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1話 暗澹な道を行く

合間時間を縫って、コツコツと書いていこうと思い投稿しました。 

頑張って書きますので、拙い文ですがお付き合い下さい(ー_ー)

 教室に溶け込む蝉時雨せみしぐれ。蒸された教室の中、生徒に背を向け緑色の大きな板に粗末な白い棒で英文を綴りながら教師の不知火しらぬいがぼつぼつと何か呟いているのが耳朶に触れるが、内容は全く持って理解できない。


 僕はぼんやりとその風景を嗜んでいた。 無駄話をする生徒の声はどういうわけか不知火の言葉よりも耳に残りやすい。


 途端、室内に静寂が満ちた。 皆の視線が自分にかき集められるのを肌に感じる。

椅子を引き摺る不快ともいえる音を響かせて席を立った。


「えーと、なんでしたっけ。犬が猫を追い回します。」


 不知火に指名され、一度ひとたび僕がそういうと室内に笑いが巻き起こる。


「おいおい、勘弁してくれよー。 今教えてばっかだろ! 高校二年生だからって油断していると進級して受験せいになったときに痛い目みるんだ。 でも、その回答は中々面白いぞ。 ちなみに正答は雨が土砂降りにふるって意味な。」


 そう不知火が笑いかけながら言うと、クラスのざわつきに拍車がかかる。


 皆から見た僕への認識というのは、良くも悪くもクラスのムードメーカー。 教師に指され発表の機会を得たときにはすかさず素っ頓狂、頓珍漢、よく言えば軽妙な一風変わった月並みでない表現で皆を笑かす頭の悪そうなやつ。


 これは僕の負け犬精神、あるいは楽観的思考が知らず知らずのうちに築きあげてしまった地位だ。

僕は学問への関心は一切持たず、そんなことに時間を割くのは当に愚の骨頂だと感じる。

 ただし、座って時間経過を待つというのも面白みに欠けて退屈なのだ。


 結果、授業中はとくにすることもなく周囲をぼんやりと眺めるというのが僕の習慣になっている。


 教壇に立ち、悠々と語る不知火の言葉を遮り授業の終幕を告げるチャイムが教室に鳴り響く。


「あー、これからがこの英文の面白いところだったのにな。 凪冴なぎささん号令頼む。」


 そう悔しそうな表情でいうと、凪冴と呼ばれた生徒は優雅な美しい声で号令を掛けると授業が終わり、休み時間が始まった。


「みーやび、また意味わからないところみてボーッとしてたでしょー」


 椅子に座りスマホを弄る僕ににやけた顔で近づいてくる女生徒 高木 りお に笑顔で応じる。


「だって暇すぎるでしょ、授業なんてまともに聞いてるやつは一周まわって馬鹿だね!」


 そのやり取りが聞こえた周囲の人々はケラケラと笑っている。


「だってさ、絢香あやかさん。」


「何をどう感じようと私にとっては関係ないです。でも、確実に言えることは私は馬鹿は好きません。」


 絢香と呼ばれた女生徒は、気にせずの口ぶりで、しっかりと自分の意見を示した。

それもそのはず、凪冴 絢香。彼女は成績優秀で毎回学年上位三名の座を賭けてしのぎを削るトップ層三人のうちの一人に違いなく、クラスの特別委員長を任されている。 そして、容姿も端麗だ。

 決して天才なのではない。努力を積み重ねそれが花開き今の地位を築きあげたのだ。


「ごめん、ちょびっと調子乗った。」


 素直に謝ると彼女は次の授業の準備を開始してしまった。 


「絢香さんって、猫かぶってみたら、完璧な美少女になると思わない?」


「あー。そだねー。」


 感情の感情の込もっていない相槌に「あ、また聞いてない」と呆れた様子で言いながら自分の席へと戻っていった。


 そして、チャイムが鳴った。



ちなみに、不知火先生が板書していた。 英語は、 It’s raining cats and dogs. という表現でございます。

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