納得するしかないじゃないですか
半年ぶりの投稿です、待っていてくださる方がいたので筆を折らずにがんばります。
「まあ、口から出まかせだな」
シオンはあっけらかんと言い放った。
先程までは美織に対してバツが悪そうにしていたのに、ばれてしまってはしょうがないといったような口ぶりだ。
「ん、ん〜〜」
美織は頭に手を当て眉間に皺を寄せた。
(でもまあ、転生しちゃったらもう両親には会えないんだろうし……転生しなかったときは婚約破棄とか言えばいいか)
シオンがご婚約者の相手というのはどうにも気に入らないが、親にしてみれば悩みの種であった娘の結婚も実現しそうなわけで。
美織はううっと唸って俯いたあと、勢いよく頭を上げた。
「シオンのような人が婚約者なんて光栄ですこと!」
精一杯の嫌味である。
美織1人転生させるのにも手間取っている、ぐでっとした態度の男が婚約者などまっぴらごめんな気はしたが、話がとおっている以上納得せざるを得ない。
「おっそうか、俺もおまえみたいなお子様……いや、裏表のないやつの婚約者役など身に余る光栄だよ」
こたつの上のみかんをむさぼりながらシオンは言った。
「お子様で悪かったわね! どーせスマートな態度なんて取れないやつですよ!」
こういうところがお子様と言われる所以なのだと分かってはいても、どうにもシオンには噛みつかずにいられない。
にやにやと笑うシオンを横目に美織はわざとらしく盛大なため息をついた。
「もういいわ……婚約については小説を持ってきてくれることと等価交換ってことにしとく」
美織にとってあの小説はとても大切なものだった。
一番辛い時期を乗り越えられたのもあの小説があったからだ。
「おう、そうしてくれ。 ……まあ咄嗟の判断だったとはいえ悪かったよ」
シオンは耳の後ろの髪を触りながら呟いた。
「えっ、あんたが自分から謝るなんて」
「お前にさっき怒られたからな。 もうちょっと転生者のことも考えろって」
(なんだ、素直じゃない)
シオンの方から謝られてはこっちも溜飲を下げるしかない。
いや、小説と等価交換な時点で飲み込んではいたのだけれど。
「さ、明日はお前の荷物チェックで忙しいからな! さっさとみかん喰って寝るか!」
シオンはそう言うと食べかけのみかんを口に放り込んだ。
リスのようにほっぺたが膨らんだ顔を見るとなんだか高校生くらいに幼く見える。
「そうね、私の荷物結構あったしね。 転生する気はないけど、他人に荷物漁られるよりは自分で見た方がマシだし、協力するわ」
「いや、そこは転生してくれよ……俺、またノルマ達成できないじゃねーか」
「一応転生候補者は確保したんだし、私の気がどうしても変わらなかったーとか言い訳すればいいんじゃない?」
ノルマの細かい基準は分からなかったが、とりあえず美織が転生を諦めてもなんとかなるのではないかという雰囲気を醸し出しておく。
「それ、いいな!」
シオンは目を丸くして大きく頷いた。
「いやそれくらい思いつくでしょ!」
ノルマ未達成の言い訳など真っ先に考えそうなものだが。
「いつもノルマ達成なんてほど遠かったからな。 ゼロの月もあったし」
ノルマ未達成の言い訳ができないくらいだったということか。
美織は仕事できなさそうという自分の印象が間違っていなかったことに満足した。
「おら、寝るぞ!」
美織の生暖かい目線を振り払うようにシオンはごろんと横になった。このままこたつで寝るらしい。
「はーい。 おやすみなさい、また明日」
美織もこたつを布団替わりに横になる。
正直、美織は数時間前まで眠っていたのであまり眠くはなかったが、シオンはこたつを取りに行ったりと忙しく動いていたのでここは従うことにする。
少し経つと、いつまでも昼のように白い部屋に2人と1匹の寝息だけが聞こえる世界になった。
明日は何時間後に来るのだろうか。
シオンと美織のキャラ変わってないかな、大丈夫かな、書き方忘れちゃったよ…