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12.俺のこと、これからのこと



「おぉ~……」


 かくして、入り口というか出口というか。

 ダンジョンのスタート地点まで戻ってきた。

 外からの光もあるため、十分明るい。

 これまでの上階とは違って、おどろおどろしさみたいなものはほとんどない場所だ。


「…………、」


 うん。

 なんつーか……とてもあっという間だったな。

 感慨深さよりも先に、そっちの感想が出てくる。


 そりゃあ理論上、スタート地点へ戻れば戻るほど、モンスターも弱くなる。だから楽に進むことが出来るというのは分かりはする。けれど、それでもあまりにも早すぎた。

 四日間かかっていた距離の時間を、わずか十時間(しかも仮眠込み)である。

 しかもけっこう余裕持って。

 お気楽なピクニック気分(その間激しい戦闘あり)でたどり着いてしまった。


「しかし結局、俺の強さに変化は現れなかったな……」

「もしかしたら何か条件があるのかもしれないね」

「そうなのかねぇ」


 まぁそれを差し引いても、十分な戦力なんだけどな。

 正直……、このダンジョンの六階層までなら、一人居れば十分なくらいの戦力である。

 レオスパーティだと全力で当たらなければならないレベルのモンスターたちに対し、油断していても余裕で勝てるくらいの強さを、この三人娘は持っているのだ。


 ぶっちゃけ異常だ。

 俺には持てあますかもしれない。


「あのさ。お前ら……、本当に良いのか?

 俺と新しく――――冒険者パーティ組むだなんて」


 俺レベルのヤツと組むなんて、正直勿体なさすぎる。

 どこかの王宮お抱え冒険者にでもなれば、一生安泰な額を稼げるのではとも思う。


「今更ですわ旦那様」

「そうだぞゴシュジン!」

「おにいちゃんだって素敵だよ」


 三人はそんな風に微笑んで、俺を包んだ。

 ……若干面映ゆいが、それはそれで嬉しいことだと受け止めよう。


「第一、お金のためにどうこうするワケではありませんわよ」

「そうだね。冒険者になるのも、おにいちゃんと一緒に居るためだもん」

「ベルもゴシュジンと一緒なら何だっていいぞ」

「でもお金は、後々は必要になってくるかもね」

「そうなのかー……。セチガラいヨノナカだな……」

「でしたら荒稼ぎですわ! とにかく全員で高ランククエスト……? とかいうものをこなしていけば、すぐに溜まっていきますわよ!」

「おぉ、食べ放題だな! がんばるぞ!」

「いっぱい斬り殺そうね!」

「うん、物騒だから!」


 気持ちは嬉しいけども。

 最後の最後で物騒に刺しにくるな。


「そんな俺らの、パーティの内訳としては……」


 魔法剣士:ドリー・イコン。

 魔剣:ヒナ。

 魔竜:ベル。

 魔法:ルーチェ。

 である。


「う~ん、カオス」


 果たして魔剣とか魔竜とかを、魔法剣士と同じように職業(ジョブ)にカウントして良いものなのだろうか。というかそのまま言うわけにもいかねぇよな。

 ルーチェだけは、『格闘家(モンク)』として成立するだろう。……本当はコイツが一番分かりやすく、『魔法使い(ソーサラー)』職と言える立場なんだろうけれども。


「まぁそれも、おいおいかな……」


 街に戻ってから、組合の人にはなんと説明をしたものやら。

 そんなことを考えていると、ヒナがおにいちゃんと声をかけてきた。


「ん? どうしたヒナ?」

「ううん……。えっとね、ちょっと疑問に思っちゃって」

「疑問? 何がだ?」


 えっとと、ヒナは言いにくそうにしていたが、意を決したのか口を開く。


「あのね……そもそものことになっちゃうんだけど。

 本当に、ダンジョンを出て良かったのかなって思っちゃって……」

「うん……? えーっと……。どういう、ことだ?」


 おかしなことを言うヤツだ。

 元よりダンジョンを出たいという願いは、俺から出たものだ。

 気に病むようなところがどこかにあるのだろうか。


「道中におにいちゃんが、話してくれたじゃない? これまでのこと。――――レオスっていう人の事。

 私それを聞いて、どうしても許せなくなっちゃって」

「あぁ……、そういうことか」

「それに、もしおにいちゃんの心の中にまだ未練があって、元のパーティに戻りたいって思ってたんだったら……、こうしてダンジョンを出ちゃって(・・・・・)良いのかなって思って……」

「ヒナ……」


 俺は俺で、パーティを組んで良いのかという不安があった。

 けれど逆に。

 ヒナもヒナで、俺を元のパーティに返さなくて良いのかという不安を持っていたみたいで。


「……、」


 何というか。

 人間じゃなくても、そういう感情には気が回る子なんだな。

 とても優しい子だ。そんな風に思う。

 俺とヒナが話していると、横からベルとルーチェも会話に入ってきた。


「あぁソイツらの話かー! ゴシュジンが望むなら、今すぐ戻って追い付いて、ぶっ飛ばしちゃってもいいぞ!」

「そうですわね。丸一日かければ六階層まではいけるとして……、プラスもう半日もあれば追い付けると思いますわよ?」

「いやいいから! そういうことは思ってない!」

「そうなのか? ゴシュジンはケンキョだな!」

「そういうのは謙虚とは言わない……」


 野蛮じゃないだけです。

 俺の事とはいえ、不用意なもめごとは嫌いだ。面倒だしな。


「えーっと……」


 三人は俺を心配そうに、もしくは不思議そうに見上げていた。

 そんなに心配せんでも良いのに。どこまでもお人好しなやつらだ。人じゃないけど。


「えっとな……。そりゃあ最初――――『引き返す』って選択をしたときには……、どこか後ろ髪を引かれる思いがあったよ」


 もしかしたら元に戻れるんじゃないかとか。

 もしくは、一発ぶん殴ってやりたいとか。まぁ、感情の中に無かったわけではないけども。


「それでもさ……」


 こんな冴えないオッサンを、何故か慕ってくれるかわいい子らが居て。

 楽しく、面白おかしく生きて行けるのかもしれないと思うと。

 それはそれで、良いのかなぁと思うんだよな。


「だから、そういうのはもう良いんだ」


 言って俺は。

 改めてダンジョンの方を見る。

 この中で。まだアイツらは、戦っているのだろうか。


「世話になったな、レオス」


 俺は言って、その方向に向かって、頭を下げる。

 少なくとも一緒に行動していた時間はあった。

 助けたし、助けられた。共に苦難を乗り越えた事実は、消えないのだ。


 最後まで。

 もしかしたら最初から、分かり合えていなかったのかもしれないけれど。

 俺は俺で、また一からやっていこうかなって。

 そう思うよ。


「――――さ、行こうぜ」


 振り返り、三人を見る。

 俺が笑ってそう言うと、ヒナもベルもルーチェも、柔らかく笑い返してくれた。

 陽だまりのような温かさが、伝わってくる。


 ダンジョンに吹く風は、どこか優しく、柔らかく。

 出口への光は、俺たちを穏やかに照らし続けていた。







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