第8話:冒険-レベル上げ①
第8話です。
少し短めです。
朝食を食堂で食べ終えた僕たちは、しばらくその場に待機するように命じられた。
(結局、ほとんど食べれなかったな……。)
あんなものを見せた直後にご飯を食べさせるあたりに、あの男の性格の悪さが滲み出ている。
そんなことを考えながら待っていると、食堂にあの男ーーレックスが再び入ってきた。
「よぉーーし!!注目!!さっきはこれからの予定を詳しく説明できなかったから今から説明をすることにする!!」
どうやら予定を話すようだ。
「まず、これだけは言っておく。お前らは異世界から来た勇者だ。だから当然戦闘能力は非常に高い。だが、レベル1のままでは結局のところゴミでしかない。よって、お前たちにはまず王城の近くの森でレベル上げをしてもらう。」
レックスは、レベルやステータスについて説明した。どうやらゲームにでてくるレベルやステータスとほぼ同じような物だ。そして、ステータスボードは女神が管理しているものではなく、最高神?が管理しているのだという。
「お前らみたいなゴミ屑でも、レベルが上がれば優秀な戦力となる。今回、今日を含めた3日間でノルマを設定する。ノルマを達成できなかった者は廃棄とする!!」
(……またか)
本当に命を何だと思っているんだ……!
「なお、この3日間はこちらの方で決めたパーティメンバーと共に活動してもらう。今から発表する。まず1班!!」
レックスが1班から順に発表していく。
大体4人組だ。
「ーーー最後、10班は小塚記記、以上だ!!」
「えっ、ちょっと待って下さい!僕は1人ですか!?」
「ああ、そうだ。ランクFの勇者ごときに仲間など必要あるまい。奴隷を連れてなんとかするんだな!」
なっ……
「なお、森は10個のエリアに分かれており、各パーティーごとに割り当てられる。他のパーティのエリアにはいることはできない。これは魔物の取り合いを防ぐためだ!!」
そう言われて、各パーティーごとに森の地図(エリアごとに班の数字がふってあり、各エリアの境界線が描かれている。)
魔物の取り合いを防ぐため、か……。
僕には違うパーティ同士で協力させないようにしているふうにしか思えない。
「良しっ、一通り説明したな。では早速森へレベル上げに行ってもらう!!10分後に森へ行くからとっととついてこい!!」
その言葉により、生徒全員が奴隷を連れて準備をしたのち、レックスに連れられて森へと向かった。
*
森。
見た感じ普通の森だ。
僕はミラと一緒にいる。
「3日間でレベル10まで上げるのか……、本当にできるのかなぁ……」
レックスが出してきたノルマ、それは3日間でレベルを1から10まで上げるというものだった。これがゲームであれば簡単そうではあるが、現実はゲームではない。
「レベル10程度であればそこまで経験値は必要ではありません。おそらく大丈夫かと。」
「うーーん……、そうなのかなぁ。とりあえず戦わないと……。でも僕戦ったことないしな……。」
僕がそういうと、ミラは
「いえ、大丈夫ですよ。パーティメンバーの誰かが魔物を倒せば他のパーティメンバーにも経験値が入りますから。私はこう見えてもレベル25の魔法使いです。最初は私の戦闘を見ていて下さい。」
えっ……
ミラがレベル25!?
レックスが言うにはこの世界の人間の平均レベルは10くらいのはずなのに……。
「なんでそんなにレベルが高いの?」
「私の故郷の村では12歳になったらレベルを10まで上げる風習があるんです。レベルは10くらいまでならこつこつ魔物を倒していけば割と簡単に上がりますから。……まぁ、私は将来何かの役に立つかもしれないと思って25まで上げましたけど、そのせいで女神に選ばれたのかもしれないと思うと複雑です。」
「どういうこと?」
「女神はおそらく戦闘力の高い犯罪奴隷を選んだんだと思います。犯罪奴隷は人を殺すことに躊躇いが少ない可能性が高いですから、戦闘力も高ければ勇者殺しにピッタリでしょうから……。」
「…………」
「でも、私はコヅカ様を殺さなくて良かったと思ってます。たとえ女神が私を奴隷から解放したとしても。」
「ミラ……」
僕は、森に向かう最中にミラに他の2人の奴隷とFランク勇者の2人について話した。話そうか迷ったが、ミラは他の2人の勇者のことを気にしていたので、正直に死を伝えた。そして、勇者を殺した奴隷の最期も……。
「コヅカ様は異世界の勇者ですから、きっとすぐに私を超えると思います。でも、最初のうちくらい私を頼って下さい。私はコヅカ様の奴隷ですから。コヅカ様のためなら無理だっていたします。」
(良い仲間を持ったみたいだ)
「……分かったよ。でも、無理はしないでね!!」
*
「ところで気になってたんだけど……、ミラって何歳なの?」
「私ですか?私は15歳です。コヅカ様は何歳なのですか?」
