スキルを覚えてみたっ!
前回、スキル持ちのモンスターを捕食することで自分のスキルに吸収出来ることを発見した俺は次のモンスターを待ち構えている。
『まあ箱だから基本待ち構えることしか出来ないけどな・・・』
そんな自虐ネタを考えつつもいつモンスターが現れても良いようにいつも通り入口の方を監視する。そうして俺はのんびりと待ち続けていると遠くの方から鳥が羽ばたく様な音がしてきた。その音は段々とこちらに近づいて来ている。
しばらく待っているとその音の正体らしきものが部屋の中に飛び込んできて部屋の上空を旋回し始めた。その影を追ってみると正体は蝙蝠の様だ、しかしその蝙蝠は俺の知っている蝙蝠と違い異様にでかい。俺は《鑑定》を使用してみる。
名前:名無し
種族:蝙蝠
クラス:ジャイアント・バットLv5
HP:15/15
MP:21/21
装備:無し
スキル:噛みつきLv2、音操作Lv3
正体はジャイアント・バットというモンスターだった、デカいのは名前の通りなのであろう、そしてレベルもそこそこ高い、でもHPはあまり無いみたいだ鳥に近いからあまり防御力はないのだろうか。
そして注目するのはスキルだ、《噛みつき》は俺もすでに持っているが《音操作》は初めて見るスキルだ。種族が蝙蝠だから《音操作》スキルで音を感じたり攻撃に利用したりするのだろうか。これを取ればもしかして話すことが出来るかもしれないな。会話が成立する種族がいるのかは不明だが、仮にいたとしても現状では俺はただのミミックで会話が出来ない。しかしこのスキルがあればそれが可能になるかもしれない。この先必要になるかもしれないスキルを見て俺の心はざわついた。
『この先、意思疎通が必要になる機会もあるかもしれないし、あれは欲しいな。』
そう考えると俺は《舌》のスキルを発動すべくジャイアント・バットが近づいてくるのを待ち構える。ジャイアント・バットは空中を旋回しながら部屋の様子を伺っているようで少しずつ位置を変えてきている、おそらく《音操作》スキルで辺りの状況を把握しているのだろう。
しばらくするとジャイアント・バットが俺の上空に来て周囲の様子を伺い始めた。俺はここだと思いジャイアント・バットに狙いを定め《舌》のスキルを発動する。俺の舌はカエルが虫を捕まえるがごとしに空中のジャイアント・バットの体に巻き付く、俺はそのまま一気にジャイアントバットを引き寄せそのまま《噛みつき》と《捕食》を発動して噛みついた。ジャイアントバットは若干鳥肉っぽい味がした。HPが少ないせいもあってかすぐ死んでしまったようで暴れられることもなくすんなり捕食することが出来た。そしてステータスを確認してみる。
名前:名無し
種族:ミミック
クラス:コモンミミックLv7
HP:27/27 MP:40/40
筋力:8 耐久:13 敏捷:0 器用:7
知能:8 精神:6 魅力:0
スキル:噛みつきLv4、捕食Lv3、舌Lv5、鑑定Lv2、収納Lv2、アイテム作成Lv2
火矢Lv1、睡眠魔法Lv1、音操作Lv1
収納品:錆びたナイフx1 棒x2 ずだ袋x1 ぼろい麻のロープx1
『おお、スキルが増えてるな』
スキルが増えていたことにほっとする俺。このことである程度はっきりした。スキルは《捕食》によって自分のものにすることが出来る様だ、しかし同じスキルの場合は増えない、そしてスキルレベルは継承されずLv1となる。だがLv1にはなってしまうとはいえ新しいスキルが増えるのは助かる、他のスキルのように使用していればレベルも上がるだろうし。
これで移動系や隠蔽系のスキルが取れればいいのだが、そうそううまくは行かないだろう。隠蔽系のスキルならカメレオンの様に擬態出来るモンスターでもいればそこそこなんとかなりそうなイメージがあるが、移動スキルが難しそうだ。普通の生物なら歩行手段や飛行手段があるからわざわざスキルで移動するってことは無いだろう。
ではどんなスキルなら移動が出来るだろうか、俺は箱が移動できそうなスキルを想像してみる、超能力とかあったら便利なんだがそんなスキル持っているモンスターじゃ逆にこっちがやられそうだ。
浮遊または飛行魔法とかかな、でもそういう魔法が使えるモンスターも強そうだ、前のゴブリンは持ってなかったしな、そもそも飛ぶ魔法があるかもわからんし。
あとは何だろう・・・舌が使えるしそれで移動?だが移動中に舌が使えなくなるのが痛いな、それに舌を巻き付けるところが無いとそれ以上進めなくなるしな。スキルを増やす方法はわかったことで多少は前進したがまだまだ前途多難である。
俺はスキルを増やすことで何か良い方法が無いか考えながら再び入口を監視し敵が来るのを待つ。それからだいぶ時間がたっただろうか、何やら引きずるような音が聞こえる再び敵が現れたようだ、暫く待っていると扉の影からぶよぶよしたゼリーの塊のような物体が現れた。俺は《鑑定》をつかって確認してみる。
名前:名無し
種族:ウーズ
クラス:タイニー・ウーズLv3
HP:8/8
MP:0/0
