔力(えいよう)って足りてるのか?」


 ふと気になって、俺はベルに尋ねてみた。

 あのクエスト中。

 どれくらい魔力(えいよう)無しで活動していたかは覚えていないが、あの栄養補給からだいぶ時間が経っている。


「正直忘れてたのが申し訳ないくらいなんだけどさ……」


 これまで自分の生活に、「幼女たちの世話をする」という項目が無かったので、ついぞ失念していた。


「飯自体は普通の女の子くらい食べてたけど。それでも代用できるものなのか?」

「あぁ、昨日と今日の朝食った肉か! 美味しかったな!」


 ニコっと牙を見せてベルは笑い、そして元気よく言った。


「意味ないな!」

「駄目じゃん!」

「でもまったく意味が無いわけじゃないぞ! 足りなくなると呼吸すらできなくなるからな!」

「怖い! じゃあ意味はありそうだ!」


 良かった。

 ってことは、日々の食事も必要ってことだな。


「まぁ食費が増えるくらい良いんだけどさ。俺も食う方だし」


 俺のは完全に趣味だけど。

 そのせいで太ってきているのは、うん、後々どうにかしよう(未来の自分に丸投げ)。


「十五年くらいCランク。かつ、結婚とかもしてないから、貯えだけは無駄にあるんだよな……」


 普通はより稼げるようになるため、Bランクへと活動範囲を上げたりする。

 けどそうすると、必要なアイテムも高価になっていったりもする。レオスらと揉めた原因の、『飛翔の加護』とかもそうだ。上級ランクのダンジョンでは、あれらを駆使し続けなければならない場所もざらにあるらしい。


「ふーん……? よくわかんないけど、大金を賭けて、より多くの大金を得るってことで良いのか?」

「そんな感じだ。

 なんだベル、こういうのはちゃんと理解できるんじゃないか」

「金銭……というか、金属の知識なら少しはあるぞ! 金塊を食う竜種もいるからな!」

「そういや竜ってそういうのもエサにするんだったな……」

「ベルもアレ、本能的に食いたくなる。けど、嚙み砕いても味がしないから、食った後に後悔する……」

「そもそも、噛み砕けるという事実に驚く俺」


 ううむ価値観。本日二回目。

 でもベルの主食が金塊じゃなくて良かった。流石に買ってやれない。つーかどこに売ってるんだ、金塊。


「あぁでも」


 目に入った服屋に飾ってある、白いワンピースタイプの女児服を指す。


「こういうのなら買ってやれるぞ。

 そんなに値段も高くないし、どうだ?」


 真っ白で清楚なワンピース。

 ひざ下と肩口にやや薄めの透けデザインが入っており、オッサンの俺から見てもお洒落だしカワイイと思う。

 それをベルはきょとんとした目で見つめていた。


「ゴシュジンは、こういうのが好きなのか?」

「いやぁ別に。好きってわけじゃないけどさ」


 今よりは露出も格段に減るしから、見ていて安心っていうのはあるかな?


「布の面積は多い方がいいのかァ……。ニンゲンは大変だなァ」

「一概にそうではないんだけどさ。ただお前はけっこう目立つから、おとなしめの格好をしても良いのかなーって思っただけだ」


 悪目立ち、良くない。

 超常的な存在なのは別に構わないけれど、不要なトラブルまで呼び寄せることはないからな。


「今の格好も嫌いじゃないんだけど……、その、若干目のやり場に困るというか……」

「そうか? ダメなところは隠してるぞ?」

「隠してるというか隠れてるというか、隠れているだけというか……」


 ううむ、人の営みを理解していない子に、着エロの概念を伝えるのは些か難しいものがあるな……。それはもしかしたら通常の幼女でも一緒かもしれないけど。

 時には裸んぼうよりも、際どく見え隠れしているほうが煽情的に感じるときもあるのだ。特にこいつら三人娘のように、『よく分かっていない無防備さ』というものはエロスに直結する! 無知シチュというのはどんな年齢の人物にも適応される最大のエロス嗜好であり、我々を一段上の領域へと駆け上らせてくれるのである。


「ゴシュジン……?」

「違います。犯罪者ではないです」


 ……ダメですよドリー。己の意志を強く持って。

 俺はロリコンでは無かったはずだ。その沼は深くて、何が沈んでいるのか分からないフィールド。安易に立ち寄ってはならぬし、視線を送る事すら危険なのです。


「そ、それは置いておき……。とりあえずベルは、もうちょっとだけ静かな服を着てくれるとうれしいかな?」

「そっか! 分かったぞ!」


 言うや否やベルは、その場で自分の服をぺたりと触り――――服を作り替えた(・・・・・)


「……ッ!」

「どうだ!?」


 そこには既製品と近いようなデザインの、白いワンピースを纏ったベルが立っていた。

 褐色肌と対となっていて、なんというか、健康的な田舎のお嬢さんみたいな仕上がりだ。


「ってお前、馬鹿……!」


 きょろきょろとあたりを見回すが……、ふぅ、セーフだ。幸い今の現象は、街の人には見られていなかったようである。


「ま、まぁ最悪、魔法の力とかで説明できるから良いケド……」


 服を変化させる魔法なんて聞いたことはないが、身体変化の延長だと言えばどうにか説明がつくだろうか。……と、とにかく。


「ベル、人前で着替えちゃだめだ」

「そうなのか? 便利だぞ?」

「便利でもダメです」


 魔法がバレるとかではなく、その……、光り輝いていたときに、一瞬だけ全裸に近い状態になってたんだよ!