「僕は16だよ。僕と一緒にいた人達はみんな大体16か17かな。」
「そうなんですか?」
「うん。それにしてもミラは年下とは思えないくらいしっかりしてるよなぁー。僕ももっとしっかりしたいよ……。」
「コヅカ様はしっかりしていると思いますよ?」
「うう……ありがとう……。」
「あっ、見て下さい!!あれがゴブリンですよ!!」
「えっ!どれ?」
ミラは、左斜め前を指差した。
そこには、アニメでよく見る緑色の魔物がいた。
「あれがゴブリン……。」
アニメは好きでよく見ていた。
その中でも異世界物は結構好きだった。
ただ、実物を実際に見ると……
(怖い……、というかちょっと気持ち悪い……)
目の前にいるのは得体の知れない化け物だ。
しかも、実際に生きている。
僕たちはこれから、生き物の命を奪うのだ。
僕は、ゴクリと唾を飲み込んだ。
「コヅカ様、見ていて下さい。」
ミラは、ゴブリンに気づかれないよう、静かな声で魔法の詠唱?を開始した。
「岩石よ、形を作りて対象を狙え。大地よ、この身に宿りて対象を打て。ーストーン・ナイフー」
魔法名をミラが唱えた瞬間、ミラの手元から何かが飛び出した。
飛び出した何かは、ゴブリンへと一直線に向かっていき、そのままゴブリンの頭を貫いた。
ゴブリンの頭から緑色の血が流れ、ゴブリンはその場に倒れた。
「うっ……」
思わず吐きそうになった。
「コヅカ様、大丈夫ですか?」
「う、うん。でもやっぱり慣れないな……。」
目の前で何人かのクラスメートが殺されたが、その時とはまた違った気持ちの悪さだった。きっと、自分が殺す側だったからなのだろう。
(生きるためには仕方がないのか……?)
その後、僕はミラが戦闘するのをずっと見ていた。
そうしている間に、ミラはレベル26に、僕はレベル7になっていた。
結構良いペースだ。この調子ならレベル10は余裕だろう。
でも……
「流石にミラに戦わせてばっかじゃだめだよな!」
僕は、一回自分で戦ってみることにした。
自分の能力表示を確認する。
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ステータス
名前:小塚 記記
レベル:7
魔法属性:記憶
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僕は元の世界でろくに戦ったこともなければ武術を習っていたわけでもないから、体術系は期待できない。
そうなると、ゲームならば必然的に魔法を使うことになるのだけど……。
(魔法属性……、記憶か……。)
記憶魔法?ってどんな魔法なんだろう?
いろいろあったせいであまりちゃんと能力を見れてなかったけど……、改めて考えてみると僕のは変わっていると思う。
秀助君や三代のも見せてもらったけど、こんなよく分からないものではなかった。
それにもう一つ、
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固有スキル
・代償(記憶力)
→自身の記憶力が低ければ低いほど、より高レベル
の記憶魔法を使うことができる。
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固有スキル……。
秀助君や三代は持っていなかった。
……この文を読む限りでは、僕にとっては非常にありがたいスキルのように思える。
しかし、記憶魔法?というのが何なのか良く分からない。
ミラが言うには、魔法は自分のイメージが足りていないと発動できないし、能力表示にも表示されないらしい。
つまり、僕は記憶魔法という物が何なのかをある程度理解していないとそもそも使うことができないのだ。
どうしよう。
「ねえ、ミラ、記憶魔法って分かる?」
とりあえずミラに聞いてみた。ミラは年下なのにとても博識だ。
「記憶魔法……、聞いたことがありません。お力になれず申し訳ありません。」
そうか……。
「いや、別に謝らなくて良いから。ミラが悪いわけじゃないし……。」
ここで、ミラがあることを考えた。
「では図書館に行ってみるのはいかがですか?図書館には大量の魔法書が置いてありますから、もしかしたらその……記憶魔法?について何か手がかりをつかめるかもしれません。」
図書館か!
そう言えばすっかり忘れてたけどレックスが森に行く前に、「王城の図書館は自由に使って良い」って言ってたな。
自由時間にでも行ってみよう。
「あっ、そろそろ帰る時間だ!ミラ、戻ろう!」
「分かりました。」
こうして、僕たちの冒険1日目は終了した。
ー第8話 完ー
お読みいただきありがとうございます。
日曜日更新にだんだんと近づいている気がします。もう少し頑張りたいと思います。
次回あたりからだんだんと主人公が強くなっていく予定です。お楽しみに。
いつもありがとうございます。