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やっぱりろくなもんじゃない

 シオンを見送った美織はとりあえず画面を覗いて見ることにした。

 2つある画面のうち、1つは何も映っていない。


「んん……? これは私の住んでた町?」


 美織は写っている方の画面を観察する。

 そこには空からドローンで撮影したような映像が映し出されていた。

 リアルタイムの映像なのかが疑わしかったが、定期的に信号が変わっている所を見ると実際の映像のような気がする。


 美織はしばらく目を細めて町を観察していたが、映像が遠すぎて【美織がいなくなったあとの町】なのかどうかの判断がつかない。


「ああっもう、これアップにできないわけ?」


 勝手に触って壊してしまったらと思っていたが、つい画面を触ってしまう。


「あ……ズームできるじゃん」


 美織はスマートフォンを扱う容量で画面を触るとズームできることを発見した。ついでに色々触って見ると視点も変えられることに気がつく。


「これ、うちの会社だ」


 美織は見覚えのある建物を発見し、人の身長ほどの視点に切り替えた。すると、正面に建物が見える。続々と人が入って行っているところを見ると月曜日らしかった。


「会社の中に入れたりするのかな……」


 試行錯誤しながら画面を触っていると建物の中へ入れてしまった。まるでVRのようである。


「おお、エレベーターも乗れちゃうわけね……しかもエレベーターが来てる時じゃなきゃ上に行けないのか……本当にVRだわこりゃ」


 美織はエレベーターに乗り込むと、会社のある12階で降りる。

 周りには何も見えていないようで、カメラがあると思われる位置を人が通り抜けていった。

人が通り抜ける間は画面が暗くなる。


「ええと、時間は9時過ぎか……そろそろ私が来ないのがおかしいって気づくはずよね……」


 美織は自分のデスクがあるか確認しにオフィスを進んでいく。移動するあいだ見知った顔も見受けられた。


「えっ!? 私のデスクじゃなくなってる!?」


 美織は元の自分がいた場所にたどり着くと思わず大声を出した。

 美織の席には同じ部署の人物が既に座っていた。


「そ、存在ごと消されたの? もしかして私そもそもいなかったことになってる?」


 美織は急に悲しくなる。今までやってきた案件や成果をなかったことにされたのだ。


 なーにが【元の世界をフォローする】だ! 存在ごと消してるじゃん!


「でも意外でしたねえ……」


 美織が落ち込んでいると画面の中から声が聞こえる。


「まさか香坂さんが突然会社を辞めて海外に行っちゃうなんて……しかもなんでしたっけ、巨大蛇を捕まえに行くって……」


 美織は顔を上げた。香坂はこの部署に1人しかいない。美織のことだ。


「巨大蛇ぃ…?」


 話を聞いていると、どうやら美織は巨大蛇を捕まえにアマゾンまで行っていることになっているらしい。


「何よ蛇って……これあいつが理由考えたわけ?」


 だとしたら苦情を言わなければ。

 私のキャラを崩しやがって。せめて両親の介護とかにしてくれよ。なんだ蛇って。蛇狩りで会社辞める人なんて聞いた事ないぞ。


 それから美織は1時間ほど会社を見ていたが、業務は滞りなく行われていた。きちんと引き継ぎをしてから蛇狩りに行ったらしい。


「はあ……次行こう」


 美織は蛇狩りに行ったことにされたショックを引きずりながらも自宅へと向かった。

 すると、自宅も引き払われ空室となっていることが分かった。荷物はどこへ消えたのだろう。


 他にも友達や知人が気にかかったが、スマートフォンが見当たらないのでシオンが帰って来なければ確認できない。


「あとは実家かあ……実家はあとでいいや……」


 美織は画面を見るのを止める。両親のことが心配だったが、疲れてしまった。少々時間を空けたい。


「あいつ、やっぱり絶対仕事できないわ」


 美織は四肢を放り出して寝転んで呟いた。

 蛇狩りを理由に退職するなどどうやったら思いつくのであろうか。

書いてる私が一番笑ってます。

楽しい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] オチにかなり笑いました。 [気になる点] 3章目のタイトルがオチのネタバレになっているのが少し勿体ないかなと思いました。 [一言] 楽しんで書いていらっしゃるのが伝わってきて、面白かったで…
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