「はぁ……。ま、まぁでも、そういう格好も十分似合ってるぞベル」

「そうか?」

「うん。カワイイカワイイ」


 角に触れないようにしながら俺は彼女の頭を撫でる。するとベルは「んぁ……っ!」と、やや煽情的な吐息を漏らした。


「なっ、なんだ、ベル!? ど、どうした!?」


 気を付けて! そういうのホント、気を付けて!?

 ベルの調子をなだめつつおそるおそる尋ねると、「あはっ」と笑って質問に答えた。


「この間ヒナから聞いたんだ! 『ゴシュジンが好きだな』~って想えば、変わったことが起きるって!」

「か、変わったこと……?」

「そうだぞ。今頭を撫でられたことで、ベルは『ゴシュジンが好きだ』って一瞬想ったんだ。だからソレが起こったんだと思う」

「す、好きって……。な、なんだか恥ずかしいなぁ」


 自分でもわかるくらいにちょっとヤバめな笑顔になってしまう。

 いかんいかん。これじゃあ幼女にニタニタしているオッサンだ。……けど、好意を真正面からぶつけられるのは、ちょっと嬉しいよなぁ。


「ちなみにどういう変化なんだ?」

「ん~と……、なんて言ってたっけな……」


 どうやら伝えられた単語があるらしい。

 ベルは思い出しながらも、俺への想い(?)らしき力を溜めるように目を瞑った。


「うにゅぬ~……、ゴシュジン、スキ……、ゴシュジン、スキ……」

「な、なんか改めて見ると、ちょっとアレな絵面だな……」


 露出度こそ減ったものの、可愛らしい幼女が、目を瞑って眼前の男に思いを馳せているという……。見ようによっては俺が特殊なコトをさせているようにも見える。


「やや危険かもな。おいベル、そろそろ一旦――――」


 懸念した俺がそう声をかけた瞬間だった。

 どうやら上手くいったのか、ベルの元気で大きな声が、ここら一帯に響き渡る。



「おぉ~! ホントウだ! 出て来たぞ、インモン(・・・・)!」



 イン……、モン……。

 お前……、なんて単語を、大声で……。


「ちょ、ちょっとベル……」

「ほら見てくれゴシュジン!」

「ぶっ!!!」


 あまりの光景に噴出してしまう。

 ベルは右手でスカートをまくり、左手でパンツ(残念ながら下半身の服という意味ではない!)をずり下げ、露出した下腹部をまじまじと眺めていた。


「ギッ……!」

「ぎっ……?」


 ギリギリすぎるわッ……!

 もしも成人なる体毛が備わっていたら、絶対にアウトな位置まで白い布はめくられている。


「セ、セーフ!? セーフだよなっ!?」

「何がだゴシュジン?」

「り……、倫理が……?」


 ロリで良かったァ!(?) ギリギリで、アウトな箇所は見えていない!

 ワンピースタイプの服装に着替えさせたのが仇となるとは。コイツの思考回路、危険すぎる! 色々な意味で!

 しかもお前、どっからそんな単語を……!


「ヒナがやってみせてくれたときにな、ルーチェがその単語を教えてくれたんだぞ! 良い奴らだ!」

「ルーチェェェ……!」


 アイツなんて単語教えこんでんの!?

 魔法そのものだから、その単語知ってるのか? そうであるなら、余計な知識を与えるのはマジでやめてほしい……。

 俺が頭を抱えていると、周囲からの視線が集まっていた。


「淫紋って言ってた……?」

「え、あの男、あんな幼女に変な契約紋つけてんの?」

「マジだとしたらやばくない? 衛兵呼ぶ?」

「違うんです!?」


 ヤバイ。このままだと変な誤解を受けてしまう。

 流石にこの状況で冷静になれるほど、俺は大物ではない。


「ベ、ベル! 何にせよ……、確認が終わったのであれば、さっさと装備を元に戻してくれ!」

「ん? でもアツいのはもっと下の部分だぞ?」

「おわーッ!! それ以上降ろすな、降ろすな!!」

「お?」

「せっかくセーフ(?)だったものをわざわざアウトに――――するなッ!」


 力強く叫び、力いっぱいパンツを元に戻す。

 ……逆に食い込みすぎた気がするが、致し方なしだろう。


「ふぎゅにゅ!? な、なんか、股がこすれて……、もっとアツい、ぞ……?」

「いっ、いいから履く! しまう! 健全に過ごす! わかったな!?」

「うん~……? よくわかんないけど、ゴシュジンとの繋がりが確認できたから、いいかァ……」


 その言い回しもちょっと怖いなァ!

 とりあえず大事になる前に、この場を退散しないと……!


「ゴシュジン!」

「な、なんだよ?」

「良かったぞ! ベルはちゃんと、ゴシュジンのじゅーじゅんなペットみたいだから!」

「……………………」


 ベルさん。

 それ、アウトのやつです。


「あ、衛兵さん、こっちです」

「怪しい男が……、幼女を……」

「淫紋がどうとか……、ペットとか……」

「性奴隷……、国外に……、売り払う……」


「そこまで言ってねぇよなァ!?」


 俺は無実だ! けどこの内容じゃ、誤解しちゃうよね! 分かる!


「ってことで逃げるぞベル!」

「お? ゴシュジン元気出たか! 元気ビンビンだ!」

「お前はとにかく黙ってくれ!」


 身に覚えのない余罪と謎の冤罪がどんどん増えていく。

 俺はこの日、たぶん人生で一番なんじゃないかと思う走りを見せたのだった。






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