装備:無し
スキル:捕食Lv1、隠密Lv2、物理攻撃軽減Lv3
ウーズというモンスターらしいスライムの親戚だろうか、レベルも低くてHPもあまりない、しかしそのスキルはなかなか良いものをお持ちだ、隠蔽ではないが『隠密』というスキルを持っている、それに『物理攻撃軽減』というスキルもあるな。たしかに見た目からもぶよぶよしていて殴っても効きそうにない外見だ。
俺は相手のレベルも低いしHPもないのでやってしまおうと考えたが《物理攻撃軽減》があるので今までの様に《舌》の攻撃では効かない可能性がある。そこで俺は前に取得したスキルを思い出した。以前ゴブリンシャーマンから取得した《ファイア・ボルト》というスキルだ。あれなら名前からして火の魔法だろうし物理じゃないから効きそうな気がする。しかし一つ問題がある、魔法の使い方がわからないのだ。試しに俺は頭の中で魔法スキルを念じてみた。
『火矢』
・・・何も起こらなかった。
スキルは頭で考えれば発動出来たが魔法は無理らしい、何か足りないのだろうか、俺は再び考え込む。そうこうしているうちにウーズはゆっくりとだがこちらに近づいて来る、もしかして俺に気が付いているのか。ウーズが何を目的としているかわからないが、こちらの方向には俺以外には壁しかない、おそらく俺が目的なのだろう。
『ま、まずいな、何とかしないと・・・』
俺は取り合えず《物理攻撃軽減》は無視して《舌》で攻撃してみることにした。《舌》スキルを発動して狙い通りにウーズに巻き付いたが、手・・舌ごたえがない、よく見ると軟体であるウーズは舌の隙間からどろりとこぼれて舌の拘束からあっさり逃げてしまった。
『これは厄介だ・・・』
そう考えてるうちにもウーズは徐々にこちらへと近づいてくる。若干焦る俺は次の手段をあわてて考える。舌では掴めないからゴブリンの時の様に引き寄せて噛みつく手段は使えない、せめてさっきの魔法が使う方法が分かれば。俺はもう一度魔法を使用する方法が何かないかと考えてみる。念じただけでは無理だった、きっと他に必要な条件があるのだろう、俺は何かないかと考える、そして昔読んだ小説や漫画の事を思い出した。その中では確か魔法を使うときには呪文を唱えていた気がする。
もしかして呪文を唱えることが必要なのかもしれない。俺はそう考えると先ほど取得した《音操作》のスキルがあることを思い出した。
『これを使えば魔法を唱えられるかもしれない』
俺は急いで《音操作》のスキルを使い人間の時の様に声を出すようにしてみた、すると口?箱の隙間が少し空いて声が聞こえてくる。
「ふぁ、ぃ、あぼ~」
だが、初めて使ったスキルのせいか上手くしゃべれない、俺は何度かスキルを使い《ファイアボルト》を唱えようとする。
「ふぁ、ぃ、あぼ~」
「ふぁぃ、あぼ~と」
「ふぁぃあぼ~と」
「ふぁぃあぼると」
徐々に発音が良くなっていき最後の《火矢》を唱えた時、目の前に突然火の矢が現れた。俺はいけるっ!と思ったが、現れた火矢は狙いをつける前にあらぬ方向に飛んで行ってしまった。
『をっ!全然違うところに飛んで行ったぞっ、スキルを使うといきなり飛んでいくのか、先に狙っていないといけないのもしれんな』
俺はそう考え、今度は視線をウーズに合わせてもう一度スキルを使用してみることにする。
「ふぁぃあぼると」
スキルを使用すると先ほどと同じ様に目の前に火の矢が浮かび上がった、そしてその火の矢は視線の方向に直進していきウーズに突き刺さる。火の矢が突き刺さったウーズは火に焼かれ悶え苦しんでいるがそのうち動かなくなって床にびろ~んと広がり動かなくなった。おそらく死んだのだろう、俺は《鑑定》のスキルを使用して念のため死んでいるか確認する。
名前:名無し
種族:ウーズ
クラス:タイニー・ウーズLv3
HP:0/8(死亡)
MP:0/0
装備:無し
スキル:捕食Lv1、隠密Lv2、物理攻撃軽減Lv3
死んでいるのは間違いないみたいだ、なんとか倒せたことに俺はホッと胸を撫でおろす。胸ないけどね・・・、そして落ち着いたところで改めて今の戦闘を振り返ってみる。
『いまのは割とやばかったな、運よくゴブリンの魔法使いからスキルを手に入れてたからよかったものの、場合によってはこっちがやられてたかもしれん』
そしてやはり移動出来ないことで回避も後退も出来ないことが問題だと改めて認識してしまう。初めての魔物に遭遇した時に様子見に隠れることも出来ないのだ。今回はたまたま対抗手段があったから良かったようなものだが、こんな偶然が次もあるとは限らない、早急に移動する方法を何とかしないといけない。俺は考えるが、いまの状況ではその移動手段が無いので能動的に探すことが出来ないので堂々巡りだ。
現状、俺が出来ることといえば待つことしか無く、敵に関しては完全に運頼みになる。次に来る敵が強い敵では無いことを祈りつつ俺は前と同じ様に入口を見つめるのであった。
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