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満月の夜に剣は燃ゆる  作者: 大豆
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精霊の石

「精霊の……石……?」


ゲンは首を傾げる。

初めて聞く単語だった。


「時間がないから手短に説明するぞ。」


クロが精霊の石について説明し始めた。

興味を持ったゲンは耳を傾ける。

要約するとこうだった。



精霊の石は全部で5つ。


手にすることでそれぞれ別の能力が手に入る。


精霊の力が集まる場所に長い年月をかけて自然生成される。


石の持つ力に引き寄せられた強力なモンスターが石を守っている。



「ここまで言ってなんだが、私は精霊の石を実際に手にしたことも見たこともあるわけではない。あくまでも古い文献や噂で聞いたことがあるというだけだ。」


「ただの噂か……」


ゲンは落胆したが、妙に納得してしまった。

そんな夢のような物があるのならば、もっと話題になっていてもおかしくはない。


「でも、私はあると信じている。それだけ証拠がないと言うことはただの作り話という可能性があるとともに、それを求めた冒険者が全て返り討ちに遭って帰ってこなかったという可能性も考えられる。だからあるとは言い切れないが、ないとも言い切れない。」


「じゃあ、それはどこにあるの?」


ゲンが食い気味に尋ねる。

正直なところ疑心暗鬼だった。

すると意外な返答が来た。


「実はある程度検討は付いている。だが相当な危険がつきまとうだろう。それでも君は訊きたいか?」


両者とも真剣な眼差しになる。

ゲンは既に命を賭ける覚悟はできていた。


「俺は大切なものを全て失った。もう弱い自分でいることに耐えられない。強くなって母さん達をやったやつを殺せるのなら、たとえそれが危険な道だとしても構わない。もしこれから大切な人ができたとしても、その人たちを守れないのはうんざりだ。」


自分への嫌悪感が言葉となって湯水のように溢れ出る。

そして一呼吸おいて再び口を開く。


「だから、その場所を教えてください、アクロさん。」


ゲンのその表情に今までのような柔らかい優しさはなかった。

そこから読み取れることは強い復讐心ただ一つだった。


ゲンの気迫に押されたアクロは観念し話し出す。


「そこまで覚悟があるのなら教えよう。ただ安全は保証しないからな。」


「……わかってる。」


ゲンの額に汗が滲む。

そしてアクロは慎重に話し出した。


「ここから東の方に行くとリースの森という大きな森がある。その森の中に古からの神殿があり、そこに精霊の石があると踏んでいる。この森は精霊の石の噂で絶えない。だが石を探しに行った者で帰ってきた者はいないという。石があるのはほぼ確実だろう。他の石に関しては申し訳ないがわからない。」


「ありがとう、教えてくれて。」


ゲンは立ち上がり歩き出そうとする。

するとすぐに後ろから声がかかった。


「途中に小さな町がある。そこで装備を整えていくといい。」


「ありがとう、何から何まで。」


「それと、君はまだ子供だ。あまり復讐に心を囚われるな。」


ゲンは押し黙った。


その時、再び地面が大きな音とともに揺れ出した。

モンスターがすぐ近くまで来ていることはゲンでもわかった。


「第二波がそこまで近づいている。私が注意を逸らすから今のうちに行くんだ!」


そういうとアクロは森から飛び出し、村があった方へと駆けていった。


それを見たゲンはアクロと反対の方向へ歩み始めた。

東のリースの森を目指して。

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― 新着の感想 ―
[良い点] なろう系ではない正統派異世界ファンタジーというのが第一印象ですね。 感情描写や情景描写が丁寧で、没入感のある作品でした。 特に、悪夢の描写は良かったですね。 両親が突然不気味な叫声を挙げる…
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