第2話:召喚
第2話です。
教室内にて。
(あっ、先生出て行った)
(やっぱチャイム壊れてるのか)
(もしかして授業削られるんじゃね?だとしたらラッキー♪)
『ーーンコーーンカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー』
(えっ、何?)
(まじで壊れてんじゃん)
(ってか、うるさっ)
鼓膜が破れるくらいの音が続く。
『ーーーーーン 準備完了しました。これより召喚を開始します。』
チャイムが突然機械的な声に変わった。
(ん!?)
(えっやだ、何!?)
この瞬間、十一路高校1年A組の生徒40人は、学校から消え去った。
***
気付くと僕たちは、広くて暗い空間の中にいた。
「えっ……、ここどこ……?」
状況をなかなか理解できない。
それはクラスメートも同じようで、
「は!?ここどこだよ!?俺らさっきまで教室にいたよな!?」
「なになに!?まじでここどこだよ!?」
「助けて!!?」
などと、様々なことを言っていた。
しかし、急に聞こえた大声でクラス全員が我に返った。
『お前ら、少しだまれ!女神"ミラー"様の前だぞ!』
(誰だ……?)
生徒全員の前に立っていたのは、防具を身にまとった屈強な男であった。
*
「よしっ!!ようやく静かになったな。では女神"ミラー"様がお前らのようなゴミでも状況が理解できるように説明してくださるそうだぞ!!心して聞くんだな!」
かなり口の悪い目の前の男がそう言うと、僕たちの前に鏡が現れた。
「我らが神ミラー様はその名の通り"鏡の神"である。よってこの大鏡こそが、現世と神界を繋ぐゲートのような役割をなしている。」
そう言うと、男はどこかへ行ってしまった。
──そして鏡が光った。
その瞬間鏡の前に人が現れた。
いや、目の前に現れたのは"人"ではない。どんなバカでもわかるほど、神々しく人のものではない美しさを放っていた。
そう、僕たちはみな確信せざるを得なかった。
目の前の女性こそが神であると。
*
神はゆっくりと口を開いた。
「みなさん、どうもこんにちは。私が鏡の女神"ミラー"です。早速ですが単刀直入に言います。貴方達はわれわれの奴隷です。召喚した時点で奴隷契約は済ませてあります。
つまり何が言いたいかと言うとですね、あなたたちはすでにわれわれの命令には一切逆らえず、われわれに危害を加えることもできなくなっているということです。」
いろいろと衝撃的な上にに女神の発する圧倒的なオーラに呑まれて誰一人として言葉を発することができない。
「さて、なぜわれわれが違う世界から貴方達を召喚したかと言いますと、簡単に言えば魔王を倒させるためです。訳あってこの世界の魔王は違う世界から召喚された者ーーつまり"異世界の勇者"しか倒すことができません。ですから貴方達を召喚しました。
貴方達に拒否権はありません。何がなんでも貴方達には魔王を倒していただきます。」
(魔王を倒す……?そんな漫画みたいなことをやれと……?夢じゃないよな?)
そんなことを考えていた記記だが、考えがまとまるより先にどんどん女神は話し続ける。
「では早速、皆さんの能力を測定したいと思います。ステータスというやつです。皆さんの世界では割と一般的な単語ではないでしょうか。
この測定で良い判定であればあるほど皆さんの扱いやちょっとしたプレゼントが良くなりますので。
反対に、魔王討伐の役に立たないと判断された場合には、われわれは何のサポートもいたしません。
ああ、でも判定が良くなくてもプレゼントは差し上げますよ。まぁ、判定が良い人とは違うものですが……。」
ここで一拍おいて、女神は僕たちにこう言った。
「では、期待していますよみなさん。私はここで一旦消えますのであとは下僕たちの指示に従うように。
ーーああそうそう、貴方達はわれわれの奴隷。つまり生かすも殺すも自由なんですよ。ですから、貴方達が積極的に魔王討伐に参加するようにノルマを設定したいと思います。そうですね……、ノルマはとりあえず"3か月以内に魔王軍四天王の1人を倒す"にしましょう。
ーーちなみに、もしノルマを達成できなければ、クラスで能力値が低い方から順に10人殺します。これで少しはやる気が出たのではないでしょうか?
もう一度言いますが、貴方達はわれわれの奴隷です。決して逆らおうなどとは思わないように。
では、さようなら。」
そう言い残して、女神は消えた。
*
「はぁっ……はぁっ……」
「何だよ今の……俺たちが奴隷?」
「まじで怖かった……」
ここでようやく、みんなは言葉を発することができるようになった。
「ってか、まじでさっきの何なんだよ!?俺たちが奴隷?ふざけんじゃねぇ!!」
そう言ったのは、クラスの不良グループのリーダーである岩井 正弘だ。
*
現在、この1年A組は男子20人女子20人の全40名からなり、男子は2つのグループに、女子は3つのグループに、それぞれ分かれている。
グループの中で一番人数が多いのは、男子は森 秀助(学級委員長)をリーダーとするグループで、男子の約4分の3がこのグループに属している。ちなみに小塚 記記(主人公)もこのグループに属している。
また、残りの約4分の1が岩井 正弘をリーダーとする不良グループである。
そして女子は、中塚 三代(学級委員)をリーダーとするグループが一番人数が多く、クラスの女子の約7割が属する。
なお、残りの女子は残りの2つのグループに属している。
ちなみに、一応言っておくとこのクラスにはグループに属していない人はいない。もちろん、積極的に同じグループの人とつるんでいるかは人によるのだが……。基本的には合わない人とは関わらない平和?なクラスである。
ーーしかし、今日ばかりは関わらないようにするのはできない状況であった。
そのためーー
「おい森、何とか言えや!!これどういう状況なんだよ!?」
岩井は森に説明をもとめた。岩井もなんだかんだで森のことをしっかりしているやつだと認めている。
ただ、今回は流石に森もわけがわからない状況であり、
「そう言われても……僕だってサッパリ……まさか漫画みたいなことが本当に起こるなんて……。」
と返すしかなかった。
ーーその時だった。
広い空間に灯りが灯された。
「勇者の諸君、こちらに着いてきてくれるかい?準備が整ったよ。」
そう言ったのは、ローブを身にまとった青年である。灯りが灯されたのでさっきの男よりも特徴がよく分かる。髪は赤く、身長は175cmくらい?で、年は20歳くらい?の美青年である。
「あ゛っ!?んだよてめぇ!!」
「ああ、すまない。自己紹介がまだだったね。私の名前はミカルだ。この国の魔術師長をやっているよ。これからよろしく頼む勇者たち。」
彼の名前はミカルと言うらしい。少なくとも女神のような怖さはないからみんな比較的落ち着いている。
「能力測定の準備ができたから隣の部屋に移動するよ。着いてきて!」
ー第2話 完ー
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